- 更新日 : 2024年8月8日
リース債務
「リース債務」は、リースした物品に対するリース料などのことを指す勘定科目です。リースを行った際には、このリース債務をはじめとしたリース会計と呼ばれる処理を行う必要があり、その際に気をつけるポイントが多数あります。
今回はリース債務を中心に、リース会計において注意しなければいけないポイントを学習していきましょう。
リース債務の種類とは?
リース会計やリース債務について学ぶためには、まずリースの取引にどんなものがあるのかを理解することが大切です。
リースの取引には主に、以下の2種類があります。
・ファイナンス・リース取引
・オペレーティング・リース取引
このうち「ファイナンス・リース取引」にはさらに以下の2種類があります。
・所有権移転ファイナンス・リース取引
・所有権移転外ファイナンス・リース取引
例えばパソコンをリースした際に、中途解約ができず、使用中の修理費用は使う側持ちである契約と、契約期間が柔軟に変更でき、使用中の修理費用は貸した側持ちである反面、リース期間が終了した場合にパソコンを返却するという契約があります。
この場合、前者のような契約がファイナンス・リース取引、後者の方がオペレーティング・リース取引です。
さらにファイナンス・リース取引であっても契約後にパソコンを返却するか追加料金を払って買い取るような契約であれば「所有権移転外ファイナンス・リース取引」、契約後にパソコンを返却する必要がない場合には「所有権移転ファイナンス・リース取引」となります。
リースの期間による違いとは?
リース債務を考える際には、期間についても考えましょう。リース債務はいわゆる「1年基準(ワン・イヤー・ルール)」によって短期・長期に分けることができます。
1年基準は資産や負債(今回の場合はリース資産やリース債務)が「流動」か「固定」かを判断するものとなります。貸借対照表の翌日から数えて1年以内に契約が満了するものに関しては、「流動」として扱います。この「流動」として扱うものが、短期リース債務にあたるのです。
そして逆に、1年を超えて契約が続くものは「固定」として扱います。この「固定」として扱うものが、長期リース債務です。この2つの違いについても理解しておき、混同しないようにすることが大切です。
リース債務は財務諸表でどう扱う?
では、このような特徴があるリース債務は、実務の中でどのように会計処理を行っていけばよいのでしょうか。
実務上では所有権移転ファイナンス・リースの場合、資産の取得とされる取引ですので、通常の売買取引と同じようにリース資産とリース債務を扱います。
逆に、所有権移転外ファイナンス・リース取引と、オペレーティング・リース取引の場合、資産の取得とはみなされない取引になりますので、リース料は「賃借料」として考えます。
これらを踏まえたうえで、実際の計上方法についてまとめると、以下のようになります。
仕訳例:営業車を5年リースで契約し、1年目のリース料金50万円を小切手で支払った。
仕訳例:所有権移転外ファイナンス・リース取引、およびオペレーティング・リース取引の場合
資産の所有権が移転するか否かによって処理が変わりますので、混同しないように注意が必要です。
減価償却費はどのように計上する?
さて、リースによって得ている資産も、当然減価償却を行う必要が出てきます。この場合にも、資産の所有権が移転するか否かによって、処理方法が変わりますので注意しましょう。
資産を最終的に返却する必要がない所有権移転ファイナンス・リース取引の場合には、自社にある資産の減価償却と同じ方法で減価償却費を計上してしまって問題ありません。
所有権移転外ファイナンス・リース、およびオペレーティング・リース取引の場合、平成20年4月1日からは、税務上では売買取引として扱われています。ですから、支払うリース料がそのまま減価償却費として扱われ、リース料を支払い終わった段階で、減価償却限度額と累計のリース料が合致します。
このようなことから、リース取引の減価償却費計上方法は、以下のようになります。
■例:年間50万円の支払いで5年リースしている営業車の、1年分の減価償却費を計上する。
仕訳例:所有権移転ファイナンス・リース取引の場合(直接法)
仕訳例:所有権移転外ファイナンス・リース取引、およびオペレーティング・リース取引の場合
仕訳例:年間50万円の支払いによる5年リース(所有権移転外ファイナンス・リースもしくはオペレーティング・リース)が終了した段階の減価償却費の計上
まとめ
リース債務は、ファイナンス・リース取引、オペレーティング・リース取引によって処理方法が変わります。さらに、ファイナンス・リース取引は所有権が移転するか否かという部分でさらに扱いが異なるということを押さえておきましょう。
さらに、資産が「固定」か「流動」かという部分で、長期・短期の違いが生まれることも忘れてはいけません。1年基準に照らし合わせて、分類の仕方を誤らないようにしましょう。
そして、実務上におけるリース取引の計上に関しては、所有権が移転するか否かで計上方法はもちろん、減価償却費の扱い方についても全く変わるという部分まで押さえることが重要です。
リース取引の分類を正しく理解したうえで、その分類に則した会計処理ができるようにしていきましょう。
関連記事
・リース料
・生産性向上設備投資促進税制|リース品は使える?生産性向上設備投資促進税制で最先端の設備を手に入れよう!
・減価償却累計額はどんな勘定科目?考え方と仕訳のルールを解説
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
観葉植物代の仕訳に使える勘定科目まとめ
観葉植物を購入したときの代金は、消耗品費・福利厚生費・雑費・交際費・広告宣伝費などの勘定科目で仕訳ができます。それぞれどのようなケースでどの勘定科目を選択できるのか、詳しく見ていきましょう。また、鉢植えにしている場合の植木鉢や、メンテナンス…
詳しくみる金利スワップの仕訳とは?勘定科目や会計処理を具体例でわかりやすく解説
企業が銀行から融資を受けるとき、将来の金利変動に備える手段として「金利スワップ」という仕組みが使われることがあります。金利スワップとは、固定金利と変動金利を交換(スワップ)することで、金利変動のリスクを軽減する金融取引の一種です。取引自体は…
詳しくみる未払利息の仕訳とは?勘定科目や計上時期をわかりやすく解説
借入金や社債があると、月末や決算日までに発生している利息が、まだ支払われていないというケースがあります。このとき使われるのが「未払利息」という勘定科目です。実際にはまだ支払いをしていなくても、発生している利息は費用として計上し、同時に負債と…
詳しくみる消費税の中間納付とは?計算方法や仕訳の解説
消費税の中間納付とは、課税期間の途中で分割して税金を納める制度です。前年の納税額が48万円を超える企業や法人が対象で、期限までに中間納付をしない場合は延滞税が生じます。 中間納付の回数や課税期間、納税額は前年の納税額に応じて決まるのが特徴で…
詳しくみる出金伝票とは?領収書なしでの経費処理の仕方や書き方・使い方を解説
出金伝票とは「出金」の名前のとおり、企業から現金が出ていく取引を記録するための書類です。経理作業の効率化につながったり、税務署から調査が入ったときの対応用に使えたりと、非常に役立ちます。 本記事では出金伝票の概要や記載事項、使い方、書き方な…
詳しくみるコピー代・印刷費の仕訳で使える勘定科目まとめ
コピー代や印刷費については、事務所のコピー機を使うケースもあれば、印刷会社にまとめて何万部も印刷を依頼するようなケースもあります。さまざまな使い方が考えられるコピー代や印刷費は、どの勘定科目を使って仕訳をするのが適しているのでしょうか。この…
詳しくみる