- 更新日 : 2025年2月19日
権利金とは?計算方法や仕訳方法、税務上の取り扱いをわかりやすく解説
新しい事務所や店舗などを賃貸借する場合に、敷金や保証金、さらには仲介手数料など、様々な支払い項目が発生します。その中でも特に経理として注意しておくべきなのは、権利金の処理方法ですね。
今回は、権利金とは何かという基本的な事から、権利金に関する仕訳などを具体的わかりやすく解説していきます。
権利金とは?
まずは、権利金とは何かという事について確認していきましょう。権利金とは、賃貸借契約を結ぶ際に、借地権の設定対価や地理的に有利な土地を賃貸できることに対する対価として支払われるものです。
権利金については、さまざまな性質があり、個々の物件に応じて意味合いが異なります。
しかし、重要なのは、礼金と同様に、基本的に返還されない項目であるということです。従って、最終的には費用として処理される性質があるということを押さえておきましょう。
権利金についての処理方法は?
では、実際に権利金が発生した場合の会計処理の方法を確認していきましょう。ここでは、賃借人側の処理とともに、賃貸人側の処理も見ていきます。
事例:賃借人A社と賃貸社不動産B社との間で、物件の賃貸借契約(3年)を締結した。契約時に下記の金額を現金で支払った。
(2)礼金 300,000円(将来返還されない)
(3)権利金 200,000円(将来返還されず、契約更新時に再び同額を支払う)
(4)家賃(1月分の前払) 150,000円
(5)仲介手数料 50,000円
合計:1,000,000円

まず、(1)敷金については、全額返還される契約ですので、敷金(差入保証金)として固定資産の部に計上します。
(2)礼金と(3)権利金は、ともに将来返還されないため、費用化する必要があります。ただし、契約時に全て費用化するのではなく、契約期間にわたって均等償却していきます。
そのため、契約時は長期前払費用として固定資産に計上しておき、決算時に当期分を支払手数料などの勘定科目を用いて費用化します。
(4)前払分の地代家賃については、短期前払費用として処理します。しかし、短期前払費用のうち、20万円未満の費用であるため、地代家賃として処理することも可能です。((2)礼金と(3)権利金についても20万円未満であるなら、費用として処理することも可能です。)
(5)仲介手数料は、支払時に支払手数料として処理することができます。

まず、(1)敷金は、賃貸人側が将来返還するものなので、長期預かり金として固定負債に計上します。
次に(2)礼金と(3)権利金ですが、ここで特に注意が必要です。賃借人側の処理では、契約期間にわたって費用化していきましたが、賃貸人側の処理では、将来返還を要しないことが確定している場合は契約時のタイミングで収益として計上します。
(4)前払い分の家賃については、前受収益として流動負債に計上します。(5)仲介手数料についても、契約日に収益として計上します。
また、収益の勘定科目については、賃貸人B社が不動産会社ということで、これらの収益が企業の本来の営業活動による収益であるため、売上として処理します。
その企業の経理処理の方法として、売上を賃貸収入や手数料収入などの勘定科目に分けて管理している場合は、その勘定科目を使用します。
権利金の税務的取扱いは?
それでは、最後に権利金についての税務的な取扱いについても確認しておきましょう。権利金は、税務的には「支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶもの」に該当しますので、繰延資産として処理されます。
そのため、権利金については償却期間にわたって均等償却ということになります。
問題になるのが償却期間ですが、その償却期間については下記のように決定します。
(1) 建物の新築に際して支払った権利金などで、その金額が建物の賃借部分の建設費の大部分に相当し、かつ、その建物が存続する間は賃借できる場合・・・その建物の耐用年数の10分の7に相当する年数
(2) 建物の賃借に際して支払った(1)以外の権利金などで、契約や慣習などによって、明渡しの時に借家権として転売できることになっている場合・・・その建物の賃借後の見積残存耐用年数の10分の7に相当する年数
(3) (1)及び(2)以外の権利金などの場合・・・5年
ただし、契約による賃借期間が5年未満の場合で、契約を更新するときには再び権利金などの支払をすることが明らかであるときは、その賃借期間となります。
先ほどの事例では、(3)に該当し、さらに契約期間が5年未満の3年であることから、償却期間は3年ということになります。
まとめ
最後に、今回のポイントをまとめておきます。
・権利金は、賃貸契約の際の支払時に長期前払費用として計上する(20万円未満の場合は、契約時に費用として処理しても良い。)
・権利金は、税務的には繰延資産に該当し、償却期間にわたって均等償却を行う。
今回見てきたように、権利金は、会計的にも税務的にも事業年度にまたがっての処理になりますので、契約時の処理については特に慎重に行ってください。
関連記事
・譲渡所得の改正の内容は?
・差入保証金の仕訳を理解しよう!具体例と考え方を解説
・不動産投資による節税のポイント
よくある質問
権利金とは?
賃貸借契約を結ぶ際に、借地権の設定対価や地理的に有利な土地を賃貸できることに対する対価として支払われるものです。詳しくはこちらをご覧ください。
前払分の地代家賃の処理方法は?
前払分の地代家賃については、短期前払費用として処理します。詳しくはこちらをご覧ください。
権利金の税務的取扱いは?
繰延資産として処理されます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
収入印紙を買ったときの勘定科目は何を使えばいい?
この記事では、収入印紙を買ったときの会計処理で、一般的にどの勘定科目を使えばよいかについてお伝えします。 収入印紙をすぐに文書に貼って使用するのか、しばらく手元においておくのか、それによって勘定科目は変わります。また、収入印紙を買った場所に…
詳しくみる未収金(未収入金)とは?仕訳・勘定科目や決算処理、相殺の方法などを解説
未収金(未収入金)とは、商品やサービスの提供は完了しているものの、代金の支払いを受けていない債権のことです。 企業の経理担当者にとって、未収金の適切な管理は重要な業務です。本記事では、未収金の定義や仕訳・勘定科目、決算処理のポイント、買掛金…
詳しくみるトイレットペーパーの仕訳に使える勘定科目まとめ
トイレットペーパーの購入費用は、消耗品費か福利厚生費の勘定科目で仕訳ができます。どちらの勘定科目を選んでも問題はありませんが、一度選択した勘定科目は使い続けることが大切です。実際の仕訳例も紹介するのでぜひ参考にしてください。 トイレットペー…
詳しくみる商品廃棄損やロスの仕訳は必要?計上の仕方や勘定科目を具体例つきで解説
売れ残ってしまった商品をどう扱うかは、多くの会社にとって悩ましい問題です。商品をずっと保管していても、その分のコストがかかり続けますし、時間がたてば価値も下がってしまいます。やむを得ず商品を廃棄する場合には、きちんとした会計処理が必要です。…
詳しくみるファクタリングとは?仕組みや仕訳・勘定科目の解説
ファクタリングとは売掛債権を売却し、手数料を差し引いた代金を受け取ることです。入金のサイクルを短縮し、資金繰りを改善できます。ファクタリングには債権を売却するだけの「買取型」のほか、倒産等のリスクに備える「保証型」もあるのが特徴です。また、…
詳しくみるオンラインサロンにかかる費用の勘定科目は?仕訳例を解説
オンラインサロンは、インターネット上で会員のみが参加できるコミュニティです。事業のためにオンラインサロンに参加する場合などは、一部費用について経費に計上できます。たとえば、会費やセミナー費用、テキスト代やインターネット接続費などは、適切な方…
詳しくみる