- 更新日 : 2025年2月19日
入金伝票とは?書き方や仕訳方法をわかりやすく解説
経理経験がある人でも、初めて入金伝票を手にすると戸惑うことがあるかもしれません。この記事では、初めて入金伝票を取り扱う人向けに入金伝票の書き方や仕訳方法を解説します。入金伝票は仕訳業務の効率化のために有効な方法であるとともに、取扱方法がとても簡単です。記事の内容を参考にして、入金伝票への理解を深めてください。
目次
入金伝票とは
入金伝票とは、現金で入金があった場合に「いつ、どのような取引が誰によって行われたのか」を簡潔に記載した帳票のことです。取引の内容が第三者でも理解できるようにするために作られます。
会計上作成が必要な帳簿には「仕訳帳」と「総勘定元帳」の2種類がありますが、それぞれ原則として1冊ずつしか作成されません。しかし、帳簿が1冊しかないと誰かが帳簿を使用している際に作業分担ができないことが問題となります。
伝票は用紙さえあればいつ誰でも取引の内容が記録できます。そのため、多くの企業では日常仕訳に伝票が活用されることが一般的です。このように業務分担が効率化できることに加え、その場ですぐに取引が記録でき、記録もれが少なくなる点が伝票を活用するメリットだといえるでしょう。
伝票は請求書・領収書・注文書など取引を証明する証憑(しょうひょう)を根拠に作成されます。したがって、伝票を発行するのは経理担当者だけに限りません。取引の当事者である営業担当などが起票できるよう、伝票自体は難しい内容を省き、簿記の専門知識がなくてもわかるような簡便な作りとなっています。
伝票の種類には「入金伝票」「出金伝票」「振替伝票」などがあります。特に入金伝票は使用される機会が多いもののひとつです。
伝票は取引の順番に並び変えて一冊に綴り込めば仕訳帳にもなります。また、勘定科目ごとに並べることで、総勘定元帳と同様の役割を果たすことも覚えておきましょう。
伝票式会計とは
伝票式会計とは、入金伝票や出金伝票などを使って取引の記録を行う会計手法です。仕訳帳や総勘定元帳を仕上げる前段階に伝票で仮計上し、それを経理担当者などが仕訳帳に反映させます。
伝票式会計のメリットは、仕訳の仮計上(営業など、取引の担当者)と仕訳帳への反映(経理担当者)で担当者を分けられる点です。企業では日常的に数多くの取引が行われており、1人の経理担当者がすべての取引を担当するのは現実的ではありません。伝票式会計であれば仕訳の仮計上を複数名で行えるため、経理担当者の作業は仮計上された伝票をチェックしながら仕訳帳に反映させることがメインになります。
伝票式会計は、紙と現金に基づいた伝統的な会計手法として日本でも長く親しまれてきました。近年はキャッシュレス化やデジタル化が進み、実際の紙を使って伝票を起票する機会も少なくなっています。しかし、会計ソフトが導入された現在でも、従来の伝票式会計のシステムがほぼそのまま活かされています。
これまで紙に記入していたものがシステム上に入力するようになっただけで、取引担当者が仕訳を仮計上し、経理担当者が仕訳帳に反映させるという大きな仕組みはこれからも変わらないでしょう。
伝票式会計を詳しく知りたい人はこちらをご覧ください。
入金伝票の書き方
最近では会計ソフトに直接入力する企業も増えていますが、ここでは紙の入金伝票を使用する書き方を解説していきます。解説は図の番号と対応していますので、図を見ながら読み進めてください。
入金伝票は現金の入金時に使用される伝票で、汎用的な入金伝票は枠線が赤色で印刷されています。赤色が用いられる理由は目立たせるためだそうで、「赤=入金伝票」と覚えておいて問題ないでしょう。
1.日付
入金があった日付を記入しましょう。
2.勘定科目
入金伝票を使う時は借方科目が現金で固定されています。よって、貸方科目だけを記入してください。
3.摘要
具体的な取引内容を記入します。誰が見ても分かるように、簡潔に分かりやすく書きましょう。
4.金額
入金された金額を記入します。実際に入金された金額一致しているか確認が必要です。
5.起票者(係印)
起票した人(取引担当者)の名前を記入しましょう。押印でも問題ありません。
入金伝票の仕訳方法
入金伝票では借方の勘定科目である「現金」が省略されているので、仕訳する際には貸方に「現金」を補う必要があります。入金伝票で補う勘定科目は自動的に「現金」となるため、慣れてくれば特に考えずとも入力ができるようになるはずです。
例えば、次のような入金伝票があったとします。
入金伝票では借方の「現金」が省略されていますので、上記の伝票は「X社に商品を現金で150,000円売り上げた」というシンプルな取引を表しています。
この伝票の内容を仕訳帳に反映させたものが以下の表です。
借方の勘定科目に「現金」を補うだけなので、仕訳としてはとても簡単でしょう。
なお、商品を販売しても売上代金を現金で回収していない場合、入金伝票は使いません。後日入金される場合は売掛金として計上する必要があるため「売上伝票」もしくは「振替伝票」を使って仮計上します。
「売上伝票」や「振替伝票」について詳しく知りたい人は、ぜひこちらもご覧ください。
売上を現金で取引した場合は入金伝票が必要
売上代金を現金で受け取った場合には、入金伝票が必要です。売上と入金のタイミングが同時の場合は、先ほど紹介した入金伝票の記入方法で問題ありません。
ただし、売上伝票を使用する場合は売上伝票だけでなく入金伝票も発行します。これは、現金取引では必ず入金伝票を起票する必要があるためです。
具体的な伝票の起票方法は以下の通りです(下記の2つとも起票する必要があります)。
売上伝票
入金伝票
上記事例では、実際はその場で現金で売り上げています。書類上は売掛金で販売したことにして、その後すぐに現金で売掛金を回収した形にしていることがポイントです。
一見すると入金伝票だけを起票するほうが簡単だと思われがちですが、営業担当者によっては「売上=売上伝票」と考えた方が認識しやすいという場合もあるでしょう。
入金伝票を理解して効率的に業務をおこないましょう
入金伝票は、経理の専門知識がなくても起票できるごく簡単なものです。紙の伝票もシステムへの入力も基本的には同じ考えかたのため、現場の実情に合わせて使い分けましょう。
会計ソフトを使わずに入金伝票を作成する場合は、エクセル形式のテンプレートなどの利用が便利です。以下のリンクから入金伝票のエクセルテンプレートを無料でダウンロードできるので、ご活用ください。
ただし、入金伝票だけですべての取引を網羅できません。そのため、出金伝票や売上伝票などと合わせて使いこなすことが大切です。正しい起票の仕方や仕訳方法を理解し、業務効率化に積極的に役立てていきましょう。
よくある質問
入金伝票とは?
入金伝票は現金で入金があった取引について「いつ、どのような取引が誰によって行われたのか」を簡潔に記載した書類のことです。詳しくはこちらをご覧ください。
売上の回収にも入金伝票が必要?
売上代金を現金で回収した場合には、売上伝票に加えて入金伝票の発行が必要です。一度は売掛金で販売したことにして処理し、すぐに現金で回収した形をとります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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