- 更新日 : 2024年8月8日
簡易課税の計算方法には基本と特例がある!
消費税の納税額は、簡易課税という方式と原則課税という方式のいずれかの方法で計算します。その1つである簡易課税方式は、仕入れや設備投資、経費など仕入れの際に支払った消費税の金額を計算する必要はありません。
売上時にもらった消費税に対して、みなし仕入れ率と呼ばれる一定の割合を掛けることで計算した金額を、仕入れの商品を購入するときなどに支払った消費税と考え、納税するべき消費税の金額を計算する方法となっています。
簡易課税制度を受けるには、下の条件にあてはまらなくてはいけません。
・基準となる一定期間における課税される対象の売上金額が5,000万円以下であること
・「消費税簡易課税制度選択届出書」を税務署へ届け出ていること
年間の売上に伴う消費税額と、課税分の仕入れに伴う消費税額の計算は煩雑です。経理処理上、大きな負担がかかることから、中小企業の事務負担を少なくするため、売上時に預かった消費税から納税の金額を計算しても良いという仕組みが取られています。
一年を通した売上高に対して、区分された事業の種類ごとに定められたみなし仕入れ率を掛けて消費税の金額を計算しますので、課税の対象となる仕入れ額を考慮することなく、課税される対象となっている売り上げの額が把握できていれば納税の金額を計算することが可能です。
目次
簡易課税方式による計算方法について
簡易課税という方式での仕入れ計算方法は下の通りとなっています。
納める消費税の金額=課税される対象の売上に対する消費税の額-(課税される対象の売上に対する消費税の金額×みなし仕入れ率)
みなし仕入れ率は、事業の形態ごとに、第一種から第六種までの事業区分がなされていて、消費税の取り扱い上、控除の割合がそれぞれに定まっています。各事業の課税される対象となる売り上げの金額に対して、第一種事業は90%、第二種事業は80%、第三種事業は70%、第四種事業は60%、第五種事業については50%、、第六種事業は40%と定まっています。
特例の計算方法とは?
前述の計算方法は、1つの種類だけの事業を行っている企業にのみ当てはまります。ただし実際には、複数の事業を行っている企業もたくさんあります。
仮にサービス業の会社が社用車を売却する場合、サービス業は第五種に該当し、資産の売却は第四種に該当するため、事業の区分が複数にわたります。また、不動産業の場合でも、事業内容によっては区分が変わるなど、注意する必要があります。
こういったケースでは、それぞれの事業の区分に当たるみなし仕入れ率を掛けた金額が仕入れに対しての税額控除の額になります。
具体的な計算方法は下記の通りです。
仕入れの税額控除の額=第一種事業の消費税の額×90%+第二種事業の消費税の額×80%+第三種事業の消費税の額×70%+第四種事業の消費税の額×60%+第五種事業の消費税の額×50%+第六種事業の消費税の額×40%
また、事業区分が複数にわたる場合、そのうち1つの事業区分、または2つの事業区分(3つ以上の事業がある場合)で、売上高が全体のうちで75%を超える場合は、以下のような特例による計算が可能です。
よって、納税額が少なくなる計算方法を選択することができます。
2つ以上の事業を行っており、そのうち1つの事業区分の課税される対象となる売上高が75%以上の場合の計算方法
簡易課税による方式を選択し、2つ以上の事業を経営している場合、そのうち1つの事業での課税される対象となる売上高が、売り上げ全体のうちで75%以上を占めるケースでは、課税される売り上げの金額全体に対して、その1つの事業のみなし仕入れ率を掛けることで、仕入れの税額控除の金額を計算します。
3種類以上の事業を行っており、そのうち2種類の事業区分の課税される対象となる売上高が75%以上の場合の計算方法
簡易課税方式を選択し、3つ以上の事業を経営している場合、そのうち2つの事業での課税される対象となる売上高の合計金額が、売り上げ全体のうちで75%以上を占めるケースでは、その2つの事業のうちみなし仕入れ率が高い事業での売上高に関しては、もともとのみなし仕入れ率が用いられます。
それ以外の売上高には、その75%以上を占める2種類の事業のうち低いみなし仕入れ率を用い、仕入れの税額控除の金額を計算します。
事業ごとの売上高を区分していない場合の計算方法
簡易課税方式を選択して、2つ以上の事業を経営している場合で、課税される対象となる売上高を事業ごとに区分していないケースでは、その売上高の全体に対して、2つ以上の事業のみなし仕入れ率のなかで最も低いみなし仕入れ率を用い、仕入れの税額控除の金額を計算する計算方法を使用します。
まとめ
簡易課税の計算方法は事業の形態ごとに決まっていてシンプルな計算になりますが、複数の事業を経営し簡易課税の方式を採用している場合では、仕入れの税額控除の金額計算に際して、課税される対象となる売上高を各事業に区分することが計算方法の重要なポイントとなります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
簡易課税の関連記事
新着記事
小切手の銀行渡りとは?メリットや手続き、必要書類、廃止の方針などをわかりやすく解説
「銀行渡り」という言葉を聞いたことはあっても、その仕組みや使い方について詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。銀行渡りとは、小切手をより安全に利用するための仕組みで、企業間の取引や高額な決済などで広く使われています。本記事では、銀行渡…
詳しくみる小切手は2026年度末までに廃止予定!理由や電子記録債権(でんさい)などの代替手段を解説
2026年度末(2027年3月末)に、紙の小切手が完全に廃止されます。小切手は日本企業の取引で長年使われてきましたが、効率性の問題や不渡り・紛失などのリスクから電子決済への移行が求められています。この変化は、企業だけでなく、小切手を使ってい…
詳しくみる小切手とは?仕組みや種類、メリット、換金方法、廃止の方針などをわかりやすく解説
小切手は、主に企業間取引で利用される、現金に代わる便利な決済手段です。しかし、普段の生活では使う機会が少ないため、詳しい仕組みや使い方がよくわからないという人も多いかもしれません。本記事では、小切手の基本的な仕組みや手形との違いをはじめ、小…
詳しくみる約束手形の支払期日は60日に短縮!当日持ち込みの方法や3営業日を過ぎた場合の対応も解説
約束手形は日本の企業間取引で広く使われていますが、その取り扱いを誤ると資金繰りや信用に大きな問題が生じます。特に、支払期日のルールや銀行への持ち込み手続きを正確に理解しておかないと、思わぬトラブルに発展することがあります。この記事では、約束…
詳しくみる約束手形の銀行持ち込みはいつまで?期限を過ぎた場合の対応や廃止に向けた方針も解説
約束手形は、企業間取引における信用決済の手段として長年利用されてきた有価証券です。買掛金の支払いを一定期間先に延ばすことができるため、資金繰りの調整や信用取引の証として機能してきました。一方で、手形の管理や取り扱いには専門的な知識が必要であ…
詳しくみる約束手形の裏書とは?書き方や譲渡するメリット・デメリット、仕訳などをわかりやすく解説
約束手形は商取引で多く利用される信用取引の代表的な手段です。その中でも「裏書」は、手形を他者に譲渡するための重要な手続きであり、資金流動性や企業間信用の強化に大きく関わります。 この記事では、約束手形の裏書の基本的な内容から、メリット・デメ…
詳しくみる