- 更新日 : 2025年4月23日
実現主義とは?メリット・デメリットや現金主義・発生主義との違い
会計には「実現主義」という考え方があります。他に「現金主義」や「発生主義」という考え方もあり、どれを採用して会計処理を行うかによって数字が大きく変わります。
この記事では、実現主義の考え方や会計処理上のメリット・デメリット、現金主義・発生主義との違いについて解説します。
目次
実現主義とは
実現主義とは、利益や費用の実現が確定した時点で費用を計上するという考え方のことです。金銭の授受の有無は関係ありません。例えば、4月1日に取引が決まって翌4月2日に商品を納入して請求書を発行し、代金の支払いが4月30日となる場合、4月2日時点で売掛金を計上します。
現金主義とは、現金の授受が発生した際に利益や費用を計上するという考え方のことです。先ほどの例では取引を行った4月2日ではなく、代金の支払いがあった4月30日に売上を計上します。
発生主義とは、取引が発生したタイミングで計上する方法です。4月1日に取引が成立して翌2日に商品を納入し、4月30日に入金した場合、2日に売掛金を計上して、30日に売上を計上します。
実現主義のメリット
実現主義で会計処理を行うことで、以下のようなさまざまなメリットを享受できます。
利益や費用を把握しやすい
現金主義に基づいた会計処理は、現金の授受が発生して初めて費用を計上します。したがって、利益や費用の発生を知るのは入金された後、支払った後ということになります。
一方、実現主義では利益や費用の発生が確定した時点でその費用もしくは売上を計上するため、現金主義と比較して早めに利益や費用の発生を把握することができ、資金繰りの計画や予算を立てやすくなります。
確実に発生する利益、費用を把握できる
上記のように、発生主義は取引があった時点でそれらを計上し、買掛金の支払いあるいは売掛金の回収はその後になります。
実現主義では利益や費用の実現が確定した時点でそれらを計上するため、確実に発生する(発生した)利益や費用のみを把握することができます。
掛取引の場合、債権(商品の納入や代金)を回収できるとは限りません。例えば、相手方が倒産して債権が回収不能になってしまう可能性もあります。実現主義に基づいた会計であれば、確実に実現する(実現した)利益・費用のみを把握することができます。
会計期間をまたいだ処理ができる
会計期間をまたいだ取引があった場合、発生主義では翌期の売上を計上することができません。そのため、利益や費用の実現が確実になった際に計上する実現主義で会計処理を行うことがあります。詳しくは後述します。
実現主義のデメリット
上記のメリットがある実現主義会計ですが、デメリットも少なからずあります。以下のような点も考慮して採用しましょう。
会計処理が複雑になる
実現主義では複式簿記によって会計処理を行わなければならないため、会計の知識が必要になります。人材を採用したり育成したりするコストや手間がかかり、場合によっては税理士に会計業務を代行してもらったり、帳簿をチェックしてもらったりする必要があるかもしれません。
また、複雑であるが故に計上漏れやミスなどが発生する可能性も高くなりますので、より一層注意して経理業務にあたる必要があります。
財務状況が正しく把握しにくい
前述の通り、実現主義では取引があった時点で利益や費用を計上します。帳簿上では利益が上がっていることになっているが、実際の入金は数週間~数カ月先といったケースも少なくありません。
そのため、帳簿上は黒字でも資金繰りがショートして倒産してしまう、いわゆる「黒字倒産」が発生するリスクが高くなります。実現主義で会計処理を行う場合は資金繰表やキャッシュ・フロー計算書などを作成し、会社のリアルな財務状況を把握しておくことが一層重要になります。
実現主義が適用されるシーン
国内の多くの企業では、発生主義に基づいた会計処理が行われています。また、個人事業主に関しても発生主義による帳簿の作成・税務申告が原則となっています。そのような状況の中で、あえて実現主義で会計処理を行うケースをご紹介します。
商品やサービスの提供が会計期間をまたぐとき
取引が発生して商品・サービスの提供が翌期になる場合、発生主義では売上の計上は当期になります。しかし、企業会計原則では「未実現収益は、原則として、当期の損益計算に計上してはならない。」とされています。そのため、実現主義を用いて商品やサービスの提供があったタイミングで会計処理を行うことがあります。
費用や利益の発生を認識する基準を統一する場合
費用や利益がどのタイミングで発生するのかは曖昧になりやすいのですが、以下のような基準があります。
| 認識基準 | 内容 |
|---|---|
| 出荷基準 | 商品を出荷した事実をもって実現とする |
| 納品基準(着荷基準) | 相手に納品した事実をもって実現とする |
| 検収基準 | 相手が検収完了した事実をもって実現とする |
| 役務完了基準 | サービスの提供が完了した時点で実現とする |
どの時点をもって費用や利益が実現するのかという基準を決めておき、発生主義で計上することで正しい会計処理が可能になります。
実現主義の会計処理の流れ
実現処理では利益や費用が確定した時点でそれらを計上しますが、いつ確定するかは上記のような認識基準によって決めます。
例えば4月1日に50万円の商品を出荷し、4月2日に商品が顧客に届き、代金の支払いが4月30日、納品基準で利益の発生を認識するとした場合、4月2日に売掛金50万円を計上します。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 売掛金 | 500,000円 | 売上 | 500,000円 |
そして、4月30日に売掛金が入金された際には以下のように計上します。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 当座預金 | 500,000円 | 売掛金 | 500,000円 |
実現主義と現金主義の使い分け
大規模な企業や掛取引が多い場合は、実現主義が適しています。現金主義には適切な期間損益を把握しづらい、掛取引を把握できないなどのデメリットがあり、実際に入金されていない売上や支払いが行われていない費用を計上するといった不正行為が容易でるため、そもそも税務申告では認められていません。
一方で現金主義には、実際に現金が入金された、あるいは支払ったタイミングで処理を行うためシンプルでわかりやすく、手間が少ないというメリットがあります。小規模なビジネスや掛取引がないようなビジネスには、現金主義のほうが適している場合もあります。
不動産所得と事業所得の合計額が300万円以下の小規模事業者でかつ青色申告者は、一定の手続きを行うことで現金主義による確定申告も可能です。
実現主義と発生主義の使い分け
発生主義では、取引が発生した時点で利益や費用を計上します。企業会計では、発生主義で会計処理を行うことが原則となっています。しかし、取引が発生したとしてもそれが何らかの理由でキャンセルになったり、売掛金の回収ができなかったりするおそれもあります。また、実際のお金の流れとの乖離が生じやすい、会計期間をまたいだ処理ができないなどのデメリットもあります。
特に会計期間をまたぐ取引が多い場合や、会社の財務状況を正確に把握したい場合などは、実現主義による会計処理が用いられるケースがあります。
実現主義のメリット・デメリットをしっかり把握することが重要
実現主義には将来実現する利益や費用を把握しやすい、確実に実現する利益・費用のみを把握でき、正確な経営判断がしやすくなるといったメリットがあります。また、期をまたいだ取引に関する会計処理も容易です。
一方で会計処理が複雑になる、リアルタイムな資金状況が把握しにくいといったデメリットもあります。会計処理において実現主義を採用する際には、今回ご紹介したメリット・デメリットを考慮したうえで判断しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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