- 更新日 : 2024年8月13日
売上債権回転率とは?計算式や目安と平均、売上債権回転期間の求め方まで解説
経営指標の一つに「売上債権回転率」があります。
さて、この指標はどのような時に役に立つのでしょうか?
この記事では、売上債権回転率の計算式や値の目安、平均値、さらには売上債権回転期間についてもわかりやすく解説します。
売上債権回転率とは?
売上債権回転率とは、売上高と売上債権の比率のことです。経営取引から生じた売上債権が、どの程度滞留しているかをみるための指標といえます。
経営上、「回転」という言葉をよく使います。ここでの「回転」は、「回収」と同じ意味を持ちます。
そして、売上債権とは、顧客との取引で生じた営業上の債権のことをいい、具体的には受取手形や売掛金などを指します。
会社には種々の債権がありますが、金銭債権とは将来、金銭を持って弁済を受けるべき債権のことをいい、金銭債権は売上手形や売掛金のような営業債権と、貸付金、未収入金のような営業外債権とに分けられます。売上債権と営業債権はほぼ同じ意味で使用されます。
売上債権回転率は、売上債権に占める売上高の割合を計算し、売上債権回転率が大きいほど、売上債権回収までの期間が短いことを意味します。
売上債権回転率は、売上債権を回収する速さを表す指標ともいえます。
売上債権回転率の計算式
売上債権回転率の計算式は次のとおりです。
なお、売上債権には売掛金、受取手形の他、受取手形を期日よりも早く現金化した割引手形も含め、売上債権に係る貸倒引当金があればマイナスします。
ある月に請求書を発行したうち、1ヶ月後には50%回収できたとすると、
当月の仕訳 | 借方 | 貸方 | ||
売掛金 | 100,000 | 売上高 | 100,000 |
当月の仕訳 | 借方 | 貸方 | ||
預金 | 50,000 | 売掛金 | 50,000 |
仮にもともと売掛金がないものとすると、翌月末の売掛金残高は
100,000円-50,000円=50,000円
となって、この1か月間の売上債権回転率は、100,000÷50,000=2(回)となります。
これは、2回転すれば売上高がすべて回収されるという意味になります。
しかしながら、通常は売上債権回転率は貸借対照表と損益計算書から求めることが多く、貸借対照表の売掛金や受取手形は決算時点のものであることに対し、損益計算書の売上高は事業年度(通常1年)ですので、通常は売上高の方が大きくなります。
売上債権回転率が大きいほど、売上債権が効率的に回収されていると言えますが、回収されない売掛金が多いと、売上債権回転率が下がっていきます。
売上債権回転率の目安や平均
一般には、会社にとって売上債権回転率が高い方が回収サイクルが早いということで「よい」とされ、回転率が低いと資金の回収サイクルが遅いということで、「悪い」とされます。
店頭で現金販売をする小売業や飲食業では、売上は現金での回収率が高いため、売上債権回転率が非常に高くなる傾向がありますが、これは業態によるものです。
例えば、3ヶ月サイトの受取手形で売掛金を回収することとなっている会社では、売上債権回転率は4回となってしまいますが、これは会社の回収ルールが正常に循環している中での回転率ですので問題ありません。
このように売上債権回転率は業種や業態、規模などによっても異なります。全体的に見れば、年6回以上であれば理想とされ、年3回以下では危険な状態、すなわち回収に問題ありといえます。
中小企業実態基本調査(令和元年確報)で、業態別の売上債権回転率を求めてみますと、次のようになっています。しかしながら、会社規模によっても売上債権回転率は異なってくるため、それぞれの業態平均値となっています。
業 態 | 売上債権回転率(回) |
---|---|
建設業 | 9.07 |
製造業 | 5.75 |
情報通信業 | 6.75 |
運輸業、郵便業 | 7.85 |
卸売業 | 6.56 |
小売業 | 14.44 |
不動産業、物品賃貸業 | 10.77 |
学術研究、専門・技術サービス業 | 9.55 |
宿泊業、飲食サービス業 | 47.52 |
生活関連サービス業、娯楽業 | 34.93 |
【参考】中小企業実態基本調査 / 令和元年確報(平成30年度決算実績) / 確報
売上債権回転率を改善する方法
売上債権回転率を高める、すなわち売掛金等を効率的に回収するためには次の2点が重要となります。
- 回収期日をしっかりと把握し、回収が遅れている取引に対して催促するなど管理を強化すること
- 特定の取引先に売上債権が極端に集中してしまうことがないようにしたり、回収までの期間を早めてもらったりするなどの方法を検討する
こと
などが挙げられます。
売上債権回転期間とは?
売上債権回転率は、売上債権を回収する速さを表す指標ですが、売上債権を回収するまでにかかる期間は「売上債権回転期間」と呼ばれます。
売上債権回転期間の計算式
売上債権回転期間の計算式は次のとおりです。
実際には、日数や月数で表す方が現実的であり、売上債権を回収するまでにかかる期間を日数で示す場合の計算式は、
「売上債権回転期間=売上債権÷売上高×365日」
となり、さらに月数で示す場合の計算式は、
「売上債権回転期間=売上債権÷売上高×12ヶ月」
となります。
売上債権回転期間が短いほど、売上債権を短期間で回収できることになります。
売上債権回転率を求めて効率的に売上債権を回収しよう
売上債権回転率は、売上債権が効率的に回収されることを示す値ですが、債権管理には網羅性と確実性が大切です。
売掛金の管理では、入金担当者が日々入金状況を確認し、滞留債権年齢表などの管理表を作成することが大切です。また、最近では債権管理システムによる債権管理の自動化も行われています。
いずれにせよ、効率的な債権管理を行い、売上債権回転率が低迷しないように管理しましょう。
よくある質問
売上債権回転率とは何ですか?
売上高と売上債権の比率のことを売上債権回転率といいます。詳しくはこちらをご覧ください。
売上債権回転率は、「高い」と「低い」どちらがいい状態ですか?
業種によっても異なりますが、一般的には会社にとって売上債権回転率が高い方が回収サイクルが早いということで「よい」とされ、回転率が低いと資金の回収サイクルが遅いということで、「悪い」とされます。詳しくはこちらをご覧ください。
売上債権回転期間とは何ですか?
売上債権を回収するまでにかかる期間のことを売上債権回転期間といいます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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