- 更新日 : 2026年2月5日
圧縮記帳を積立金方式にした際の税効果会計とは?仕訳方法を解説
「圧縮記帳」は、資金繰り改善のため、税負担額を繰り延べる制度です。国や地方公共団体から交付される補助金や保険金は、設備投資や資産の再取得に役立つでしょう。
しかし、補助金・助成金による収益は課税対象です。税負担増加による資金繰りの圧迫を防ぐため、圧縮記帳を活用できます。
圧縮記帳の計上方式は直接減額方式と積立金方式があります。そのうち、積立金方式は資産の取得価額を減額しない方法です。圧縮積立金を、別勘定で計上し、毎期取崩す点が特徴になります。本記事では、積立金方式と税効果会計について、仕訳や具体例を交えながら解説します。
目次
圧縮記帳の積立金方式と税効果会計について
圧縮記帳は、補助金や保険金で取得した資産の価額を減額し、税負担を繰り延べる制度です。計上時は「直接減額方式」と「積立金方式」のいずれかを選ぶ必要があります。本記事では、積立金方式を使う場合の計上方法や、税効果会計の適用理由について見ていきましょう。
圧縮記帳とは
圧縮記帳とは、固定資産を取得しに要した補助金収入がある場合に、課税所得を繰り延べる制度です。国や地方公共団体から、補助金や保険金を受け取ると、収益として計上されます。これらは課税対象になるため、当期の税負担が増えるでしょう。
税負担増加による資金繰りの悪化を防ぐ上で、圧縮記帳は有効な制度です。資産取得に充てた部分に限り、取得価額から控除、または圧縮積立金として計上することで、当期の課税所得を抑えられます。
一方、圧縮記帳は「節税」ではなく、「課税の繰り延べ」にすぎません。課税を繰り延べることで、納税の時期が後ろ倒しになるだけです。
圧縮記帳については、別記事でも詳しく解説しています。
積立金方式の概要と直接減額方式との違い
圧縮記帳の計上を行う際は、「積立金方式」「直接減額方式」から、いずれかの方式を選ぶことになります。
積立金方式は、補助金や保険金による圧縮額を、「圧縮積立金」として純資産に計上する方法です。固定資産の帳簿価額を圧縮しないため、会計上の減価償却は圧縮前の金額を基に行われます。
一方、直接減額方式は、補助金額を資産の取得価額から差し引き、帳簿上の金額を減額する方法です。簿価を直接減らすため、簿価を基に計算する減価償却費も減少します。圧縮前と比較して、利益が大きく計上される結果になるでしょう。
税効果会計とは
税効果会計とは、会計上の利益と税務上の課税所得のズレを調整し、適切な期間損益計算を実現する仕組みです。収益や費用、益金と損金の計上タイミングが異なると、会計・税務間で「一時差異」が発生します。一時差異によるズレを是正し、期間損益計算を適切に管理する手法が、税効果会計です。
圧縮記帳で積立金方式を適用した場合、「圧縮積立金」は純資産に計上されるため、帳簿価額は減額されません。しかし、税務上で調整を行うため、課税所得は直接減額方式と同等になります。
上記の事象により、会計と税務のズレが生じるでしょう。税効果会計で繰延税金負債を計上することで、会計と税務の調整が可能です。
税効果会計については、関連記事でも詳しく解説しています。
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積立金方式を選択する場合の適用対象と適用条件
積立金方式の圧縮記帳の適用対象は、国庫補助金や地方公共団体の補助金、災害保険金による資産取得などです。また、交付目的を満たさない用途に使うと、圧縮記帳の対象になりません。適用対象となる資産・補助金や、適用外となるケースを、次から紹介します。
適用対象となる資産・補助金の具体例
圧縮記帳の積立金方式は、補助金や保険金を元手に資産を取得する場合に適用できます。主な対象を、下にまとめました。
| 区分 | 具体例 | 適用理由 |
|---|---|---|
| 国庫補助金 | 設備投資補助金、 環境対応設備導入補助金 | 固定資産の取得・改良を目的として交付されるため |
| 地方公共団体の補助金 | 中小企業設備導入助成金、 防災関連設備導入補助 | 地域経済振興や防災を目的に資産取得が条件となるため |
| 保険金 | 災害損害保険金による 資産再取得費用 | 災害で滅失した資産を再取得する目的の資金として交付されるため |
資産取得以外の人件費や広告宣伝費のような、経費計上されるものには適用できません。
適用が認められないケースとその理由
圧縮記帳の積立金方式には、以下のように適用できないケースも存在します。
| 区分 | 具体例 | 否認理由 |
|---|---|---|
| 交換による資産取得 | 土地や固定資産の交換で発生した差益を資産取得に充当 | 法人税法上で「積立金方式の適用不可」と明記されているため |
| 目的が特定されない交付金 | 一般的な補助金、交付先の裁量で使途が自由なもの | 固定資産の取得との関連性が確認できず、圧縮記帳の趣旨に反するため |
| 運転資金としての補助金 | 人件費、家賃、光熱費などの経費に充当する補助金 | 資産計上できないため |
| 補助金の交付条件や用途違反 | 設備投資に使うべき補助金を他の用途に流用した場合 | 交付要領・契約条件に違反するため |
上記の場合に積立金方式を適用すると、誤りと認識されます。税務調査で否認されるリスクや、追徴課税・加算税のリスクもあるため、処理は適切に行いましょう。
積立金方式による圧縮記帳の仕訳処理
積立金方式による圧縮記帳の仕訳処理は、圧縮積立金計上、減価償却費の処理、積立金取崩しの3段階に分けられます。すべて行うことで、課税の繰り延べと、将来年度の適切な税負担配分が可能です。
圧縮積立金の仕訳
圧縮積立金は、補助金を受け取った時点では、「国庫補助金等受贈益」として収益認識します。最初の段階では、損益計算書に収益が計上され、課税所得も増加する扱いです。圧縮記帳の積立金方式を適用する場合は、収益を「圧縮積立金」へ振り替える処理が欠かせません。
帳簿の減額を行わないので、資産は圧縮前の取得価額で固定資産台帳に計上されます。減価償却費も圧縮前の金額を基準に計算するため、会計上の資産価値や、償却費の水準は変わりません。
会計処理
例として、次の条件で補助金を受け取ったと仮定しましょう。
- 補助金額:400万円
- 取得資産:1,000万円
- 耐用年数:5年
- 法定実効税率:30%
上記の場合、仕訳方法は下記の通りです。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現預金 | 4,000,000円 | 国庫補助金等受贈益 | 4,000,000円 |
| 繰越利益剰余金 | 2,800,000円 | 圧縮積立金 | 2,800,000円 |
受け取った補助金は「受贈益」として計上します。決算期末を迎えたら「繰越利益剰余金」を「圧縮積立金」に振り替えましょう。
税効果会計の適用
積立金方式を採用した場合は、上場企業等は、税効果会計の適用が必須です。以下の仕訳により、会計と税務の一時差異を解消する必要があります。
| 内容 | 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|---|
| 圧縮積立金 計上時 | 法人税等調整額 | 1,200,000円 | 繰延税金負債 | 1,200,000円 |
圧縮積立金の計上額に法定実効税率(今回は30%)を乗じて、繰延税金負債を測定します。将来発生する税金額を見越して、費用を配分する仕組みです。
減価償却時の仕訳
積立金方式を適用した場合、減価償却は圧縮前の取得原価を基に計算します。たとえば、1,000万円の機械を耐用年数5年で取得した場合、定額法であれば、毎期の減価償却費は1,000万円 ÷ 5 = 200万円です。
圧縮積立金は純資産として計上するため、償却時点では直接増減しません。「圧縮積立金」と「減価償却費」は同時に増減しないため、一時差異が発生します。差異を是正するには、税効果会計の適用が不可欠です。
会計処理
積立金方式では、直接減額方式のように、帳簿価額を減額する処理は行いません。減価償却費の仕訳は通常の固定資産と変わらず、下記のように記録します。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 減価償却費 | 2,000,000円 | 減価償却累計額 | 2,000,000円 |
取得価額1,000万円の資産を耐用年数5年で償却する場合、毎期の費用化は200万円です。損益計算書には通常通りの減価償却費が表示され、圧縮積立金の金額には変動がありません。
税効果会計の適用
積立金方式の償却計上時点では、圧縮積立金や繰延税金負債の残高に直接的な変動はありません。償却期間中に一時差異が解消されず、取崩し時にまとめて益金算入される仕組みであるためです。
したがって、会計上は減価償却費を、通常通り計上する形になります。注記では、主要な一時差異として「圧縮積立金残高」を開示しましょう。
また、税率改定があった場合は、その時点で繰延税金負債の残高を再測定し、差額を法人税等調整額に反映させる必要があります。下に、改定時の仕訳例を記載しました。
| 内容 | 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|---|
| 税率改定時(例:30%→28%) | 繰延税金負債 | 80,000円 | 法人税等調整額 | 80,000円 |
積立金取崩し時の仕訳
圧縮積立金は、資産の耐用年数に応じて取り崩されます。取崩しの際は、貸借対照表の純資産内で、振替を行いましょう。圧縮積立金は純資産として計上されているため、損益計算書には影響を与えません。
取崩しによって、圧縮記帳の効果で繰り延べられていた税負担が実現します。同時に、税効果会計上の繰延税金負債を解消する仕訳が必要です。
会計処理
圧縮積立金の取崩しは、資産の耐用年数に応じて、税効果会計とともに行われます。
| 内容 | 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|---|
| 圧縮積立金の取崩し | 圧縮積立金 | 560,000円 | 繰越利益剰余金 | 560,000円 |
| 税効果会計 | 繰延税金負債 | 240,000円 | 法人税等調整額 | 240,000円 |
取崩しのタイミングを誤ると、課税所得との対応関係が崩れるでしょう。加えて、税務調査で否認されるリスクもあります。資金繰りや利益配分計画とあわせて、取崩処理を行いましょう。
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