- 更新日 : 2025年2月19日
原材料に関する意外と知らない簿記のルール3選
原材料は仕入れて加工し、製品となったものを販売することによって初めて利益を上げることができます。
そのため原材料を仕入れただけでは利益を上げることができず、原材料ならではの簿記のルールに従って資産計上していくことになります。
ここでは原材料に関する簿記のルールを3つ紹介したいと思います。
原材料は2種類に分ける
原材料そのものは、
・原料は素材の原形をとどめていないもの
・材料は素材の原形をとどめているもの
という内容で原料と材料に分けることができます。
これらを総括したものが原材料となりますが、原材料を簿記で取り扱う場合は以下の基準に従って「直接材料費」と「間接材料費」に分ける必要があります。
・間接材料費:補助材料費であり、どの製品に使用するのか明確に区別することができない
たとえば、自動車を製造する上で仕入れた鋼板は、自動車を製造するための主要原材料となるため直接材料費となります。
また自動車の製造するために必要なドライバーやペンチといった消耗工具機具備品は、どの製品に使用するのか明確に区別することができないため間接材料費となります。
原材料は直接材料費と間接材料費の2種類に分けることによって、製品原価を正しく計算することができます。
製造途中の原材料は「仕掛品」勘定を使用する
原材料はさまざまな製造工程を経て製品となりますが、製造過程にある原材料は原材料や製品と明確に区別するために「仕掛品」勘定を使用します。
原材料は加工状態によって、以下の表のように使用する勘定科目が変化します。
勘定科目 | 加工状態 | 販売可能可否 |
---|---|---|
原材料 | 製造前である | 販売不可 |
仕掛品 | 製造途中である | 販売不可 |
製品 | 製造が完了している | 販売可能 |
それではそれぞれの勘定科目を使用して、実際に仕訳を起こしてみましょう。
原材料10kgを現金10万円で購入した場合の仕訳は、
原材料 | 100,000円 | 現金 | 100,000円 |
となります。
仕入れた原材料のうち5kgを投入し製造過程に入った場合の仕訳は、以下の通りです。
仕掛品 | 50,000円 | 原材料 | 50,000円 |
仕掛品が製品として完成した場合の仕訳は、以下の通りです。
製品 | 50,000円 | 仕掛品 | 50,000円 |
次の製造を行なうために原材料10kgを現金7万円で購入した場合の仕訳は、以下の通りです。
原材料 | 70,000円 | 現金 | 70,000円 |
原材料は常に同じ価格で購入できるとは限らず、仕入先や社会情勢によって変動します。そのため在庫として残っている原材料の単価は、先入先出法や総平均法といった計算方法によって異なります。
現在は先に購入した5万円(=10,000円/kg×5kg)と、後に購入した7万円(=7,000円/kg×10kg)の、合わせて12万円が残っています。
先入先出法によって原材料10kgを製造過程に入れた場合は、在庫として残っている5kg分の5万円と、後から仕入れた3万5千円(=7,000円/kg×5kg)を合わせて8万5千円となります。
総平均法によって原材料10kgを製造過程に入れた場合は、在庫として残っている5万円と仕入れた7万円を合わせた12万円を、在庫として残っている5kgと仕入れた10kgの合計15kgで割ることによって平均単価を算出します。
これまでに仕入れた原材料の平均単価は1kgあたり8千円(=12万円÷15kg)となるため、10kg分の8万円が仕掛品となります。
法人税の計算上、原材料の単価計算に「最終仕入原価法」以外の計算方法を適用させる場合には「棚卸資産の評価方法の届出書」を所轄の税務署長へ提出します。
一度決定した評価方法を継続することが原則となりますが、変更する場合には「変更承認申請書」を事業年度開始日前日までに所轄の税務署へ提出する必要があります。

(出典:棚卸資産の評価方法の届出書|国税庁HP)

(出典:所得税の棚卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の変更承認申請書|国税庁HP)
仕掛品勘定を使用する原材料は、主要材料となる「直接材料費」のみです。
「間接材料費」は仕掛品とはならずに「製造間接費」となり、一定基準に従って各製品へ配賦されることになります。
製造間接費を製品に配賦する基準として、
・各製品の生産量
・作業に要した時間
・機械を稼働した時間
などがあります。
原材料は販売しないと売上原価(費用)にならない
原材料は製造工程を経て製品としたものを販売しない限り、売上原価(費用)として計上することができません。
原材料や仕掛品、販売前の製品は、貸借対照表の流動資産に「棚卸資産」として計上されます。

また販売した製品は、損益計算書の売上原価(費用)として計上されます。

従って原材料を購入し仕入れただけでは費用として計上することはできず、仕掛品や販売前の製品を売上原価に計上すると、費用が多く見積もられることになってしまいます。
まとめ
原材料に関する簿記のルールの代表的なものを3つ紹介しました。
原材料は加工工程を経ることによって製品として出荷販売することが可能となるため、特殊な簿記のルールの適用が必要不可欠となります。特に「仕掛品」という製造過程の勘定科目は、原材料と切っても切れない関係にあります。
また原材料は仕入れただけでは費用として計上することはできず、棚卸資産となる点で注意が必要です。
関連記事
・研究開発費にはどんな費用が含まれる?定義と会計上の処理を解説
・原価を下げるしかないの?限界利益を理解して効果的にコストカットしよう!
・「負ののれん」はどう仕訳する?定義と会計処理の方法を解説
よくある質問
原材料を簿記でどのように分けられますか?
基準に従って「直接材料費」と「間接材料費」に分ける必要があります。詳しくはこちらをご覧ください。
製造途中の原材料はどのように処理しますか?
製造過程にある原材料は原材料や製品と明確に区別するために「仕掛品」勘定を使用して、処理を行います。詳しくはこちらをご覧ください。
製造工程中の製品はどのように処理しますか?
貸借対照表の流動資産に「棚卸資産」として計上されます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
会議費とは?接待交際費との違いは?損金算入の特例や上限、仕訳方法も紹介
法人の経費の中には、勘定科目の取り扱いを間違えると、法人税に大きな影響を与えかねないものがいくつかあります。そのひとつが「会議費」です。会議費は、接待交際費などのほかの経費と性格が似ている部分も多く、会計処理をする際、その支払いが会議費に該…
詳しくみる見舞金の勘定科目は?従業員、法人に支払う場合の仕訳や経費にできるか解説
従業員や取引先への慶弔見舞金、災害見舞金は経費計上ができます。基本的に従業員への見舞金は福利厚生費、取引先への見舞金に使う勘定科目は接待交際費です。第三者に損害を与えた際の見舞金は、雑損失の勘定科目を使います。 本記事では見舞金の勘定科目に…
詳しくみる宅配便の勘定科目と仕訳方法とは?経費処理について解説
事業を営む上で、ゆうパックやレターパック、ヤマト運輸などの宅配便を利用するケースは少なくありません。しかし、宅配便を利用した場合の送料について、「荷造運賃」と「通信費」のどちらの勘定科目で計上すべきか悩んでしまう人も多いのではないでしょうか…
詳しくみる建設仮勘定とは?減価償却や消費税の処理方法、仕訳について解説
建設仮勘定とは、企業が固定資産を新規に建設中または製作中の段階において、その取得原価を一時的に計上するために用いられる勘定科目です。完成した段階で建物や構築物、機械装置などの有形固定資産として振り替えられ、減価償却が開始される仕組みになって…
詳しくみる過払い金が返金された時の勘定科目は?仕訳方法も解説
過払いが発生して返金された場合、事例ごとに返金処理が必要です。その際使用する勘定科目は、過払いの内容により異なります。過払いが発生する原因は仕入代金を多く払いすぎた場合をはじめ、家賃や社会保険料の支払い、借入金の利息などです。 本記事では過…
詳しくみる会社経費を個人のクレジットカードで立替えた場合の仕訳・勘定科目は?
法人の場合、クレジットカードでの支払には、通常その法人名義のカードを利用します。しかし、急な支払いなどで担当者が個人名義のクレジットカードで会社の費用を立て替えることがあります。これはあくまで「立て替え」であるため、会計上の問題はありません…
詳しくみる