- 更新日 : 2025年12月11日
消費税の中間納付とは?計算方法や仕訳の解説
消費税の中間納付とは、課税期間の途中で分割して税金を納める制度です。前年の納税額が48万円を超える企業や法人が対象で、期限までに中間納付をしない場合は延滞税が生じます。
中間納付の回数や課税期間、納税額は前年の納税額に応じて決まるのが特徴です。今回は消費税の中間納付の対象、納付時期、計算方法、仕訳例を紹介します。自社が消費税を分割して納めることが可能かわかるだけでなく、納税額の算定や記帳方法も紹介するので、ぜひご一読ください。
目次
消費税の中間納付とは?
消費税の中間納付とは、消費税の申告・納税を1年に複数回に分けて行う制度を意味します。原則、消費税の納付期限は、法人では事業年度の終了の翌日から2ヶ月以内、個人事業主の場合は毎年3月末までです。
中間納付の目的は、安定した税収を確保することです。1年に1度しか税収を得られないと国は突発的な資金需要に対応できず、不都合が生じる場合もあります。納税者側にとっても一度の支払額を抑えられるため、資金繰りの厳しい企業にはメリットが大きい方法といえるでしょう。
消費税の中間納付を行った場合、決算や確定申告で税額が調整され、控除しきれない残額については還付を受けられます。
予定申告方式の場合、法人税や消費税の納付書は、事業年度の終了から約1ヶ月後のタイミングで管轄の税務署から送付されます。
消費税の中間納付の対象は?
消費税の中間納付の対象となるのは、直前の課税期間の確定消費税額が一定金額を上回る事業者となっています。消費税中間納付の対象を法人と個人事業主に分けてそれぞれ解説していきます。
個人事業主の場合
個人事業主における消費税の中間納付の対象は、前年度の消費税として納めた税金が48万円(地方消費税を含まない額)を超えた人が対象です。
48万円を超えるかを算出する際は、地方消費税をカウントしないことに注意が必要です。
個人事業主で2026年に中間納付の対象となる人は、2025年分の確定申告で確定した消費税の年税額が48万円を超える人が対象になります。
法人の場合
法人における消費税の中間納付の対象は、前年度の消費税として納めた税金が48万円(地方消費税を含まない額)を超えた企業になります。
48万円を超えるかを算出する際は、地方消費税をカウントしないことに注意が必要です。
消費者が普段の買い物で支払う消費税は、国に支払う国税と地方消費税の合計額で、標準税率の10%と軽減税率の8%に含まれています。消費税の中間納税額には地方消費税分を含まないため、10%の場合は7.8%、8%の場合は6.24%のみが課税対象です。
自社が中間納付の対象かわからない場合、納付書や確定申告書を手元に用意して昨年の納税額を確認してはいかがでしょうか。
なお中間申告の義務がない前年の消費税額が48万円を下回る企業でも、任意の中間申告制度を適用できます。この場合、前年の確定消費税額の1/2を中間消費税として納めます。
消費税の中間納付の時期・回数は?
中間納付の時期や回数は前年度の消費税額によって変わるのが特徴です。昨年の納税額に応じて、年1回、年3回、年11回のいずれかに該当します。
| 昨年度の納税額 | 中間申告の回数 | 中間申告の納税額 |
|---|---|---|
| 48万円以下 | 0(中間申告はなし) | 0(中間申告はなし) |
| 48万円超~400万円以下 | 年1回 | 昨年度の納付額の6/12 |
| 400万円超~4,800万円以下 | 年3回 | 昨年度の納付額の3/12 |
| 4,800万円超 | 年11回 | 昨年度の納付額の1/12 |
中間納付の回数が1回で決算が3月の会社の場合、課税期間は4〜9月です。中間納付の回数が3回で決算が3月の会社の課税期間は4〜6月、7月〜9月、10〜12月に分かれます。
中間納付の回数が11回で決算が3月の場合、課税期間は「4月」「5月」「6月」「7月」「8月」「9月」「10月」「11月」「12月」「1月」「2月」の計11回です。
中間納付の納付期限は原則、各期間終了の2ヶ月後です。ただし回数が11回の企業においては、課税年度の開始から1ヶ月間は、その期間が2ヶ月経過した後の2ヶ月後が納税期限になるためご注意ください。また個人事業主の場合、1月〜3月分は5月末が期限です。
中間納付の対象となる事業者に対して、税務署から納付書が送付されます。期限までに納税を済ませれば、申告は完了したものとみなされます。
中間納付の回数は事業者の都合で変更はできません。前年度の納税額に従い、判断が行われるため、従来通りの一括納付がよいと考えても希望は通らないことに注意しましょう。
消費税の中間納付の計算方法は?
中間納付の納税額の計算方法は「予定申告方式」と「仮決算方式」の2種類があります。予定申告方式は前年の消費税額に基づき税務署が中間納付額を算出するため、事業者に手間はかかりません。
仮決算方式は中間納付の期間ごとに決算を行い、自ら納税額を算出します。実態と税額が乖離せず、正確な税務会計につながるのが利点です。予定申告方式と仮決算方式それぞれの特徴やメリット、デメリットをお伝えします。
予定申告方式
予定申告方式は前事業年度、または前年に納めた消費税額を中間納付の月数で除することで、各期間の納税額を出す方法です。
管轄の税務署から送付される納付書に予定申告方式に基づく納税額の記載があります。同封の消費税、および地方消費税の確定申告書に必要事項を記入のうえ返信し、納付書を用いて納税します。
予定申告方式は自ら納税額を計算する必要がないため、手間を削減できるのがメリットです。ただし、消費税及び地方消費税の確定申告書を提出する必要があることには注意しましょう。
仮決算方式
仮決算方式は中間申告のたびに決算処理を行い、納税額を出す方法です。実際の利益を元に納税額を明らかにするため実態を正確に反映できる反面、申告の負担は大きいのが特徴です。
前期と比べて業績が悪化している場合は、仮決算方式により納税額が少なくなります。資金繰りを調整できる反面、算定した税額がマイナスになっても還付は受けられないため注意してください。
また、中間納付の仮決算では簡易課税制度を適用でき、みなし税率を用いて消費税の算出を簡略化できます。
消費税の中間納付の仕訳は?
消費税の中間納付の仕訳は税込経理方式と税抜経理方式のどちらを採用しているかで異なります。税込経理方式は租税公課勘定を用いて納税額を記帳するのが特徴です。
税抜経理方式ではサービスの対価として受け取った消費税と、仕入れ時に支払った消費税を相殺して差額を繰り延べる処理が必要です。
税込経理方式
税込経理方式の仕訳では租税公課勘定を使用します。
例)中間申告で100万円の消費税を納付した
| 借方 | 貸方 | 摘要 | |||
|---|---|---|---|---|---|
| 租税公課 | 1,000,000円 | 普通預金 | 1,000,000円 | 中間納付 | |
例)決算処理で確定納付額が1,000,000円と判明した。
| 借方 | 貸方 | 摘要 | |||
|---|---|---|---|---|---|
| 租税公課 | 1,000,000円 | 未払消費税 | 1,000,000円 | 確定納付 | |
税込経理方式の場合、日々の取引を税込金額で処理しますが、決算時には申告で確定した消費税額との差額を損益として精算する必要があります。
未払消費税は負債計上され、確定した納税額に応じて租税公課として損金計上されます。
税抜経理方式
税抜経理方式の場合「仮払金」または「仮払消費税等」の勘定科目を使用します。決算時にサービスの対価として受け取っていた「仮受消費税」と「仮払消費税」を相殺し、差額を「未払消費税」として翌年に繰り延べてください。
例)中間申告で100万円の消費税を納付した
| 借方 | 貸方 | 摘要 | |||
|---|---|---|---|---|---|
| 仮払金 | 1,000,000円 | 普通預金 | 1,000,000円 | 中間納付 | |
例)決算処理で確定納付額が1,000,000円と判明した。仮払消費税が3,000,000円で、仮受消費税の金額は5,000,000円。
| 借方 | 貸方 | 摘要 | |||
|---|---|---|---|---|---|
| 仮受消費税 | 5,000,000円 | 仮払消費税 仮払金 未払消費税 | 3,000,000円 1,000,000円 1,000,000円 | 中間納付 確定納付額 | |
もし、端数の関係で差額が生じた場合は雑収入または雑損失に計上します。
消費税の中間納付が遅れてはいけない理由は?
消費税の中間納付は、確定申告時の税負担を分散させるための制度ですが、納税義務がある以上、期限を守ることは絶対条件です。納付が遅れると、会社経営にとって無視できないデメリットが生じます。なぜ期限厳守が求められるのか、主な2つの理由を解説します。
延滞税が加算される
納期限の翌日から納付するまでの日数に応じて、本来納めるべき税額に加え、「延滞税」というペナルティが課されます。
延滞税は、納期限の翌日から2ヶ月を経過する日までは低めの税率ですが、それ以降は年利が高くなる仕組みになっており、放置すればするほど負担が重くのしかかります。 これは事業にとって「何の利益も生まない無駄な出費」です。余計なコストを発生させないためにも、納付書が届いたらすぐに納期限を確認し、期日内に手続きを済ませましょう。
会社や個人事業主の資金繰りに影響する
中間納付は、決算時期とは異なるタイミングでまとまった資金の流出が発生するため、事前の資金計画が非常に重要です。
もっとも注意すべき点は、中間納付額が原則として前年の確定税額をベースに計算されることです。たとえ直近の景気変動で当期の売上が減少していたとしても、業績が好調だった前年の数字を基にした高額な納税を求められるケースがあります。
「売上は減っているのに、税金の支払いは重い」という状況は資金繰りを強く圧迫します。納付直前になって資金不足で滞納することがないよう、納税資金の確保はもちろん、中間申告に伴う経理処理も含めて計画的に準備を進める必要があります。
消費税の中間納付をしない場合はどうなる?
前年、または前事業年度の消費税額が基準額を超えるのに中間納付を行わなかった場合どうなるのでしょうか。
消費税および地方消費税の確定申告書を提出しなかった場合、予定申告方式での申告書の提出があったとみなされ、消費税額が確定します。ペナルティはありませんが、期限後の申告書の提出は認められないため、仮決算方式への変更は不可です。
シンプルに納付が遅れた場合、納付期限の翌日から実際の納付日までの延滞税が発生します。延滞税の税率は通常の確定申告の場合と変わりません。
具体的には納付期限の翌日から2ヶ月を経過するまでは7.3%、2ヶ月を超えた場合は14.6%の負担がかかります。
消費税の中間納付が必要なのは前年の納税額が48万円を超える場合
法人も個人事業主も前年の消費税額が48万円を超える場合に中間納付を行います。大きな負担となる納税を少額に分けられるのは経営上メリットがあります。
中間納付の回数や納期は前年の消費税額に応じて決まるため、ルールに沿った正確な算定が必要です。申告方法には2種類があり、必ずしも期間ごとに決算や確定申告を行うわけではありません。
税抜経理方式と税込経理方式で中間納付の仕訳内容が異なることにも注意が必要です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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