- 更新日 : 2025年2月19日
委託買付と受託買付を仕訳から解説
「委託買付」は、手数料を支払って他者に商品の購入を委託することを指します。一方の「受託買付」は、商品の購入を委託された受託者側からみた場合の買付業務のことを指します。立場が異なるため、仕訳に使用する勘定科目は当然違うものになります。ここでは、委託買付と受託買付の違いなどを解説していきます。
目次
委託買付とは
委託買付とは手数料を他者に支払って、商品の買付を他者に委託することを指します。一般的に商品の仕入は自社で行うことが多いものですが、取扱商品の充実を図りたいときなど、仕入先の開拓を他者に委託することがあります。
例えば、ある企業がイタリアで人気の商品をイタリアの業者から直接仕入れたいと考えていたとしましょう。しかしイタリア語ができない場合は、イタリア語が話せる人、しかもイタリアの人気商品をよく把握している仕入業者に委託するほうがより良い商品を仕入られる可能性が高いといえます。
また一方で、商品によっては特定の代理店を通さなければ商品を卸してもらえないことも多く、そもそも関係者以外は仕入ができないケースもあります。このような場合に、代理店と契約している第三者に仕入を依頼するのが委託買付です。
受託買付とは
受託買付とは、委託買付とは立場が逆になります。受託者からみた場合の買付業務のことを受託買付といい、商品の仕入を委託された人を受託者といいます。
先ほどのイタリアの商品例でみると、イタリア語が堪能でイタリアの人気商品の仕入先のことをよく知っている業者が受託者となります。受託者は委託者から手数料を受け取って商品を仕入れます。
委託買付の仕訳例
商品の仕入を委託している委託者は、委託買付勘定科目を使用するか否かで仕訳が異なります。
委託買付勘定を使用する場合、委託者が受託者に商品代金を前払いしたときや、商品代金を決済したときは委託買付勘定を借方に、受託者から買付計算書が送られたときには委託買付勘定を貸方に記載します。
仕訳の具体例をあげてみます。まずは委託買付勘定を使用した場合の仕訳例です。
委託買付勘定を使用した場合の仕訳の具体例
委託者は、受託者に商品の仕入を依頼し、前金として10,000円を現金で支払いました。
受託者から、買付計算書と依頼していた商品が同時に送付されてきた場合の仕訳は、以下のとおりです。なお、受託者からの請求額については現金で支払ったとします。
なお、海外からの仕入など、買付計算書より商品が遅れて到着する場合は、「未着品」勘定を使用し、商品が到着した時点で未着品勘定から仕入勘定へ振り替えます。
続いて、委託勘定科目を使用しない場合の仕訳の具体例です。
委託勘定科目を使用しない場合の仕訳の具体例
委託者は、受託者に商品の仕入を依頼し、前金として10,000円を現金で支払いました。
受託買付勘定を使用しない場合は、前払金勘定を使用します。
受託者から、買付計算書と依頼していた商品が同時に送付されてきた場合の仕訳は以下のとおりです。
買付代金:30,000円
買付手数料:5,000円
前受金:-10,000円
請求額:25,000円
委託買付勘定を使用しない場合、代金の未払い分は買掛金勘定を使用します。
後日、受託者に対して未払いであった請求額を現金で支払った場合の仕訳は下記のとおりです。
受託買付の仕訳例
他者からの依頼を受けて代わりに商品の仕入をする際、受託買付勘定を使用するか否かで仕訳が異なります。
受託買付勘定を使用する場合、受託者が委託者から商品の買付代金を預かった場合や、商品代金の決済を受け取ったときは受託買付勘定を貸方に、買付手数料などを受け取ったときは受託買付勘定を借方に記載します。
仕訳の具体例をあげてみます。まずは受託買付勘定を使用した場合の仕訳例です。
受託買付勘定を使用した場合の仕訳の具体例
委託者から商品の購入を委託され、前金として現金10,000円を受け取った際の仕訳は以下のとおりです。
委託者から依頼された商品を購入し、卸売り業者に現金で30,000円支払いました。
委託者に対し、商品の買付計算書と商品と同時に送付した際の仕訳は以下のとおりです。
買付代金:30,000円
買付手数料:5,000円
前受金:-10,000円
請求額:25,000円
後日、委託者から請求額25,000円を現金で受け取りました。仕訳は以下のとおりです。
続いて、受託勘定科目を使用しない場合の仕訳の具体例です。
受託勘定科目を使用しない場合の仕訳の具体例
委託者から商品の購入を委託され、前金として現金10,000円を受け取りました。仕訳は以下のとおりです。
受託買付勘定を使用しない場合は「預り金」勘定を使用します。
委託者から依頼された商品を仕入て、卸売り業者に現金で30,000円支払いました。
委託者に対し、商品の買付計算書と商品と同時に送付した際の買付計算書と仕訳は以下のとおりです。
買付代金:30,000円
買付手数料:5,000円
前受金:-10,000円
請求額:25,000円
後日、依頼者から請求額25,000円を現金で受け取った際の仕訳は以下のとおりです。
委託販売・受託販売との関係性
「委託買付」「受託買付」とよく似た勘定科目に、「委託販売」「受託販売」があります。
委託販売とは、手数料を支払って自社商品の販売を他者へ委託することを指します。委託する側を委託者、委託された側を受託者と呼びます。
一方の受託販売は、手数料を受け取って、委託者の商品を代わりに販売することを指します。
委託販売と受託販売が他者に「販売」を委託したりされたりするのに対し、委託買付・受託買付は他者に「仕入」を委託する、あるいは委託されることを指しています。
いずれも、一般的な商品販売とは収益を認識するタイミングや、資金の回収方法などが異なる特殊商品売買です。仕入と販売という正反対の関係にはありますが、合わせて覚えておくとよいでしょう。
委託買付、受託買付は使用する勘定科目によって仕訳が異なる
委託買付は、手数料を支払って商品の仕入を他者に委託することを指し、受託買付は、手数料を受け取り、委託者に代わって商品の仕入を行う買付業務のことを指します。いずれも仕入を委託する、あるいは委託される特殊商品売買のひとつです。使用する勘定科目によって仕訳が異なりますので注意しましょう。
よくある質問
委託買付とは?
委託買付とは手数料を他者に支払って、商品の買付を他者に委託することを指します。詳しくはこちらをご覧ください。
受託買付とは?
委託者から手数料を受け取って、委託者の代わりに商品の買付を行うことを指します。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
退職給付会計の過去勤務費用とは?算出方法をわかりやすく解説
過去勤務費用は、退職にともない支給する退職給付に関連するものです。過去勤務費用は退職給付においてどのような性質の費用を表すのでしょうか。この記事では、過去勤務費用の概要と算出方法、過去勤務費用に関連する未認識過去勤務費用について解説していき…
詳しくみるPCソフトやシステム等の保守料の仕訳に使う勘定科目
PCソフトやシステムなどの保守料は、修繕費や支払手数料、事務用品費、前払費用、長期前払費用などの勘定科目で仕訳をすることが可能です。それぞれの勘定科目の使い分けや選び方、具体的な仕訳例を提示しつつ解説します。 PCソフトやシステム等の保守料…
詳しくみるレンタル料の仕訳と勘定科目をリースとの違いを含めて解説
事業では、あまり使わないものや高額なものをレンタルすることがあります。レンタル料を経費として仕訳する際、使用する勘定科目は「備品」や「機器」などレンタルするものにより異なります。主に使うのは、「賃貸料」「地代家賃」「旅費交通費」などです。 …
詳しくみる敷金(保証金)の勘定科目とは?不動産賃貸の仕訳例を解説
物件を契約する時に発生する敷金。物件の賃貸借契約書を読むと返還されるようにも償却されるようにもとれるため、初めての敷金の会計処理をする場合は戸惑ってしまうこともあります。この記事では敷金の特性や会計処理をする時の勘定科目や仕訳例、消費税の取…
詳しくみる食材を経費にする時の仕訳に使う勘定科目まとめ
事業に関係のある食材であれば、かかった費用は経費として計上できます。例えば、レシピを考案するために購入した食材や、グルメ記事を執筆する際に注文した食事代などもすべて経費の対象です。どのような勘定科目を使えるのか、仕訳例を挙げて説明します。 …
詳しくみるテレビ購入費を経費にした場合の仕訳と勘定科目まとめ
テレビを購入した場合、目的によっては購入費を経費として計上できます。例えば、ビデオ研修や来客用に購入したテレビの費用は、経費計上が可能です。また、仕訳をするときは金額によって勘定科目が異なります。仕訳例を紹介するので、ぜひ参考にしてください…
詳しくみる