- 更新日 : 2024年8月8日
リース資産の減価償却を解説 | 減価償却費の計算から仕訳まで
機械や運搬具など、固定資産の種類によっては購入価格が高額になるものがあります。特に、規模の小さな会社で高額の固定資産を自己資金で取得すると、キャッシュ・フローが悪化することにもなるでしょう。購入時に一時的に費用を負担するのではなく、毎月の費用負担を一定にし、かつ購入したときと同じように固定資産を利用できるようにしたサービスがリース取引です。今回は、リース取引を利用する側に焦点を当てて、減価償却の計算や仕訳など、会計処理を解説していきます。
目次
リース取引とは?
リース取引とは、リース会社などの固定資産の貸し手が、借り手に代わって固定資産を取得し、固定資産を貸し出す取引をいいます。固定資産の所有権は貸し手のままで、借り手は固定資産の使用権と使用による収益獲得権を得られます。
使用したい固定資産をリース会社に購入してもらう代わりに、借り手がリース料を定期的に負担するのがリース取引です。
リース取引と似た取引には、レンタルがあります。レンタルは貸し手がレンタル品を仕入れ、貸し手自身がレンタル料を決定して貸し出す取引です。リース取引は、リースの利用者自身が仕様や固定資産を指定できること、価格交渉ができることがレンタルとは異なります。
リース取引は主に、産業機械や医療機器、事務機器、情報通信機器など、購入価格が高額になりがちな固定資産でよく見られます。
リース取引で減価償却するケース
リース取引は契約内容により「ファイナンス・リース取引」と「オペレーティング・リース取引」に分類されます。ファイナンス・リース取引は以下の2つの条件に該当するリース取引であり、実態として資産の代金を払いながら利用する形になるため、減価償却の対象とされます。
- リース期間中の契約解除(解約)不能
- フルペイアウトに該当
- リース料総額の現価がリース物件購入見積額のおおむね90%以上(現在価値基準)
- 解約不能のリース期間が物件の経済的耐用年数のおおむね75%以上(経済的耐用年数基準)
なお、上記の条件を満たせないリース取引はオペレーティング・リース取引に該当します。
また、ファイナンシャル・リース取引はリース契約終了後の所有権の扱いにより、さらに2つの形態に分類されます。
所有権移転ファイナンス・リース取引
リース期間終了後、借り手に所有権が移転すると考えられる取引、または同等の効果があると考えられるファイナンス・リース取引を「所有権移転ファイナンス・リース取引」といいます。具体的には、以下のいずれかの条件を満たした取引が該当します。
- 契約上、所有権が貸し手に移転することが明確な取引(譲渡条件付リース取引)
- 借り手に著しく有利な価格で買い取る権利が付与された取引(割安購入選択権付リース取引)
- リース物件が借り手の特別仕様である取引(特別仕様物件のリース取引)
所有権移転外ファイナンス・リース取引
ファイナンス・リース取引のうち、所有権移転ファイナンス・リース取引に該当しない取引を「所有権移転外ファイナンス・リース取引」といいます。
たとえば、ファイナンス・リース取引の条件であるフルペイアウトのうち現在価値基準は満たすものの、法定耐用年数に対してのリース期間が短く(70%以下相当、法定耐用年数10年以上の資産は60%以下相当)、かつリース終了時に所有権が移転しない取引などが該当します。
リース取引で減価償却しないケース
オペレーティング・リース取引は、ファイナンス・リース取引の条件を満たさないリース取引を指します。リース期間終了時に所有権が借り手側に移転せず、リース期間中の整備・修理等の費用は貸し手側が負担。ほぼレンタルと同様の扱いとなるため、会計上では資産の取得としてみなさず、減価償却の必要がありません。またリース料の支払いは、その都度費用として計上されます。
リース資産における減価償却費の計算方法
減価償却をするリース資産の計算方法について解説していきます。
所有権移転ファイナンス・リース取引の計算方法
ファイナンス・リース資産として計上された資産は、自己所有資産として取得したものと同等にみなされるため、通常の資産と同様に減価償却しなければなりません。
「所有権移転ファイナンス・リース取引」でのリース資産の減価償却は、自己で所有している同種の固定資産の減価償却方法と同じです。たとえば、同じ種類の機械装置の耐用年数が8年、残存簿価ゼロ、定額法で処理しているなら、リース資産も同じ方法で減価償却を行います。
(例)リース資産として300万円の機械装置を計上。同種の機械装置は、残存簿価ゼロ、耐用年数8年、定額法で処理している。
1年あたりの減価償却費は375,000円
所有権移転外ファイナンス・リース取引の計算方法
所有権移転外ファイナンス・リース取引で取得したリース資産の減価償却費は、所有権移転ファイナンス・リース取引とは異なる計算で算出します。リース資産の耐用年数とリース期間が異なる場合、リース期間終了後も帳簿に未償却の資産が残ってしまうというためです。
所有権移転外ファイナンス・リース取引の原則的処理では、いずれのリース資産を取得した場合でも、残存簿価簿価をゼロとし、リース期間を償却期間とした減価償却が行われます。なお、減価償却の処理方法は選択可能ですが、法人税法施行令により定められた「リース期間定額法」の採用が一般的です。
(例)リース資産として300万円の機械装置を計上。リース期間は6年でリース期間定額法を採用している。
1年あたりの減価償却費は501,000円
なお、所有権移転外ファイナンス・リース取引については、以下の条件のいずれかを満たす場合にのみ、売買処理の簡便法としてリース料の費用計上が認められます。
- リース期間が1年以内
- リース料の総額が300万円以下
- 借り手側が中小企業(未払リース料残高の注記が必要)
リース資産を減価償却した場合の仕訳
前述したリース資産の減価償却費の計算方法をもとに、リース資産の決算時の減価償却の仕訳を解説していきます。
所有権移転ファイナンス・リース取引
所有権移転ファイナンス・リース取引の減価償却の仕訳を、具体例とともに見ていきましょう。
(仕訳例)前期に、リース資産として300万円の機械装置を計上した。同種の機械装置は、残存簿価ゼロ、耐用年数8年、定額法(8年の定額法償却率は0.125)で処理している。なお、リース取引は所有権移転ファイナンス・リース取引に該当するものとする。
- 間接控除法
375,000円 | 375,000円 |
- 直接控除法
375,000円 | 375,000円 |
所有権移転ファイナンス・リース取引は、リース期間終了後には所有権が借り手に移るため、有形償却資産としての耐用年数を基準に減価償却処理されます。
所有権移転外ファイナンス・リース取引
所有権移転外ファイナンス・リース取引の減価償却の仕訳も、形は所有権移転ファイナンス・リース取引と同じです。減価償却費の計算方法だけが異なります。
(仕訳例)前期に、リース資産として300万円の機械装置を計上した。同種の機械装置は、耐用年数8年であり、本契約ではリース期間6年、リース期間定額法で処理している。8年の定額法償却率は0.125、6年の定額法償却率は0.167である。なお、リース取引は所有権移転外ファイナンス・リース取引に該当するものとする。
- 間接控除法
501,000円 | 501,000円 |
- 直接控除法
501,000円 | 501,000円 |
所有権移転外ファイナンス・リース取引では、リース契約終了後はリース資産を返却する場合があるため、リース期間を基準とした減価償却を行います。
また、定額法の場合には最終年度の減価償却時に1円の残存簿価を残しますが、リース期間定額法を適用するリース契約では手元に資産が残らないため、ゼロ円になるまで減価償却をしなければなりません。
なお、前述の条件を満たした所有権移転外ファイナンス・リース取引は、オペレーティング・リース取引と同様に、リース料の費用計上が認められています。
リース料を費用計上する際の仕訳は以下の通りです。
×××円 | ×××円 |
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リース取引には資産計上と減価償却が必要なケースがある
リース取引の形態は、契約条件によって大きく3つに分類できます。リースの条件や借り手の企業規模によって会計処理が大きく変化。リース資産を減価償却する場合や、リースの代金を費用として計上できるケースもあります。リースの会計処理は契約事にさまざまなパターンが考えられますので、どんな処理が必要な契約なのか、あらかじめチェックしておきましょう。
【参考】国税庁|No.5704 所有権移転外リース取引
国税庁|Ⅲ資料編
よくある質問
リース取引による資産は減価償却できる?
資産の取得と同様の効果があると考えられる、ファイナンス・リース取引に該当するリース取引は、リース物件を資産計上して減価償却を行います。詳しくはこちらをご覧ください。
リース取引で減価償却できないケースは?
ファイナンス・リース取引に該当しないリース取引は、リース料支払時に費用計上するため、減価償却はできません。詳しくはこちらをご覧ください。
リース資産の減価償却費の計算は?
所有権移転ファイナンス・リース取引の場合は、同種の資産と同様に減価償却費を計算します。所有権移転外ファイナンス・リース取引は、リース物件の残存簿価をゼロにしてリース期間定額法などで計算します。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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