- 更新日 : 2025年2月19日
資本連結の考え方や仕訳を基本から解説
実質的な支配関係がある会社を企業グループとし、ひとつの組織体として行う決算を連結決算といいます。連結決算では、投資と資本の相殺消去など一連の処理である資本連結を行い、企業グループ全体における正しい財務状態を表すことができます。この記事では、連結会計に初めて携わる人向けに、資本連結の概要、支配獲得日の完全所有と部分所有の仕訳の考え方などの基本を解説していきます。
資本連結とは

資本連結とは、親会社から子会社への投資と、対応する子会社の資本を相殺消去し、差額をのれんに計上し、親会社に帰属しない部分を非支配株主持分とする、などの一連の手続きのことをいいます。
資本連結は、グループ企業の財政状態などを適切に表示する連結財務諸表を作成するために行われます。例えば、上の図のように親会社P社の保有する子会社S社の株式は、S社の資本金や利益剰余金に対応します。そのまま単純合算すると親子会社間での資本取引までが反映されてしまい、二重計上になってしまいます。従って、これらを相殺し適切な連結財務諸表を表示できるようにするのが、資産連結のおおまかなイメージです。
完全所有における支配獲得日の資本連結
支配獲得日とは、親会社が初めて子会社とした日(子会社となる会社の株式の所有割合が50%を超えた日)をいいます。支配獲得日付で連結財務諸表を作成するためには、資本連結の手続きが必要です。
ここでは簡易的な例を交えながら、資本連結のやり方を説明していきます。
■持分100%の子会社を新設した場合
(例1)P社は、100%子会社のS社を新設し、S社の全株式1,000万円分を引き受けた。支配獲得日の親会社と子会社の個別貸借対照表は以下のとおりである(税効果会計は考慮しない)。

※貸借対照表は、通常は項目ごとに記載しますが、説明のため、簡易的に表示しています。
子会社新設の場合、P社によるS社株式の取得額は、S社の資本金の額と同額になるはずですので、この分の相殺消去を行います。相殺消去の仕訳は以下のとおりです。
相殺消去の仕訳により、P社からはS社株式分が、S社からは資本金が消去されることになります。あとは、以下の図のようにP社とS社の貸借対照表の値を合算して、連結貸借対照表を作成します。

※貸借対照表は、通常は項目ごとに記載しますが、説明のため、簡易的に表示しています。
■既存の会社を子会社にした場合
(例2)P社は既存のS社全10,000株を1株あたり1,000円で買収し、100%子会社にした。なお、S社の支配獲得日の資産の時価は1,100円である。
支配獲得日のP社とS社の個別貸借対照表は以下のとおりであった(税効果会計は考慮しない)。

※貸借対照表は、通常は項目ごとに記載しますが、説明のため、簡易的に表示しています。
既存の会社を子会社にしたときは、支配獲得日の時価で子会社の資産と負債を評価換えし、貸借対照表の帳簿価額と差額があったときは、S社修正仕訳として差額分をS社の貸借対照表に計上します。以下の仕訳は、例2のときのS社修正仕訳です。
※通常は借方には「土地」などの勘定科目を置きますが、説明の便宜上、貸借対照表に合わせて借方は資産としています。
このS社修正仕訳により、S社の資産が100万円増え1,100万円に、S社の資本の部に評価差額100万円が加わります。
次に行うのは、相殺消去とのれんの計上です。
子会社の資本より買収額の方が高いときに発生する差額を「のれん」といいます。子会社を新設する場合は「のれん」の発生はありませんでしたが、既存の会社を買収する場合、ほとんどのケースで買収額と子会社の資本に差額が生まれます。これは通常、財務諸表には現れないブランド力や技術力などを見越して高い価格で買収が行われるためです。
以下の仕訳は、例2のケースでの、相殺消去と、のれんを計上する仕訳です。
S社修正仕訳で評価差額が資本に加わっていますので、評価差額も相殺消去に含め、差額分を無形固定資産であるのれんに計上します。上記の仕訳により作成される連結貸借対照表は以下のとおりです。

※貸借対照表は、通常は項目ごとに記載しますが、説明のため、簡易的に表示しています。
また、買収額の方が低いときに発生する差額を「負ののれん」といいます。負ののれんは会計上、取得時に特別利益として計上されます。
部分所有における支配獲得日の資本連結
部分所有とは、子会社の株式を100%完全に有していない場合をいいます。部分所有では、子会社の資本すべてが親会社のものとはなりません。親会社が所有している部分もあれば、親会社以外の少数の株主が所有している部分もあります。
部分所有では、子会社資本のうち、親会社以外の株主の持分を「非支配株主持分」として区分するのがポイントです。
(例3)P社は既存のS社の株式10,000株のうち80%の8,000株を、1株あたり1,250円の合計1,000万円で買い付け、子会社にした。以前に取得したS社株式はないものとする。なお、S社の支配獲得日の資産の時価は1,200円であった。
支配獲得日の親会社と子会社の個別貸借対照表は以下のとおりである(税効果会計は考慮しない)。

※貸借対照表は、通常は項目ごとに記載しますが、説明のため、簡易的に表示しています。
まず、S社修正仕訳で、S社の資産・負債を支配獲得日の時価で評価替えし、帳簿価額と差額を以下のように仕訳し、S社の貸借対照表に計上します。
※通常は借方には「土地」などの勘定科目を置きますが、説明の便宜上、貸借対照表に合わせて借方は資産としています。
S社修正仕訳により、S社の資産が200万円増え1,200万円に、S社の資本の部に評価差額200万円が加わります。
次に、以下のような仕訳を行い、投資と資本の相殺消去とのれんの計上、非支配株主持分の計上を行います。
非支配株主持分 | 2,200,000円 | ||
※非支配株主持分の計算
※のれんの計算
上記の仕訳により作成される連結貸借対照表は以下のとおりです。

※貸借対照表は、通常は項目ごとに記載しますが、説明のため、簡易的に表示しています。
子会社の支配獲得日には資本連結が必要
100%持分の子会社を設立するとき、既存の会社を買収して子会社とするときは、支配獲得日に資本連結を行います。完全所有の場合は、子会社の資本と所有する子会社の株式を相殺消去するのがポイントです。一方、部分所有の際は、子会社の資本のうち親会社持分だけを相殺消去します。この記事で紹介した、それぞれの資本連結の流れを押さえておきましょう。
よくある質問
資本連結とは?
連結会計のために、親会社から子会社への投資と、対応する子会社の資本を相殺消去するなどの一連の手続きを資本連結といいます。詳しくはこちらをご覧ください。
完全所有における資本連結のポイントは?
100%子会社の場合は、親会社から子会社への投資(子会社株式)と、子会社の資本を完全に相殺消去し、差額があれば「のれん」又は「負ののれん」に計上します。 詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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