• 作成日 : 2022年9月9日

屋根の耐用年数と減価償却費計算を解説

屋根の耐用年数と減価償却費計算を解説

減価償却とは、時間とともに価値が減っていくという考え方のもと、会計年度ごとに分割して経費を計上する方法です。この記事では、個人事業主や法人が、事務所として使用している建物の屋根改修を行った場合、どのように減価償却費を計算し、どう仕訳するのかを解説していきます。修繕費と資本的支出の判断基準もチェックしておきましょう。

屋根の改修時は減価償却が必要になる?

減価償却とみなされるものは、「耐用年数1年以上」「取得価額10万円以上」の固定資産であることが原則です。たとえば、木造・合成樹脂造の建築物(店舗用・住宅用)なら22年、鉄骨鉄筋コンクリート造の建築物(住宅用)なら47年です。

建物の屋根を改修した場合は、工事内容によって「修繕費」と「資本的支出」に大別されます。修繕費であれば1度にまとめて経費計上できますが、資本的支出であれば資産として仕訳し、建物の法定耐用年数に合算して、減価償却をしていく必要があります。
減価償却について、詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。

修繕費と資本的支出の違い

減価償却の必要があるかどうかを分ける、修繕費と資本的支出の違いはどこにあるのか。修繕費に該当するケースと、資本的支出に該当するケース、およびその判断基準を見ていきましょう。

屋根改修が修繕費になるケース

屋根改修が修繕費になるのは、元の状態に戻すケースです。たとえば、強風や台風、地震などの自然災害のほか、経年劣化や事故などによって、屋根が壊れてしまった場合や、雨漏りするようになった場合は修理が必要になります。

屋根本来の機能を損なっている状態から、元の状態に戻す原状回復工事であれば、仕訳は「修繕費」となり、一度にまとめて経費計上が可能です。

ただし、修繕費か資本的支出かの判断はプロでも難しいケースがあるため、判断材料として、修理箇所の写真や、修繕業者からの見積書・作業報告書などを保管しておくのがおすすめです。

屋根改修が資本的支出になるケース

屋根改修が資本的支出になるのは、元の状態に戻すだけでなく、資産の価値を上げるような工事を行った場合です。たとえば、カバー工法や葺き替えなどにより、元の屋根と比べて機能性に優れ、より長い耐久性を備えた屋根にリフォームした場合は、法定耐用年数が延びる資本的支出になります。つまり、原状回復に+αしたのであれば、資産価値を高めたことになり、資本的支出になるでしょう。

資本的支出と区分された修理費用は、建物の耐用年数に基づいた減価償却が必要になります。そのため、一度に経費計上するのではなく、定額法か定率法によって、償却費を計算していかなければなりません。

修繕費と資本的支出の判断基準

基本的な判断基準は、原状回復であるか、原状回復以上の工事(本来の価値や耐久性を増し加えるもの)かどうかです。

改修工事を行わなければ、建物が本来の機能を法定耐用年数まで満たせない状態で、改修工事によって、法定耐用年数まで耐えられるようにするのであれば原状回復で「修繕費」として処理。工事によって、法定耐用年数以上の耐久性を兼ね備えたのであれば、超過分は「資本的支出」として計上しましょう。

屋根の耐用年数

屋根の耐用年数は、改修工事でどのような素材が使われたかによって変わります。屋根の耐用年数の目安は以下の通りです。

屋根材の耐用年数

屋根材
耐用年数
メンテナンスの目安
アスファルトシングル
10~30年
10年ごと
スレート
20~30年
10年ごと
ガルバリウム鋼板
20~30年
15年ごと
50年以上
下地材補修以外不要
トタン
10~20年
10年ごと

塗装剤の耐用年数

塗装剤
耐用年数
アクリル
5~6年
ウレタン
7~10年
シリコン
8~10年
フッ素
12~15年
無機塗装
12~18年

注意しておきたいのは、上記の耐用年数は、法律で定められたものではなく、塗料メーカー等が独自に示している数字であることです。建物そのものの耐用年数は、木造や鉄骨などで、国税庁が法律によって法定耐用年数を定めていますが、屋根の素材はあくまでも目安です。資本的支出として計上する場合、法定耐用年数から耐用年数がどの程度上昇するか(何年で減価償却していくか)は、常識の範囲内で決める必要があります。

屋根の減価償却費計算と仕訳例

ここでは、屋根の改修工事を行った場合の、具体的な仕訳を見ていきましょう。仕訳は、定額法と定率法のどちらかで行っていきます。

定額法の場合

定額法とは、毎年同じ額を減価償却費として計上する方法です。定額法では、以下のように計算します。

減価償却費=取得原価×定額法の償却率

上記の計算式の「償却率」は、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」における、別表七・別表八に定められています。

たとえば、屋根の修理を行い、資本的支出が60万円だった場合を考えてみましょう。

仕訳例

借方
貸方
建築物等
600,000円
当座預金
600,000円

資本的支出60万円に、耐用年数20年の償却率0.05を適用し、1年に3万円ずつ定額で経費計上していきます。

直接法で減価償却を処理した場合

借方
貸方
減価償却費
30,000円
建築物等
30,000円

間接法で減価償却を処理した場合

借方
貸方
減価償却費
30,000円
減価償却累計額
30,000円

定率法の場合

定率法は以下のように計算します。

減価償却費=(取得原価-減価償却累計額)×定率法の償却率

定率法は、償却の初期に減価償却を多く計上する方法です。取得した設備の性能が高く、利益をより多く得られる時期に償却費の多くを計上でき、後々償却費が低減するメリットがあります。なお、定率法の償却率は、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」の別表十、別表十一に定められています。

先程と同じ例で考えた場合、償却費は以下のように推移します。

償却年
計算式
償却費
翌年度期首価額
初年度
600,000×0.112
67,200
532,800
2年目
532,800×0.112
59,674
473,126
3年目
473,126×0.112
52,990
420,136
4年目
420,136×0.112
47,055
373,081

5年目以降続いていきます。(平成24年4月1日以後に取得した建物で、耐用年数20年の場合、定率法償却率は0.112です)

仕訳例

借方
貸方
建築物等
600,000円
当座預金
600,000円

直接法で減価償却を処理した場合

借方
貸方
減価償却費
67,200円
建築物等
67,200円

※定率法を適用した初年度の場合

間接法で減価償却を処理した場合

借方
貸方
減価償却費
67,200円
減価償却累計額
67,200円

屋根改修は修繕費か資本的支出かで会計処理が異なる

建物の屋根を改修した場合、元の状態に戻す原状回復であれば「修繕費」として、年度の経費として一括計上が可能です。しかし、元の状態に戻す原状回復に+αの工事を行い、元の状態よりも資産価値が増したと判断される工事では、「資本的支出」が発生し、本来の修繕費を差し引いた差額を、減価償却していく必要があります。

資本的支出は、建物本来の耐用年数に、工事で増した耐用年数を加え算出した、新たな使用可能年数から計算します。減価償却は、定額法と定率法があるため、支払いやすい方法を選んでください。

よくある質問

屋根改修は減価償却が必要?

屋根改修を行った場合、原状回復であれば「修繕費」として一括計上ができ、減価償却は必要ありません。一方、資産価値が増したと判断される工事では、「資本的支出」が発生し、減価償却が必要になります。詳しくはこちらをご覧ください。

屋根の耐用年数は?

屋根の耐用年数は、素材や塗料ごとに目安が示されていますが、法的に定められている耐用年数はありません。屋根改修工事後は、新たな耐用年数を税理士等と協議の上、適切に判断していく必要があるでしょう。詳しくはこちらをご覧ください。


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