- 更新日 : 2025年2月19日
仕入割戻とは?会計処理、仕訳例、税務上の扱いを解説
仕入割戻とは、一定期間に多額もしくは大量の仕入れをした際に代金の一部が返還されることです。価格が事後に下がるため、仕入高から控除する処理を行います。税務上の取り扱いでは、算定基準が契約書に明示されている以外は、割戻金額の通知を受けた日の事業年度に計上しなければなりません。本記事では、仕入割戻の内容や仕入割引・値引きとの違い、仕訳例などについて紹介します。
仕入割戻とは
仕入割戻とは、商品をまとめて仕入れた場合にリベートとして代金を一部返還してもらうことです。売却する側から売上代金の一部を割り引くことを、売上割戻といいます。
商品の仕入代金の一部の割り戻しを受ける場合は価格が事後的に下がることになるため、仕入値引と同じく、仕入高から控除する処理を行う仕入高控除項目です。
ここでは、仕入割戻と仕入割引・値引の違い、仕入割戻の仕訳例を紹介しましょう。
仕入割引や値引との違い
仕入割戻と似た勘定科目に仕入割引や値引きがあります。どれも価格を引き下げるという点で共通しますが、引き下げる理由がそれぞれ異なり、会計上は区別して考えます。
仕入割引とは、仕入代金を支払期日より前に支払い、本来の期日までの期間に応じて利息に相当する額を割引きすることです。利息の性質を持ち、損益計算書では営業外収益として計上します。
また、値引とは、仕入れた商品の価格があとから差し引かれることです。値引きを受けた場合、仕入値引きを同じように仕入額から差し引きます。
仕入割戻の仕訳例
仕入割戻の仕訳を具体的に見ていきましょう。
A社がB社より商品をまとめて30万円分購入し、リベートとしてB社から10%の返金を受けた場合の仕訳は、次の通りです。
B社から10%である3万円の返金を受けた場合
仕入れたときの逆仕訳をして、仕入割戻の科目を「仕入」とすることもできます。
仕入割戻の会計処理
仕入割戻を会計処理するときには、総額主義と純額主義という2つの処理方法があります。
総額主義とは、損益計算書で費用と収益を総額によって記載することです。総額主義の処理の場合、割戻の分を仕入勘定科目の貸方に計上するため、仕入割戻の総額を確認できます。
一方、純額主義は、帳簿上は総額を記載せず相殺した利益だけを記載する方法です。表記すること自体は簡単ですが、損益計算書は総額主義が原則とされています。純額主義のように費用と収益を総額で示さず相殺してしまうと、利害関係者は取引の規模を把握できないからです。
ただし、総額主義には例外が認められています。仕入割戻もそのひとつで、総額主義と純額主義のどちらを採用するかは、会社の判断に委ねられているのです。
仕入れのリベートは仕入れの価格を抑えるために数多く利用されており、それらすべてを総額主義で記載するのは実務の負担となるため、そのような措置がとられています。
総額主義と純額主義のそれぞれで行う仕訳例を見ていきましょう。
30万円購入して仕入先から3,000円の割戻を受けた場合、総額主義による仕訳は次の通りです。
総額主義の仕訳により、仕入れと割戻の一連の流れがわかります。
純額主義による記帳では、直接仕入を減額するため、割戻を受けたときには次のような仕訳をします。
仕入割戻の税務上の取り扱い
仕入割戻の税務上の取り扱いでは、計上時期に注意が必要です。通常は、割戻金額の通知を受けた日の事業年度に計上します。しかし、割戻の算定基準が契約書に明示されている場合、計上するのは仕入れをした日の属する事業年度です。
消費税の扱いも注意が必要です。仕入時に課税事業者であれば、仕入割戻は課税仕入の対価の返還として計上しなければなりません。
一方、仕入時に免税事業者の場合は消費税が未計上であるため、仕入割戻時も消費税は考慮されないことになります。
仕入割戻を正しく把握しよう
仕入割戻とは、一定期間に仕入先から大量に商品を仕入れるなどの事情により、代金の一部を返還してもらうことであり、リベートの一種といえるものです。購入価格が後から下がるため、会計上は仕入および買掛金から控除する処理を行います。
よく似たものに仕入割引や値引きがありますが、料金を差し引く事情やタイミングが異なり、仕入割引は、記帳の勘定科目なども違います。仕入割戻は原則として総額主義で記帳することも、把握しておくとよいでしょう。
よくある質問
仕入割戻とは?
仕入先から多額または大量に商品を仕入れた際、リベートとして代金を一部返還してもらうことです。詳しくはこちらをご覧ください。
仕入割戻の会計処理のポイントは?
原則として総額主義で記載します。毎期継続適用する場合などは、例外的に純額主義とすることもできます。詳しくはこちらをご覧ください。
税務上の取り扱いは?
割戻金額の通知を受けた日の事業年度に計上します。算定基準が契約書に明示されている場合は、仕入れた日の属する事業年度に計上しましょう。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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