- 更新日 : 2025年2月20日
個別財務諸表とは?連結財務諸表との違いや包括利益表示について
財務諸表は、個別財務諸表と連結財務諸表に分けられます。個別財務諸表とは、ある1つの企業の財務諸表のことです。この記事では、個別財務諸表と連結財務諸表の関係や個別財務諸表での包括利益の表示、個別財務諸表の作成の注意点などについて解説します。
個別財務諸表とは
財務諸表とは、金融商品取引法や会社法・会社法関連の法律等に定められた決算書のことです。貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書、株主資本変動計算書、附属明細書が財務諸表に含まれます。
個別財務諸表とは、ある企業単体の財務諸表のことです。一般的に財務諸表と呼ばれるのは個別財務諸表のことで、グループ企業などに属していない企業は決算時に個別財務諸表を作成します。
個別財務諸表と連結財務諸表の違い
連結財務諸表は、親会社と子会社および関連会社を含めた企業グループを1つの企業とみなして作成する財務諸表のことです。個別財務諸表は1つの企業の財務諸表であるのに対し、連結財務諸表は複数の企業の財務諸表が合算された内容である点が異なります。
連結財務諸表による開示制度は2000年3月に開始されました。制度開始以降は、企業が個別に個別財務諸表を作成した後、グループ企業については個別財務諸表を合算した連結財務諸表の作成が義務付けられています。連結財務諸表には、個別財務諸表では把握できないグループ全体の財政状況や経営リスクを評価できるというメリットがあります。
また、個別財務諸表と連結財務諸表の違いの一つに、内部利益の扱いがあります。個別財務諸表では親会社、子会社、関連会社などとの取引を相殺しませんが、連結財務諸表ではグループ内の取引は相殺消去します。したがって、グループ内だけの取引しか行っていない会社の業績は、連結財務諸表上はほとんど示されません。
個別財務諸表作成時の注意点
財務諸表に関連する書類に有価証券報告書があります。有価証券報告書は、金融商品取引法が定める上場企業などが作成を義務付けられた書類です。財務諸表と有価証券報告書の作成・開示ルールは異なるため、注意して作成しましょう。
また、連結決算を行うグループ企業においても、個別財務諸表の作成は免除されていません。個別財務諸表は必ず作成しなければならないため、作成を省略しないよう注意しましょう。
連結財務諸表を作成するグループ企業は、個別財務諸表の合算が必要です。個別財務諸表の会計方針などが統一されていないと、合算時の負担が大きくなります。グループ企業間での整合性を担保できるよう、あらかじめ個別財務諸表の会計方針などは統一しておきしましょう。なお、連結財務諸表を作成する企業においては、個別財務諸表で必要な注記の一部を省略することが認められています。
包括利益表示は個別財務諸表に必要?
企業が保有する資産の含み益・含み損を反映させた当期純利益を包括利益といいます。包括利益は、連結財務諸表で表示されている項目です。包括利益は、国際会計基準に合わせる目的で連結財務諸表に表示されるようになりました。
ただし、個別財務諸表においては、包括利益の表示は規定されていません。個別財務諸表に包括利益を表示するとなると、現行の課税所得の計算や当期純利益の分配可能性の計算にも影響を与えるためです。つまり、個別財務諸表に包括利益を表示する必要はありません。
個別財務諸表は企業単体の財務諸表のこと
財務諸表は、個別財務諸表と連結財務諸表に区分されます。個別財務諸表は一般的な財務諸表のことで、企業単体の財政状態や経営成績などを表した財務諸表です。個別財務諸表と連結財務諸表は作成方法が異なりますので、混同しないように注意しましょう。
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