- 更新日 : 2024年9月27日
決算に必要な書類は?法人決算の流れや決算書について解説
すべての会社において、決算書の作成が必要です。決算書は、決算日時点の会社の財政状況などを示す重要な書類です。この記事では、法人決算で作成が求められる決算書の種類、決算書作成の流れ、保管方法などについて解説します。
目次
決算に必要な書類の一覧
会社法で、株式会社は計算書類の作成が義務付けられています。計算書類とは、以下の書類のことです。
計算書類に加えて、事業報告書と附属明細書の作成も必要となります。
なお、上場企業など一般投資家を対象に株式や社債の募集を行う企業については、金融商品取引法で以下の財務諸表の作成が義務付けられています。
- 貸借対照表
- 損益計算書
- 株主資本等変動計算書
- キャッシュ・フロー計算書
- 附属明細書
この他、個別注記表の作成も求められます。
貸借対照表
資産、負債、純資産の区分により、会社の財政状況を示す書類です。B/S(バランスシート)とも呼ばれます。
損益計算書
収益と費用、その差額である利益の額から会社の経営成績を示す書類です。P/L(ピーエル)とも呼ばれます。
株主資本等変動計算書
貸借対照表に記載される純資産のうち、株主資本の変動を示す書類です。新株の発行など、変動事由ごとに変動額を記載します。
キャッシュ・フロー計算書
現預金の入金や出金といったお金の流れを示す書類です。営業によるキャッシュ・フロー、投資によるキャッシュ・フロー、借入金などの財務によるキャッシュ・フローを区分して表示します。
個別注記表
会計方針の変更、表示方法の変更、貸借対照表や損益計算書に関わる事項など、貸借対照表や損益計算書などではわからない重要事項を記載した書類です。
附属明細書
決算書の内容を補足するための書類です。貸借対照表や損益計算書などの計算書類の附属明細書には、固定資産の明細や引当金の明細などを記載します。
決算に必要な書類の作り方
決算に必要な書類の作成は、以下の手順で行います。
決算日までの記帳を行う
決算書は、決算日時点の会社の状況を示す書類です。そのため、決算日までの取引はすべて決算書に反映されている必要があります。仕訳に漏れがないか確認して記帳しましょう。
決算整理仕訳を行う
決算のために必要な仕訳を行います。具体的には、売上原価を算出するための仕訳、減価償却費の計上、引当金の計上、未払金の計上などの仕訳を行います。
実地棚卸などを行う
帳簿上の残高と実際の残高に相違がある場合は、修正が必要です。残高が一致するか確認するために、実地棚卸、現金預金の残高、売上債権や仕入債務の残高などを確認します。
総勘定元帳に転記する
総勘定元帳とは、各勘定科目の明細を記載した帳簿のことです。勘定科目ごとに仕訳を転記して総勘定元帳を作成します。会計ソフトを利用する場合、総勘定元帳は基本的に自動で作成されます。
試算表を作成する
試算表は、仕訳や金額に誤りがないか確認するための書類です。試算表を作成し、残高などに問題がないか確認します。
決算書を作成する
試算表をチェックして会計処理に問題がないことを確認した後、貸借対照表や損益計算書などの決算書類を作成します。決算書を作成するためには、帳簿の他、株式の状況などがわかる書類が必要です。
決算書類の適切な保管方法
作成した決算書類の保管は、紙で保存する方法、電子データとして保存する方法があります。
紙で保存する場合
決算書類は、原則として紙で保存します。法人の場合、決算書は確定申告書の提出期限(事業年度終了の日の翌日から2か月以内)の翌日から起算して7年間保存しなければなりません。青色申告で欠損金額(赤字)のある事業年度や災害により欠損金額が生じている事業年度については、10年間保存する必要があります。
電子データとして保存する場合
会計ソフトや文書作成システムなど、パソコンを利用して作成した決算書は電子帳簿保存法に定める電子帳簿等保存の対象になります。紙で保存することに代えて、システム上に決算書のデータを保存できます。なお、電子帳簿保存法に適合した書類を保存するには、以下の要件を満たさなくてはなりません。
- 操作説明書やマニュアルなどのシステム関係書類を備え付けていること
- ディスプレイやプリンターなどの備え付けにより、速やかに出力できるようにすること
- データのダウンロードの求めに応じられるようにしておくこと(取引年月日・金額・取引先ごとの検索、および日付などの範囲指定による検索ができる場合は不要)
電子データでの保存の場合、紙への出力は求められません。データの保存期間は、紙での保存と同様、原則7年間(特定の場合は10年間)です。
【補足】スキャンして保存する場合
電子帳簿保存法では、紙で作成または受領した書類を電子データで保存するスキャナ保存も認められています。ただし決算関係書類は対象外なので、スキャナ保存によって決算書を電子保存することはできません。スキャナ保存は、決算書類の作成に必要な請求書や領収書などの書類の保存で用いられます。
決算書類の提出を求められた場合
決算書の提出を求められた場合に、一般的に提出すべき書類を紹介します。
金融機関
新たに融資を申込む場合や金融機関から融資を受けた金額を返済している場合に、金融機関から決算書の提出を求められることがあります。金融機関に提出する決算書類は、決算書類一式(会社法に定める計算書類を作成している場合は、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表、附属明細書)です。一般的に、過去3年分の決算書類の提出が求められます。
取引先
新規で取引を行う場合、取引先から決算書の提出を求められることがあります。取引先が決算書の提出を要求する目的は、信用リスクの評価などです。取引先から求められる決算書の範囲は、取引先の規定や取引の状況により異なります。決算書類のうち、貸借対照表や損益計算書の提出を求められるのが一般的です。提出が必要なものを確認しておきましょう。
決算書類の作成はすべての会社で必要
作成しなければならない決算書類の種類は、会社法や金融商品取引法で定められています。決算書の作成は、すべての会社において必要です。決算書は金融機関や取引先からも提出を求められることがあるため、法律に則って適切に作成しましょう。
また、計算書類の中でも、個別注記表については会社の状況に応じて記載しなければなりません。「会社計算規則」に記載内容が定められているとはいえ、とまどう場合は、中小企業庁の「中小企業会計要領」などのひな型が参考になるでしょう。一度作成すれば、次年度からはそれをもとに加筆・修正することができます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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