- 更新日 : 2025年2月19日
後入先出法とは?廃止理由やメリット、計算例などわかりやすく解説!
後入先出法とは在庫金額の計算方法の一つで、「新しく仕入れた商品から出庫して売れたことにし、古く仕入れた商品は在庫として残る」という考え方に基づいて在庫を計上する方法のことです。
後入先出法は平成22年4月1日以降開始する事業年度から廃止されていますが、適用することのメリットや具体的な計算方法、廃止された理由などを具体例を挙げてわかりやすく解説します。
目次
後入先出法とは?
「後入先出法(LIFO、Last In First Out)」は、棚卸資産を評価する方法の一つであり、「後から仕入れたものを先に出庫する」という考え方がベースとなります。
つまり後から仕入れた商品が優先的に出庫され、先に仕入れた商品は在庫として残るということです。
製造業でいえば、先に仕入れた原材料で製品を製造し、後から仕入れた原材料は在庫として残るという認識になります。
先入先出法との違いは?
同じく棚卸資産の評価方法の1つに「先入先出法(FIFO、First In First Out)」というのがありますが、両者は全く正反対の捉え方をします。
「後入先出法」が「後から仕入れたものから先に出庫する」のに対し、「先入先出法」はその名の通り「先に仕入れたものから先に出庫する」と考えるのです。
評価方法にはそれぞれメリット・デメリットがあります。また、業種によって適した評価方法がありますので、どれが正しいとは一概には言えません。
例えば、生鮮食料を扱うコンビニやスーパーなどの実際の商品の流れからいえば、「後入先出法」より「先入先出法」の方が実態に即した評価方法であるといえます。
「先入先出法」についての詳細は以下のリンクを参照してください。
後入先出法は廃止された?その理由は?
「棚卸資産の評価に関する会計基準」の改正により、「後入先出法」は平成22年4月1日以降開始する事業年度から廃止となっています。
詳しくは後述しますが、「後入先出法」を採用する最大のメリットとして「利益が商品の市場価格に左右されにくい」という点が挙げられます。
このメリットを生かして石油業や繊維業など、ごく一部の企業で「後入先出法」が採用されていました。
しかし、商品の市場価格が在庫に反映されにくいので、棚卸資産が持つ「含み益」を財務諸表に正しく表記することができません。
「市場価格に左右されない」という損益面でのメリットが、「市場価格を反映していない」という資産面でのデメリットと認識されるようになったわけです。
また、実務においては「後から仕入れたものを先に出庫する」というのは一般的ではありません。
このような流れから「後入先出法」は廃止されることとなりました。
後入先出法のメリット・デメリット
以上のことをふまえた上で後入先出法のメリット・デメリットについて説明します。
後入先出法のメリット
棚卸資産の増減は、損益計算に直結しています。
後入先出法を採用するメリットとして、物価が激しく上昇している時に、会社の財政状態、特に損益計算を適切に保つことができます。
例えば、A商品の仕入価格が@500から@2,000に上昇したとしましょう。

「後入先出法」を採用した場合、出庫されるのは3月→2月→1月の順番です。
仮に20個出庫したとすれば、3月末の在庫金額は5,000円ですが、1月の在庫金額@500×10個=5,000円と同額になり、商品の価格変動に影響されていないことがわかります。
同様のケースで「先入先出法」を採用してみましょう。

「先入先出法」を採用した場合、出庫されるのは1月→2月→3月の順番です。
仮に20個出庫したとすれば、3月末の在庫金額は20,000円となり、1月の在庫金額@500×10個=5,000円より増加しています。
商品の価格変動に影響されていることを示しています。
「先入先出法」についての詳細は以下のリンクを参照してください。
このように、損益計算を安定させることができるのが「後入先出法」の最大のメリットであるといえます。
後入先出法のデメリット
このように損益計算においてはメリットのある「後入先出法」ですが、棚卸商品を資産として見た場合には、市場価格に左右されない点が逆にデメリットとなります。
上記の例で「後入先出法」と「先入先出法」の棚卸金額を比較して考えてみましょう。

同じA商品でも15,000円の差が出てきます。
市場価格の変動を反映している「先入先出法」に対して、市場価格の変動が反映されにくい「後入先出法」では実際より低い評価額で資産計上されることになります。
棚卸の評価額が実際の市場価格とかけ離れてしまうわけです。
結果として株主や投資家、金融機関等の利害関係者が正しい判断をする際の弊害になりかねません。
このような資産価値の乖離が「後入先出法」廃止の1つの要因となっています。
後入先出法の計算例
では「後入先出法」の具体的な計算方法を詳しく解説していきます。
「後入先出法」を採用してA商品の商品有高帳を記帳してみます。

この例でポイントとなるのが「6月4日の売上」にかかる棚卸残高の計算です。
先にも述べたとおり後入先出法は「後から仕入れたものを先に出庫する」ことになります。
出庫する順番は「6月2日の仕入のうち10個」が先になりますので、棚卸残高として残るのは「6月2日に仕入れた20個のうち残り10個」と「6月1日に仕入れた10個」です。
6月2日仕入分 10個 × @110 = 1,100円
6月1日仕入分 10個 × @100 = 1,000円
したがって棚卸残高は「1,100円+1,000円=2,100円」となります。
後入先出法について理解できましたか?
通常の商取引では「古いものから先に出す」というのが一般的です。数ある棚卸資産の評価方法のなかでも「後入先出法」はかなり特殊な評価方法であるといえます。
まずは「後から入れたものを先に出す」という基本的な考え方からしっかりと理解し、商品有高帳を使って正しい評価計算を行うようにしましょう。
よくある質問
「後入先出法」とは?
棚卸資産の評価方法の1つで「後から仕入れた商品を先に出庫する」という考え方に基づいて在庫計算をします。 詳しくはこちらをご覧ください。
「後入先出法」のメリットは?
棚卸資産の評価額が仕入商品の市場価格に影響されにくいため、安定した損益計算をすることができます。詳しくはこちらをご覧ください。
「後入先出法」のデメリットは?
棚卸資産の評価額が市場価格より低く(あるいは高く)評価されてしまうので、市場価格とかけ離れた金額となるリスクがあります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
当座資産の解説と当座比率の求め方や流動資産との違い
当座資産とは、会社の貸借対照表から「当座比率」を算出する際に必要です。当座比率を求めることで、企業の短期債務の支払能力を示す指標にすることができます。つまり、企業の安全性分析のために利用できる指標となりえるのです。 そんな重要度の高い当座資…
詳しくみる貸倒金とは?仕訳例をわかりやすく解説
貸倒金とは、取引先から売掛金や貸付金、未収入金などの回収ができなくなった場合の損失を計上する勘定科目です。貸倒引当金とは異なり、損失が確定した場合に計上します。 債務者が支払い免除になって債権が消滅した場合のほか、全額回収が不能と見込まれる…
詳しくみる仕入帳の書き方は?作成義務の有無や記入例を解説
仕入帳とは、仕入によって発生するお金の流れを記載する書類です。仕入先や単価、数量など、仕入にかかわる情報はすべて記載します。仕入帳があることでお金の流れを時系列に把握しやすくなりますが、作成義務はありません。本記事では、仕入帳の書き方や保存…
詳しくみるクラウドファンディングの仕訳とは?タイプ別の消費税の扱いや会計処理を解説
新しい資金調達の方法として注目を集めているクラウドファンディングは、個人や企業がアイデアやプロジェクトを実現するために、多くの人から資金を集める仕組みです。資金を受け取った際の会計処理や仕訳(しわけ)は、どのようにすればよいのでしょうか。こ…
詳しくみる地代家賃とは?消費税法上の取り扱い・仕訳や計算方法も解説
地代家賃はその名のとおり「地代」「家賃」を管理するための勘定科目ですが、一見すると地代家賃に分類できそうでも、実は地代家賃ではないというケースもあります。 ここではそのような間違いを起こさないために、地代家賃の定義や実務上の注意点、具体的な…
詳しくみる勘定科目内訳明細書とは?全16種の記載内容と直近の法改正について解説
企業は原則として、法人税申告書を決算日から2ヶ月以内に所轄の税務署に提出する必要があります。 法人税申告書にはさまざまな書類を添付する必要があり、その添付書類の一つに「勘定科目内訳明細書」と呼ばれる書類があります。 勘定科目内訳明細書の役割…
詳しくみる会計の注目テーマ
- 勘定科目 消耗品費
- 国際会計基準(IFRS)
- 会計帳簿
- キャッシュフロー計算書
- 予実管理
- 損益計算書
- 減価償却
- 総勘定元帳
- 資金繰り表
- 連結決算
- 支払調書
- 経理
- 会計ソフト
- 貸借対照表
- 外注費
- 法人の節税
- 手形
- 損金
- 決算書
- 勘定科目 福利厚生
- 法人税申告書
- 財務諸表
- 勘定科目 修繕費
- 一括償却資産
- 勘定科目 地代家賃
- 原価計算
- 税理士
- 簡易課税
- 税務調査
- 売掛金
- 電子帳簿保存法
- 勘定科目
- 勘定科目 固定資産
- 勘定科目 交際費
- 勘定科目 税務
- 勘定科目 流動資産
- 勘定科目 業種別
- 勘定科目 収益
- 勘定科目 車両費
- 簿記
- 勘定科目 水道光熱費
- 資産除去債務
- 圧縮記帳
- 利益
- 前受金
- 固定資産
- 勘定科目 営業外収益
- 月次決算
- 勘定科目 広告宣伝費
- 益金
- 資産
- 勘定科目 人件費
- 予算管理
- 小口現金
- 資金繰り
- 会計システム
- 決算
- 未払金
- 労働分配率
- 飲食店
- 売上台帳
- 勘定科目 前払い
- 収支報告書
- 勘定科目 荷造運賃
- 勘定科目 支払手数料
- 消費税
- 借地権
- 中小企業
- 勘定科目 被服費
- 仕訳
- 会計の基本
- 勘定科目 仕入れ
- 経費精算
- 交通費
- 勘定科目 旅費交通費
- 電子取引
- 勘定科目 通信費
- 法人税
- 請求管理
- 勘定科目 諸会費
- 入金
- 消込
- 債権管理
- スキャナ保存
- 電子記録債権
- 入出金管理
- 与信管理
- 請求代行
- 財務会計
- オペレーティングリース
- 新リース会計
- 購買申請
- ファクタリング
- 償却資産
- リース取引