
営業活動において、備品の購入時や飲食の会計時に、領収書の発行を依頼するケースは頻繁にあります。
経費計上するために、支払い金額が記載された領収書を受け取ることになりますが、多くの場合、領収書発行時に、「領収書の宛名はどうなさいますか?」と尋ねられます。
会社名を口頭で告げたり、名刺を手渡した上で社名を記載してもらったり、「上様」と記入してもらったりと、税法上、領収書の宛名がどのような意味を持つのかを知らずに、ビジネス上の慣習として、宛名の記載を依頼している人も少なくないはずです。
ここでは、宛名の有無が経費計上の際にどのように影響してくるのかという解説や、領収書を発行する側のマナーについてもご説明します。
領収書には支払った金額はもちろんのこと、支払った側の宛名を書くのが一般的です。領収書を依頼する側も、発行する側も、記載する宛名をしっかりと確認することが必要です。
きちんと社名を伝えられる場合もありますが、時間がなく「上様」とだけ記載してもらうよう依頼することや、うっかり宛名の記載がない状態で領収書を受け取ってしまう場合もあります。
経費計上の際には領収書の宛名が気になるところです。しかし、実際には、税法上大きな問題はありません。つまり、「上様」であろうと、うっかり宛名が抜けていようと、構わないということです。
税法上において、経費として判定する場合に重要とされるのは、領収書の宛名ではなく事業との関連性です。
仮に宛名のない領収書の場合でも、経費計上に伴う詳細を確認できれば、万が一、問題があると判断された場合でも、その後に調査をすれば済みます。つまり、宛名よりも、何のために使われた費用なのかが明確であることの方が意味をなすというわけです。
経費計上が可能かどうかを判断する3つの基準
宛名がそれほど重要視されず、事業との関連性が重要とされる領収書について、具体的には、経費計上が可能かどうかの判断基準はどのようなものになっているのでしょうか?
経費にできるかどうかの判断基準は以下の3つとされています。
支出を証明できる証拠がある
常識や良識の範囲内である
特に1つ目の「事業に関する支出」というところがポイントとなってきますので、宛名の有無によって経費計上の可否を気にするのではなく、その支出が事業に関係ある支出かどうかといった点を意識する必要があります。ある会社では経費計上できる内容であっても、別の会社では経費として認められないということが十分にあり得ますので、注意が必要です。
領収書を発行する側のマナーとは?
領収書の宛名が、経費計上に影響がない場合が多いとされてはいるものの、領収書の発行側としては、あいまいな内容で発行しても良いということではありません。
領収書に宛名の記載がなかったり、購入明細が記載されていなかったりすると、支払い者側は取引の記帳時に経費として計上すべき支出かどうかの判断に困ったり、取引科目の判断ができなかったりするなど、事務処理において、余計な負荷を生むことになります。
また、あまりにも多額の領収書や事業と関係のなさそうな店名、会社の規模に対して多過ぎる枚数といった場合には、税務調査で「個人の買い物を経費にしていないか?」「資産として計上すべきものを分割して経費計上しているのではないか?」といった脱税行為の疑いをチェックされる可能性があります。
宛名が「上様」と記載されていたり、購入明細が「品代」となっている場合、チェック対象となるかもしれません。
さらに、領収書には「確かに支払いを受けました」という根本的な意味合いがあり、その結果、二重請求するといった間違いを予防することができます。ですから、領収書を発行する側のマナーとしては、宛名を会社の名前で記載することはもちろんのこと、但し書きについても、きちんと記載するように心がけましょう。
まとめ
会計時の比較的時間がないなかでやり取りが行われる領収書の発行と受け取りですが、経費計上や税務調査の際に、重要となる書類ですので、受け取る側も発行する側も、宛名や但し書きの記載については、しっかりと確認してやり取りを行うようにしましょう。
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