- 作成日 : 2025年4月1日
小切手とは?仕組みや種類、メリット、換金方法、廃止の方針などをわかりやすく解説
小切手は、主に企業間取引で利用される、現金に代わる便利な決済手段です。しかし、普段の生活では使う機会が少ないため、詳しい仕組みや使い方がよくわからないという人も多いかもしれません。本記事では、小切手の基本的な仕組みや手形との違いをはじめ、小切手の種類や具体的な書き方、注意すべきポイントまで幅広く解説します。初めて小切手を扱う方や経理担当者の方が正しく安全に利用できるよう、必要な知識を丁寧にお伝えしていきます。
※政府は、2026年までの約束手形の利用廃止、小切手の全面的な電子化の方針を示しております。詳しくは以下の記事をご確認ください。
目次
小切手とは
小切手とは、一定の金額を現金の代わりに支払うために利用される有価証券の一種です。特に企業間の取引や高額の支払いにおいて広く使われており、大量の現金を持ち歩くリスクを減らせる便利な支払い手段として知られています。また、小切手は銀行が発行する専用の用紙を使い、必要事項を記入して取引相手に渡します。実際に現金をやり取りすることなく安全かつスムーズに支払いが行えるため、古くから多くの企業に支持されてきました。
小切手を利用するためには、銀行で当座預金口座を開設する必要があります。この口座にあらかじめ資金を預け入れ、小切手に記載した金額分の資金がある状態にしておく必要があります。小切手の受取人が銀行に持っていくと、小切手に書かれた金額を銀行が当座預金口座から引き落とし、その場で現金として支払う仕組みです。そのため、小切手の振出人は、常に口座の残高を管理し、小切手に記載した金額が不足しないよう注意を払う必要があります。
小切手の主な役割
小切手は主に企業間取引で利用されることが多く、個人間の取引ではあまり見られません。企業間の取引では金額が大きくなることが多いため、大量の現金を直接渡すのは防犯上のリスクが高く、小切手を利用することでそのリスクを避けることができます。また、小切手には現金と異なり、紛失や盗難に遭っても銀行に事故の届け出を出せば支払いを停止できるという安全面でのメリットもあります。
さらに、企業の経理業務においては、小切手を使うことで現金管理を簡略化できるという利便性もあります。銀行を介した記録が残るため、帳簿の管理や会計処理の際にも明確な証拠として役立ちます。そのため、小切手は単に現金の代替手段というだけでなく、経理業務の合理化にも貢献しています。
小切手に関する用語
小切手にはいくつかの専門的な用語が使われており、初めて利用する人にとっては理解が難しい場合があります。以下では小切手に関わる主な用語をわかりやすく解説します。
- 振出人
振出人とは、小切手を発行して支払う立場にある人や企業のことです。当座預金口座を持ち、小切手の金額を準備して相手に支払います。 - 受取人
小切手を受け取り、実際に銀行で換金する人や企業のことを受取人または持参人と呼びます。小切手を銀行に持っていき、現金または口座振込で資金を受け取ります。 - 振出日
振出日は、小切手を作成した日付のことを指します。振出日を基準に、小切手の換金可能期間(呈示期間)が設定されています。通常、小切手は振出日の翌日から10日以内に銀行で換金することが求められます。 - 呈示期間
呈示期間とは、小切手を銀行で換金できる期間のことを言います。基本的には振出日の翌日から10日間です。この期間を過ぎても直ちに無効になるわけではありませんが、支払いが拒否される可能性が高まるため、期間内に換金するのが望ましいとされています。
小切手は以上のように様々なルールや用語がありますが、基本的な仕組みを理解することで、安全かつ効果的に活用することができます。
小切手と手形の違い
小切手と手形はどちらも現金に代わる支払い手段として使われる有価証券ですが、それぞれに異なる特徴や用途があります。ここでは両者の違いを詳しく解説していきます。
現金化できる時期の違い
小切手は、原則として受け取った後にすぐに銀行で現金化することができます。特に支払期日は設定されておらず、振出日の翌日から10日間以内に銀行に持ち込めば、いつでも現金に換えることが可能です。このため、小切手は主にすぐに支払いを済ませたいときや、即時の決済が必要な場合に利用されます。
一方、手形は「支払期日」という具体的な日付が設定されています。そのため、手形を受け取ったとしても、手形に書かれている支払期日が到来するまで現金化することは原則としてできません。手形の支払期日は通常、振出日から1〜4ヶ月程度先に設定されることが多く、資金のやり繰りを計画的に行う目的で使用されます。
主な用途の違い
小切手は、現金の代わりとして即時決済を目的として使われることが一般的です。具体的には、商品の代金やサービス料金の支払い、その他、すぐにお金を動かしたい場合に使用されます。受取人にとっても、銀行で現金化すればすぐに資金が手に入るため、資金繰りの負担が少ないのが特徴です。
対して手形は、短期的な信用取引や企業間取引で多く使われています。手形には支払い期日が設定されているため、すぐに現金が用意できない企業が将来的な支払いを約束し、その場の資金調達を後回しにすることが可能です。これは一種の信用取引の手段であり、受取側の企業にとっては将来的に現金化できる債権(お金を受け取る権利)となります。ただし、支払い期日までは資金が受け取れないため、資金繰りには注意が必要です。
法的拘束力の違い
小切手には支払い期日が設定されておらず、あくまで銀行に持ち込まれたタイミングで現金が支払われる仕組みです。そのため、小切手に記載された日付に法的な拘束力はありません。また、小切手を振り出す際には収入印紙を貼る必要はありませんので、手数料負担が少なく済むというメリットもあります。
手形は法的拘束力のある支払期日が明記されているため、その期日に支払いが行われないと、手形の振出人は法律的な責任を問われます。また、手形を発行する場合には金額に応じて収入印紙を貼る必要があるため、発行時の費用負担が増える場合があります。こうした点からも、手形は小切手に比べて慎重な扱いが求められます。
不渡り時のリスクの違い
小切手を振り出す場合、口座の残高不足などで小切手が現金化できなかった場合には「不渡り」となります。小切手の不渡りは振出人の信用を大きく損なうものであり、6ヶ月以内に2回不渡りを出すと銀行取引停止処分(いわゆるブラックリスト入り)となります。これにより、その後2年間は新たな銀行取引や融資取引が制限されるため、事業活動に重大な支障をきたします。
手形も同様に不渡りのリスクがありますが、手形の場合はさらに支払期日までの期間がある分、発行側が資金繰りを慎重に行う必要があります。また、手形が不渡りとなった場合も、小切手と同じく大きな信用問題となり、事業運営に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
小切手の種類
小切手はその使い方や目的によっていくつかの種類に分類されています。取引の内容や安全性の面から、どのタイプの小切手を利用するか選ぶことが重要です。ここでは、代表的な3種類の小切手について、それぞれの特徴や使用される状況を詳しく解説します。
持参人払小切手
持参人払小切手とは、小切手を銀行に持ち込んだ人(持参人)が誰であっても現金に交換できるタイプの小切手のことです。小切手の受取人が特に指定されておらず、「持っている人」に対して銀行が支払いを行います。そのため、小切手を渡した相手以外の第三者が銀行に持ち込んでも、現金化される可能性があるという特徴があります。
このような性質から、持参人払小切手は相手を特定せずに支払いをしたい場合や、不特定多数の人が受け取る可能性がある場面で使われることがあります。しかし、この便利さの反面、紛失や盗難などの際に第三者に悪用されるリスクが高く、管理には特に注意が必要です。安全に使うためには、取り扱いや保管を慎重に行うことが重要となります。
線引小切手
線引小切手とは、小切手の表面に二本の平行線が引かれた小切手のことです。二本の線が引かれることで、この小切手は銀行口座への振込による支払いのみが可能になり、銀行の窓口で現金として直接受け取ることはできなくなります。これは、小切手が盗難や紛失に遭った場合でも、第三者が簡単に現金化できないようにするための安全対策です。
線引小切手は、安全性が高いことから、高額な取引や、確実に受取人本人の口座に振り込まれる必要がある取引で頻繁に利用されています。また、小切手の受取人が明確に指定されている場合にも使われます。特に企業間の決済においては、線引小切手が広く利用される傾向があります。
先日付小切手
先日付小切手とは、実際に小切手を振り出した日よりも未来の日付を振出日として記載した小切手のことです。具体的には、振出人が現在は資金が十分でないものの、後日の特定の日付には資金が準備できる見込みがある場合などに利用されることがあります。取引先との信頼関係がある場合や、取引先の了承を得ている場合に、支払い期日を先送りする目的で使われることがあります。
ただし、この先日付小切手は法的に支払いを延期する効果が保証されているわけではなく、小切手を受け取った側がその日付を待たずに銀行に持ち込めば、銀行は原則として記載された日付に関係なく支払いを行います。そのため、振出人は十分な注意が必要です。口座の残高が不足している状態で小切手が銀行に持ち込まれると、不渡りになるリスクがあるため、取引先との調整や資金繰りの管理が重要になります。
小切手のメリット
小切手は、現金の代わりに決済を行う手段として、特にビジネスシーンで多く活用されています。現金での取引と比較して、小切手にはいくつかの大きなメリットがあります。ここでは、小切手の主なメリットについて、具体的な事例を交えて詳しく解説します。
多額の現金を持ち運ぶ必要がない
小切手を利用する最も大きなメリットは、多額の現金を持ち歩くリスクを避けられることです。ビジネスでは、数十万から数百万円という大きな金額を現金で支払う場合がありますが、このような場合、大量の現金を持ち運ぶことは盗難や紛失などのリスクが伴います。
小切手なら、たとえ大きな金額であっても専用の用紙1枚に記入して渡すだけで取引が成立します。受取人も、銀行へ小切手を持っていくことで安全に現金化できます。そのため、企業間の取引や重要な決済の場で広く利用されています。
紛失や盗難時に支払いを止められる
小切手は、万が一紛失したり盗難に遭ったりした場合でも、支払いを止めることができるという安全面でのメリットがあります。現金の場合は、一度盗まれたり紛失すると取り戻すことは非常に難しいですが、小切手は銀行に事故届を提出することにより、支払いの停止措置を取ることが可能です。
支払い停止の手続きを銀行に行うことで、小切手を拾った第三者が不正に換金することを防止できるため、安全性が高まります。特に大きな金額を扱うビジネス取引では、こうしたセキュリティ面でのメリットが重要となります。
支払いの記録が残る
小切手を利用すると、銀行を介した明確な取引記録が残ります。これにより、後日の帳簿処理や会計監査などの際に、支払いの証拠として明確に利用できます。現金取引と比べて、取引の内容や金額、支払い先が確実に記録として残るため、経理担当者の業務が効率化されるというメリットがあります。
特に多くの取引を日常的に行う企業では、現金払いでは記録の管理が煩雑になりがちですが、小切手を使うことにより透明性のある経理処理を行うことが可能になります。
収入印紙が不要
小切手は手形と違い、振り出す際に収入印紙を貼る必要がありません。手形の場合、金額に応じて収入印紙を貼らなければならず、費用負担が生じます。一方、小切手にはその義務がなく、発行する際の費用が節約できるというメリットがあります。
特に頻繁に小切手を振り出す企業にとっては、収入印紙代が不要であることがコスト削減につながり、メリットとなります。
信用力の向上や信頼関係の構築に役立つ
小切手を使うことで、企業としての信頼性や信用力を高める効果もあります。当座預金口座を持ち、小切手を振り出して取引ができるということは、銀行から一定の信用を得ていることを示すものです。
また、小切手を問題なく決済することで、取引先との信頼関係も深まります。現金払いに比べて、よりフォーマルで信用度の高い支払い手段として、ビジネスにおいて良好な関係構築にも役立つでしょう。
小切手のデメリット
小切手は便利で安全性の高い支払い手段として利用されていますが、一方で、いくつかのデメリットや注意すべきポイントもあります。特にビジネスで使用する際は、小切手の特性を理解した上で正しく扱うことが重要です。ここでは、小切手の主なデメリットについて詳しく解説します。
当座預金口座の残高管理が必要
小切手を利用する場合、特に注意が必要なのは当座預金口座の残高管理です。小切手を振り出すときには、必ずその金額以上の預金が口座に必要です。もし残高が不足した状態で小切手を振り出してしまうと、「不渡り」となり、振出人の信用に大きなダメージを与えます。
そのため、小切手を利用している企業や個人は、常に口座の残高を確認し、資金管理を徹底する必要があります。経理担当者の手間や業務負担が増えることも、小切手のデメリットの一つです。
不渡りによる信用リスクが高い
小切手は振り出した後に現金化されるまでの期間が比較的短く、口座残高が不足するとすぐに不渡りとなるリスクがあります。小切手が不渡りとなると、振出人の信用が著しく低下し、その後の銀行取引やビジネス活動に重大な影響を及ぼします。
具体的には、6ヶ月以内に2回不渡りを出すと、「銀行取引停止処分」を受ける可能性があります。この処分が下されると、以降2年間は新規の融資や当座預金口座の開設、さらには既存口座の利用も制限されるため、事業運営が非常に困難になることもあります。こうしたリスクを避けるためにも、小切手を利用する際には慎重な資金管理が求められます。
換金時に手数料がかかる場合がある
小切手を銀行で換金する際には、場合によって手数料が発生することがあります。特に、小切手を発行した銀行とは異なる銀行で換金(取立委任)をする場合や、遠方の銀行が支払銀行である場合は、銀行によって数百円〜千円程度の手数料が徴収されることがあります。
頻繁に小切手を利用する場合や、小切手の額面が比較的小さい場合には、この手数料負担が意外なコスト増となり、経営や取引に影響を与える可能性があります。
記載ミスによるトラブルのリスクがある
小切手は振出人が自分で金額や振出日などを記入するため、記載ミスや書き間違いが発生しやすい点もデメリットです。小切手に記載された金額や日付などに誤りがあった場合、銀行での換金がスムーズに行えず、取引先とのトラブルや資金繰りの問題を引き起こす可能性があります。
また、金額の訂正は原則として認められておらず、もし記載を誤った場合は、小切手自体を書き直す必要があるなど、手間がかかります。そのため、小切手を利用する際には、慎重かつ正確に記載することが求められます。
紛失や盗難による不正利用のリスクがある
小切手は現金と異なり、盗難や紛失時に銀行へ届け出ることで支払い停止の措置を取ることができますが、紛失や盗難自体のリスクは依然として存在します。特に、受取人を指定しない「持参人払小切手」の場合、紛失や盗難によって第三者に悪用されやすく、不正利用の危険性が高まります。
こうしたリスクを避けるためには、小切手を厳重に管理し、受取人を明確に指定する「線引小切手」を利用するなど、安全対策を徹底する必要があります。
小切手の書き方
小切手を発行する際は、決められたルールに従って正確に記入する必要があります。小切手には法的な効力があるため、記載ミスがあると支払いが拒否されたり、トラブルに発展したりすることもあります。ここでは、小切手を正しく書くための方法と注意点を詳しく解説します。
振出日
振出日とは、小切手を作成した日付のことを指します。この日付は小切手を換金できる期間(呈示期間)の基準となります。そのため、振出日は必ず正確に記入する必要があります。
記入の際は、西暦または和暦で年月日を明確に書きます。後から修正や訂正をすると銀行で拒否されることが多いため、必ず正しく丁寧に記載してください。
なお、先日付小切手は法的に支払いを延期する力はないため、日付の設定には注意が必要です。
金額
小切手の金額は、原則として漢数字を使い、改ざん防止のため厳格なルールに沿って記載します。具体的には、金額の先頭に「金」をつけ、最後には必ず「円也」と記載します。例えば、10万円の場合は「金壱拾萬円也」、50万円の場合は「金伍拾萬円也」と記入します。
金額の訂正は基本的に認められません。訂正が必要な場合は新しい小切手を使用して書き直さなければなりません。また、チェックライターを使用して金額を記入する場合は、金額の前に「¥」を付け、最後に「※」や「★」などの終止符号を打つことで安全性が高まります。
金額が改ざんされると大きな損害を受ける可能性があるため、慎重に記入することが重要です。
受取人(宛名)
受取人欄には、支払いを受け取る人または企業の名前を記入します。受取人を指定する場合は、個人名であればフルネーム(例:山田太郎)、企業であれば正式な会社名(例:株式会社ABC商事)を正確に書きます。略称や曖昧な名称は避けてください。
持参人払小切手の場合は、受取人欄を空欄にしても問題ありませんが、安全性を高めるためにはなるべく受取人を指定することが望ましいです。
支払銀行・支店名
振出人は、銀行が発行した小切手用紙を使用するため、通常はあらかじめ銀行名と支店名が印字されています。万が一、支払銀行や支店名が印字されていない場合は、小切手が無効になる恐れがあるため、必ず銀行に確認してください。
銀行名・支店名の印字があることを確認した上で、小切手を使用するようにしましょう。
振出人の署名・捺印
振出人の署名・捺印は、小切手の有効性を証明するための最も重要な項目です。振出人の欄には、必ず銀行に届け出ている署名(または会社名・代表者名)を記入し、銀行印を押します。
法人が発行する場合は、会社名、代表者名、代表者の役職を明確に記入し、その下に銀行届出印を押印します。
印鑑ははっきりと押印し、欠けたり滲んだりしないよう注意しましょう。印鑑に問題があると、銀行が支払いを拒否する場合があります。
割印
割印とは、小切手本体とその控え部分との境界線(ミシン目)をまたいで銀行印を押すことを指します。これは、小切手の偽造や改ざんを防ぐために重要な役割を果たします。
割印を行う際は、小切手のミシン目部分に、銀行届出印を半分ずつにまたがるように押印します。割印がない場合でも小切手の有効性に問題はありませんが、不正防止のために必ず押印することが推奨されています。
銀行渡り
安全性をさらに高めたい場合は、小切手の表面に「銀行渡り」と記載します。これにより、小切手を銀行口座への振込限定にすることができます。
「銀行渡り」と記載された小切手は、銀行窓口で現金化することができず、受取人の銀行口座へ振り込まれる形でのみ支払われます。この方法は小切手が紛失や盗難に遭った場合でも、不正な現金化を防止できるため安全性が高まります。
小切手の受け取り方
小切手を取引先や顧客から受け取る場合、その場での確認や受け取った後の処理方法について注意が必要です。小切手の内容に誤りや不備があると、銀行での換金がスムーズに行われず、資金繰りに影響を与える可能性があります。必ず以下の点を確認するようにしましょう。
- 金額:金額欄に記載された金額と、取引内容と一致しているかを確認します。
- 振出日:振出日が記載されているか、また、受け取った日と矛盾がないかを確認します。
- 振出人:振出人の会社名や代表者名などに間違いがないかを確認します。
- 署名・捺印:振出人の署名と銀行印が押印されているかを確認します。
- 線引の有無:線引小切手であるかを確認し、換金方法を把握します。
小切手を換金・現金化する方法
小切手を受け取った後、実際に現金を手に入れるためには、銀行での換金手続きを行う必要があります。小切手の換金方法にはいくつかの手順や注意点がありますので、スムーズに資金を回収できるように、各方法の特徴を理解しておくことが大切です。
支払銀行の窓口で直接換金する方法(店頭呈示)
小切手の換金方法として最も早く現金を手に入れられるのが、小切手に記載されている「支払銀行」の窓口で直接換金する方法です。
この方法では、小切手を持って支払銀行の本支店の窓口に行き、本人確認書類(免許証やパスポートなど)を提示して現金化を依頼します。通常はその場で現金を受け取ることができます。ただし、小切手の振出日翌日から10日間(呈示期間)を過ぎると、銀行が支払いを拒否する場合もあるため注意が必要です。
また、小切手に記載された支払銀行の本店や支店が遠方の場合は、移動の手間や時間がかかることがデメリットになります。そのため、小切手を受け取ったらすぐに支払銀行の所在地を確認し、対応できるかを検討しましょう。
取引銀行に取立を依頼する方法(取立委任)
支払銀行が遠方にある場合や、複数の小切手をまとめて処理したい場合には、自分の取引銀行に小切手を持ち込み、「取立委任」という形で換金手続きを依頼する方法があります。
この方法では、自分が口座を持っている銀行の窓口に小切手を預け、支払銀行から資金を回収してもらいます。その後、取引銀行を通じて自分の口座に小切手の金額が振り込まれます。
取立委任を利用すると、自分で支払銀行まで行く必要がなく手間が省けますが、支払銀行が遠方の場合は入金までに数日〜1週間程度かかることがあります。また、この方法を利用すると、銀行によっては取立手数料(数百円〜千円程度)が発生する場合もあります。
特に資金繰りが急ぐ場合は、入金されるまでの日数や手数料について銀行に確認しておきましょう。
線引小切手を換金する方法
線引小切手(表面に二本の平行線が引かれた小切手)は、銀行窓口での直接現金化ができません。自分の銀行口座に入金する形でのみ換金可能です。
線引小切手を受け取ったら、自分の取引銀行の窓口に持ち込み、「取立委任」の手続きをします。その後、銀行が支払銀行から資金を回収し、指定した自分の口座へ振り込まれます。
この方法は安全性が高い反面、現金を受け取れるまでには数日間のタイムラグが生じるため、急ぎの資金回収には向いていません。あらかじめ入金までにかかる期間を考慮して資金繰りを計画する必要があります。
小切手の有効期限
小切手の呈示期間は、原則として振出日の翌日から10日間です。この期間内に銀行で換金手続きを行うことが推奨されます。呈示期間を過ぎても6か月間は遡求権がありますが、振出人は金融機関に決済の取り消しを求めることができるため、換金できなくなる可能性があります。
小切手の仕訳・勘定科目
小切手をビジネスで利用する場合、経理上の適切な仕訳が必要です。小切手は現金と同様に価値を持つ有価証券であり、その取引を正確に記録することで、会社の財務状況や資金繰りを明確に管理できます。ここでは、小切手を発行した場合と、小切手を受け取った場合の仕訳方法や具体的な勘定科目について解説します。
小切手を振り出した場合の仕訳
小切手を自社が振り出して取引先に支払いをする場合は、会計上「当座預金」から支払ったものとして仕訳します。これは、小切手の支払い元が銀行の当座預金口座から引き落とされる仕組みであるためです。
たとえば、仕入先に商品代金50万円を小切手で支払った場合の仕訳は以下の通りです。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
仕入 | 500,000円 | 当座預金 | 500,000円 |
この仕訳により、「仕入」という費用科目が増加し、「当座預金」という資産が減少したことが明確になります。
また、小切手を使って消耗品費10万円を支払った場合の仕訳例は以下になります。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
消耗品費 | 100,000円 | 当座預金 | 100,000円 |
このように、小切手による支払いは常に「当座預金」を貸方に記録し、借方にはその支払いの内容に応じた費用科目(仕入、消耗品費、支払家賃、外注費など)を記入します。
小切手を受け取った場合の仕訳
取引先から小切手を受け取った場合は、現金として処理するのではなく、すぐに銀行で換金することを前提に「現金」勘定や「現金預金」として処理します。ただし、多くの企業では、銀行への入金を想定しているため「現金」勘定で処理するケースが一般的です。
たとえば、取引先から売掛金として30万円の小切手を受け取った場合の仕訳は以下の通りです。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
現金 | 300,000円 | 売掛金 | 300,000円 |
この仕訳によって、「現金」が増え、「売掛金」が減少したことを表しています。受け取った小切手は実際にはまだ銀行に持ち込まれていませんが、仕訳上は現金として認識する方法が広く使われています。
また、取引先から売上代金100万円を小切手で直接受け取った場合の仕訳例は以下の通りです。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
現金 | 1,000,000円 | 売上 | 1,000,000円 |
このように、「売上」という収益科目が発生し、「現金」が増加する仕訳となります。
小切手が不渡りになった場合の仕訳
小切手が不渡りとなった場合は、以下のような逆仕訳を行い、当初の入金処理を取り消します。
仮に、売掛金の回収として受け取った50万円の小切手が不渡りになった場合は、以下の仕訳を行います。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
売掛金 | 500,000円 | 現金 | 500,000円 |
これにより、再び「売掛金」を元に戻し、「現金」を取り消します。実際には取引先への督促や回収業務を行う必要がありますが、会計上はこのように逆仕訳を行います。
小切手を紛失・盗難された場合の対応
小切手は現金と同じ価値を持つ有価証券であるため、紛失や盗難に遭った場合は迅速かつ適切な対応が必要になります。対応が遅れると不正利用されるリスクが高まり、重大な損害を被る可能性があります。この章では、小切手を紛失または盗難された際に行うべき具体的な対応方法を詳しく解説します。
振出人へすぐに連絡する
小切手を紛失したり盗難されたことが判明したら、直ちに小切手を振り出した相手(振出人)に連絡します。小切手の支払い停止手続きは、原則として振出人が支払銀行に対して行うものです。そのため、まず振出人に状況を伝え、小切手の番号や金額、振出日を報告し、支払い停止措置を取ってもらいます。
振出人が迅速に銀行へ事故届を提出すれば、不正換金を防ぐことが可能となります。
支払銀行へ事故届を提出する
振出人は、連絡を受けたらすぐに支払銀行へ「事故届」を提出し、該当する小切手の支払いを止めるように依頼します。銀行は事故届を受理すると、その小切手が銀行に呈示されても支払いを拒否し、不正利用を防止します。
この支払い停止措置は、銀行窓口で所定の書類(事故届)を提出することで可能になります。書類には小切手番号、振出日、金額など詳細情報を記入する必要があります。事故届は迅速に提出することが重要です。
警察へ遺失届・盗難届を提出する
小切手を紛失した場合は、速やかに最寄りの警察署へ「遺失届」を提出します。盗難に遭った場合は「盗難届」を提出します。警察に届け出ることで、万が一第三者が拾得したり、盗難された小切手を悪用した場合でも、早期発見や被害の拡大防止につながります。
警察への届け出がなければ、銀行側が不正使用の証明をする際に必要な証拠が不足し、支払い停止措置の効力が弱まる可能性もあるため、必ず警察への届出を忘れずに行いましょう。
小切手の再発行などの手続きを行う
小切手を紛失または盗難され、振出人が支払い停止措置を行った後は、通常、振出人と相談して新たな小切手の再発行や銀行振込による支払いなど、別の方法で資金を受け取るよう調整します。
再発行の場合、振出人側が銀行に再度小切手を発行する手続きをする必要があります。小切手の再発行は、双方の同意と一定の手続きが必要となるため、早期に調整を進めることが大切です。
小切手の不正利用を防ぐためのポイント
小切手は非常に便利な決済手段ですが、不正利用のリスクが伴います。特に小切手は現金同様の価値を持つため、十分な管理やセキュリティ対策が不可欠です。この章では、小切手を安全に管理し、不正利用を防止するための具体的なポイントを詳しく解説します。
振出人側が実施すべき不正防止対策
振出人(小切手を発行する側)が不正利用を防ぐためにできる対策は、次の通りです。
当座預金口座の残高管理を徹底する
小切手を振り出した後、当座預金口座の残高を常に確認し、小切手が不渡りになるリスクを防ぐことが重要です。残高が不足すると不渡りが発生し、信用低下や不正利用を誘発する恐れがあります。
記入方法を工夫して改ざんを防ぐ
小切手の金額は、改ざんが難しい漢数字(特に旧字体)で記入するか、専用のチェックライターを使用しましょう。さらに、金額の先頭には「金」、末尾には必ず「円也」と記載し、改ざんを防ぎます。
小切手帳の厳重な管理を行う
小切手帳は盗難や紛失を防ぐために、金庫や鍵のかかる引き出しなど、厳重に管理します。使用する際も必要な枚数だけ取り出し、未使用分は必ず安全な場所に戻します。
割印を押す
小切手帳の控えと小切手本体との間に割印(銀行印)を押し、不正利用や改ざんを防ぎます。割印がない場合、不正に小切手を持ち出されるリスクが高まります。
線引や銀行渡りを活用する
小切手に二本の平行線を引く(線引小切手)または「銀行渡り」と記載することで、受取人以外が不正に換金するリスクを大きく減らせます。
受取人側が実施すべき不正防止対策
受取人側(小切手を受け取る側)が不正利用を防ぐためにできる対策は、次の通りです。
小切手を受け取ったらすぐに確認する
小切手の記載内容(振出人の署名や捺印、金額、日付など)に間違いや不備がないか、受け取った時点ですぐに確認します。不備があればその場で訂正や再発行を依頼します。
受け取ったら速やかに銀行で換金する
小切手の呈示期間(振出日の翌日から10日間)内に、迅速に換金することで、紛失や盗難による不正利用を未然に防ぎます。
小切手の安全な保管を徹底する
換金までの間、小切手は金庫などの安全な場所で保管します。また、取り扱う担当者を明確に決め、責任を持って管理する体制を整えることでリスクを軽減します。
振出人の信用状況を確認する
初めて取引する相手や高額取引の場合、振出人の信用力を銀行や信用調査会社に確認し、不渡りによるトラブルを防止します。
以上のように、小切手の紛失や盗難、不正利用のリスクを防ぐためには、振出人・受取人の双方がしっかりと対策を講じ、迅速な対応と厳重な管理を行うことが重要です。
小切手の利用は2026年度末までに廃止予定
日本における小切手の利用は、長年にわたり企業間の決済手段として一定の役割を果たしてきました。しかし、社会のデジタル化が急速に進む中で、その利用状況は変化を見せています。全国手形交換所の交換高は、金額ベースではピーク時から大幅に減少しており、枚数ベースでも減少傾向にあります。
その背景には、キャッシュレス決済の普及が挙げられます。クレジットカード、デビットカード、電子マネー、QRコード決済など、多様なキャッシュレス決済手段が登場し、利便性の高さから利用者が増加しています。特に個人間の取引においては、キャッシュレス決済が主流となりつつあります。
企業間取引においても、振込や電子記録債権(でんさい)といった電子的な決済手段への移行が進んでいます。紙の小切手は、発行や郵送、管理に手間がかかるだけでなく、紛失や盗難のリスク、印紙税などのコストも発生します。一方、電子決済は、これらのデメリットを解消し、効率化、コスト削減、セキュリティ向上といったメリットをもたらします。
このような流れを受け、政府は2026年末までに紙の手形・小切手の利用を原則として廃止し、全面的な電子化を目指す方針を打ち出しています。これに伴い、多くの金融機関が、新規の当座預金口座開設者に対する小切手帳の発行停止や、将来の期日となる小切手の取立受付停止などの対応を進めています。
小切手のルールを理解してトラブルを回避しましょう
小切手は、多額の現金を持ち運ぶリスクを回避できる安全で便利な支払い方法ですが、使用には細かなルールや注意点があります。振出人・受取人双方が適切な管理を行い、不正利用や記載ミスによるトラブルを防ぐことが重要です。一方、近年のデジタル化により、紙の小切手は2026年度末までに廃止される予定となっています。今後は、電子的な決済手段への切り替えを進める必要があるため、本記事の内容を理解し、スムーズに新たな決済環境へ対応していきましょう。
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