- 更新日 : 2025年2月20日
経費精算はアウトソーシングできる?委託できる業務や費用を解説
近年、テレワークの普及や働き方の多様化などビジネス環境の変化により、経理業務のアウトソースが増えてきています。経費精算をアウトソーシングすると、経理業務の削減や経理業務のミス防止、不正防止などが可能です。
本記事では、経費精算業務をアウトソーシングするメリットや委託可能な業務などについて解説します。
目次
経費精算のアウトソーシングとは
経費精算のアウトソーシングとは、社内の担当部署が行っている経費精算のフローを外部の会社に業務委託して、代わりに行ってもらうことです。近年、ビジネス環境の変化により、経理業務のアウトソースが増えてきています。
ここでは、経費精算をアウトソーシングすることのメリットやデメリット、増加傾向にある理由を解説します。
メリット
経費精算業務をアウトソーシングするメリットは、次の4点です。
- 経費精算業務を削減できる
- 経理業務のミスが防げる
- 法改正があっても安心できる
- 不正の防止ができる
どこまで経費精算業務をアウトソーシングするかによりますが、すべての業務を委託できれば、経費精算にかかる経理業務を削減できます。経費精算業務には、領収書と申請内容の整合性チェックや会計データの作成など、時間のかかる作業が多くあります。これらの業務を委託できれば、従業員のリソースをコア業務に集中できるようになるでしょう。
アウトソーシング先は、経理業務をプロで行っている会社でもあります。ミスが許されず常に正確性が求められる経費精算業務を経理のプロに任せることで、より正確に作業してもらえる点はメリットです。
また、法改正などがあった場合でも、最新の法律に則って対応してもらえる点もアウトソーシングならではの魅力といえます。税法は改正が多く、最新情報を追いかけるだけでも大変です。知らずに古い認識のまま経理処理をしてしまうと、税務調査の際に指摘されてしまう恐れがあります。
経費精算業務をより安心して進めたい場合は、アウトソーシングが有効な手段になりうるでしょう。
デメリット
経費精算業務をアウトソーシングするデメリットは、次の3点です。
- 体制の整備に時間とコストがかかる
- 社内経理担当者の人材育成が進まない
- 社内に経費精算のノウハウが蓄積されない
社内で行っていた業務を外注する場合は、体制の整備が欠かせません。アウトソーシング業者との契約手続きやシステム導入のほか、社内ルールや過去データの共有、社内の業務フローの見直しなどが必要です。体制の整備に時間やコストがかかってしまう点はデメリットといえるでしょう。
経費精算業務をアウトソーシングすることで、社内の経理担当者の成長機会が減ることも頭に入れておきましょう。経理業務は専門的なスキルや知識を要する業務ですが、外部業者に業務を依存することで、それらを業務で習得する機会が失われます。
その結果、将来的に経理に関する専門知識を持った社員が不足してしまう恐れもあるでしょう。アウトソーシングを利用する場合は、社内の人材育成にも並行して注力する必要があります。
同様の理由で、社内に経費精算のノウハウが蓄積されない点もデメリットです。アウトソーシングすると、業者が経費精算手続きを代行してくれるため、経理担当者の知識だけでなく、業務に関するノウハウも蓄積されなくなってしまいます。
将来的にアウトソーシングの利用をやめる可能性がある場合は、アウトソーシング業者に情報の共有をしてもらうなどの対策をとっておくことが重要です。
アウトソーシングする企業が増えている理由
近年、経費精算業務をアウトソーシングする企業が増えています。主な理由は、次の2点です。
- 業務の効率化によるもの
- ビジネス環境の変化によるもの
経理部門は、企業にとって利益を直接生み出す部門ではありません。間接業務を担う部門であり、なかでも経費精算業務には多くの手間と時間を要し、会社にとって必ずしも効率的な費用対効果が望めるものではないのが現実です。
そのため、経理業務を外部業者へアウトソーシングしたほうがコア業務へ割ける人員を確保できるうえ、業務効率化につながると考える企業が増えています。
さらに、テレワークの普及や働き方の多様化など、ビジネス環境の変化も理由のひとつです。これまでのようにオフィスへ出社する機会が減っており、出社して行っていた経理業務自体をアウトソーシングしてしまおうという流れの会社が増えています。
アウトソーシングが可能な経費精算業務
経費精算業務には、経費の確認・承認や会計ソフトへの入力、交通費の計算などさまざまな業務があります。ここでは、経費精算業務においてアウトソーシングできる業務を紹介します。
申請された経費の確認や承認
申請された経費の内容確認や承認業務は、アウトソーシング可能です。次のような内容を確認して、経費を承認します。
- 従業員が提出する経費申請書類と実際の領収書に間違いがないか
- そもそも申請書に記載されている要件が経費として認められるかどうか
- 様式・記載方法が社内のルールに沿ったものであるか
これらは比較的単純な作業であるため、外部に任せやすい業務といえます。
会計ソフトへの入力
承認された経費申請書の内容を会計ソフトに入力する業務もアウトソーシングできます。会計ソフトや給与計算ソフトと連携して入力の自動化に取り組んでいる企業も多くなっていますが、まだ紙ベースの申請書を使用していて、手入力をしている企業も少なくありません。
作業自体は単調なものですが、作業には膨大な手間を要し、間違いも許されず担当者の負担が大きいのが実情です。これらの業務を外注できれば、担当者の負担軽減につながります。
支払処理業務
立替経費を従業員へ振り込む支払処理業務も、アウトソーシングに向いています。金額を振り込む作業自体は難しい作業ではありませんが、件数が多くなれば担当者に負担のかかる作業です。
間違えた場合は会社にとっても損失となるため、担当者には大きなストレスもかかっています。アウトソーシングすることで、それらを解消できるうえ、もし担当者が不正をしていれば不当な振り込みが行われるリスク回避にもつながります。
経費精算をアウトソーシングする方法
経費精算業務をアウトソーシングする方法には、自社内常駐型と外注センター型の2種類があります。それぞれの特徴や違いを把握しておきましょう。
自社内常駐型
自社内常駐型は、アウトソーシング企業の担当者が自社内に常駐して業務を行うタイプです。このタイプでは、自社の既存ワークフローに合わせて業務を行ってくれます。
自社の営業時間内であれば、問題が発生した場合でもすぐに対応してもらえるほか、コミュニケーションが図りやすい点は魅力です。社外に情報を持ち出す必要もないため、セキュリティ面でも安心感があります。
ただし、外注センター型に比べて費用が割高な点は、デメリットです。
外注センター型
外注センター型は、担当者が委託先で業務を行うタイプです。担当者とは、クラウド経由でやり取りを行います。そのため、依頼するうえでは、経費精算・管理システムの導入が前提です。また、常駐しないため緊急時の対応も難しくなります。
ただし、委託先に業務を集中させて効率的に行えるため、訪問型と比べてコストが抑えられる点はメリットです。
自社常駐型と外注センター型は、それぞれ特徴が異なります。違いを理解して、自社にあった外注先を探しましょう。
経費精算のアウトソーシングにかかる費用
ここでは、経費精算業務をアウトソーシングする際にかかる費用について解説します。費用相場は、企業規模や取引件数に応じて料金が変動し、担当業務領域が専門的であるほど料金も高くなる傾向です。
依頼内容 | 費用相場 |
---|---|
記帳代行 | 1,000円前後/10仕訳~30仕訳あたり |
給与・賞与計算 | 2,000円前後/1人あたり |
振り込み・支払い | 1,000円前後/1件あたり |
上記は、あくまで一例です。経費精算業務は、依頼する業務内容によって費用が異なるため、Webサイトで費用が公開されていないケースも多いです。具体的な費用は、依頼先に直接確認するようにしましょう。
経費精算のアウトソーシング先を選ぶポイント
最後に経費精算業務のアウトソーシング先を選ぶポイントを紹介します。確認しておきたいポイントは、次の4点です。
- 委託業務がアウトソーシング先の対応範囲か
- セキュリティ管理が徹底されているか
- 経費精算システムを導入しているか
- 緊急時の対応はどうなっているか
それぞれ詳しく見ていきましょう。
委託したい業務が対応範囲内か
まずは、依頼したい業務内容が、アウトソーシング先の業務範囲かどうかを確認する必要があります。アウトソーシングが可能な業務かどうかは、依頼先によってさまざまです。また、調べずに依頼してしまうと、結果的に希望する業務を任せられないということもあり得るでしょう。
事前に各業者の特徴をよく比較してから、依頼先を選ぶことが大切です。
セキュリティ管理が徹底されているか
経緯を含む経理情報は、会社にとって機密情報といえる重要なものです。従業員の給与や保険に関わる個人情報なども含まれているため、アウトソーシングする際は依頼先のセキュリティ管理状況もチェックしましょう。
情報管理の徹底度を確認する方法には、次のようなものが挙げられます。
- 情報セキュリティや保護に関する認証を取得しているか:プライバシーマークやISO/IEC27001など
- 過去に情報漏洩に関連するトラブルを起こしていないか
- 業者の掲げている情報管理に対するポリシーや考え方に具体性があるか
経費精算システムを導入しているか
現在会社で経費精算システムを導入している、もしくは今後導入する予定がある場合は、会社の経費精算システムとアウトソーシングした経費精算データが連携可能かどうかを確認しましょう。
連携可能であれば、入力したものが自動で相手先へも反映されます。しかし、連携不可能な場合は、手入力する手間が増えてしまうため注意しましょう。
緊急時に迅速な対応が可能か
外注センター型の場合は、緊急時の対応がどうなっているかも確認したいポイントです。トラブルが生じた場合や業務についての疑問がある場合、常駐型であればすぐに対応してもらえる可能性が高いですが、外注センター型でも必要に応じて柔軟に対応してもらえるのかどうか、確認しておきましょう。
また、非常時マニュアルを作成してもらえるかも、あわせて確認しておくと安心して作業に臨めます。
経費精算業務をアウトソーシングして効率化しよう
経費精算業務は、確認に時間を要す作業が多いうえ、ミスが許されず担当者にも大きなストレスがかかる業務です。これらの業務をアウトソーシングすることで、負担軽減につながるほか、法改正への対応や不正防止の効果も期待できます。
アウトソーシングする方法は、自社内常駐型と外注センター型の2つです。アウトソーシング先を選ぶ際は、委託業務が対応範囲であるか、セキュリティ対策が万全かなどを基準に選びましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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