- 更新日 : 2024年8月8日
広告宣伝費の仕訳・勘定科目、販売促進費との違いを解説
自社の製品やサービスを宣伝する方法はたくさんあります。これらにかかる支出は「広告宣伝費」と呼ばれる勘定科目で処理することが一般的です。
ただし、広告宣伝費として間違えやすい勘定科目もあり、本来広告宣伝費としてはいけない経費を計上してしまうと税務調査等で否認されることがあります。
そこで当記事では、広告宣伝費について正しく理解できるように、その概念や他の勘定科目との違い、具体的な仕訳例などについて解説します。
目次
広告宣伝費とは?
広告宣伝費とは、会社の商品やサービスなどを、不特定多数の消費者に対して販売するために必要な、広告や宣伝にかかる経費のことです。広宣費と呼ばれることもあります。
また、会社のイメージアップを図ったりするために必要な広告宣伝や、決算広告も経費も広告宣伝費の一部です。
勘定科目における販売促進費との違いは?
勘定科目における販売促進費は、「販売費及び一般管理費(販管費)」として分類されます。広告宣伝費や販売促進費は明確な違いがわかりづらく、区分は難しいでしょう。
広告宣伝費はテレビやインターネット、チラシ、屋外広告、新聞などを通じて、製品やサービスを間接的に宣伝する経費を指します。
一方、販売促進費は「販売促進」を目的とする経費のことです。例えば、直接お客様に手渡しする試供品やノベルティ、または展示会への出店、特売セールのPOPやポスター制作などがそれにあたります。
「お客様に対して間接的に宣伝する場合は広告宣伝費」「お客様に直接会って宣伝活動を行う場合は販売促進費」として覚えておきましょう。
勘定科目における交際費との違いは?
前述のとおり広告宣伝費は、不特定多数の人に対して間接的な宣伝するための経費となります。ここで重要なのは、対象が「不特定多数」であるという点です。
例えば、得意先や仕入先の特定の人を対象として支出した場合は、広告宣伝費ではなく「交際費」にあたるのです。
個人事業主も確定申告で広告宣伝費を経費にできる?
広告宣伝費は、自社の商品やサービスなどを不特定多数の人にアピールするものであるため、個人事業主であっても必要経費になります。
確定申告では、白色申告なら収支内訳書に、青色申告であれば青色申告決算書に、広告宣伝費の金額を記載する欄があります。そこに金額を記載することで、必要経費にすることができます。
広告宣伝費以外の経費も、もちろん確定申告を行うことで必要経費にすることが可能です。その他の必要経費については、以下の記事で詳しく解説しています。こちらもご参照ください。
広告宣伝費の具体的な仕訳例
広告宣伝費に該当するかどうかは取引の内容によって決まります。そこで、広告宣伝費の具体的な仕訳例について見ていきましょう。
広告宣伝費の仕訳例「名刺の作成料金」
名刺を制作するための費用は「消耗品費」とするのが一般的です。ただし、名刺の中で商品やサービスを紹介するなど「広告」の要素を含む場合は、「広告宣伝費」とすることもできます。
デザイン会社や広告代理店に依頼して制作した場合も同様となります。
広告の目的を含む名刺を作成した費用として、10,000円を預金から支出した際の仕訳は次のとおりです。
広告宣伝費の仕訳例「ホームページの作成費用」
現在では多くの企業や個人事業主の方が、ホームページを保有しています。自社の製品やサービスの宣伝を目的とした「ホームページの作成費用や維持に関する費用」も、広告宣伝費として計上することが可能です。
ただし、販売機能や多数のコンテンツを持つような高機能のホームページの場合は、「プログラムの一種」とみなされます。その場合は無形固定資産として計上する必要があり、金額や内容によって定められた税務上の法定耐用年数などで減価償却されることが一般的です。
なお、広告宣伝費とする場合は原則、消費税の課税対象となるので注意しましょう。
例えば、「高機能のホームページ」には次のような機能があります。
- 動画の配信機能
- ネット上でのオンライン予約機能
- ネット販売や商品検索機能
- PDFなどのデータダウンロード機能
- オンラインでの決済機能
高機能に該当しないホームページを作成した費用として200,000円を預金から支出した場合は次のように仕訳を行ないます。
広告宣伝費の仕訳例「チラシの印刷費用」
自社の製品やサービスを宣伝ために作成したチラシやパンフレットにかかる費用も、広告宣伝費として計上できます。チラシの印刷費用として、50,000円を預金から支出した場合の仕訳は次の通りです。
また、納品後にチラシが余り、未使用の状態で在庫となった場合の仕訳は 「貯蔵品」として扱います。例えば、チラシの印刷をするために100,000円を預金から支出し、60,000円分を配布して40,000円分が在庫となった場合の仕訳は次の通りです。
広告宣伝費の仕訳例「新聞広告への掲載費用」
自製品やサービスの宣伝目的として、新聞広告を掲載するために発生した経費も、広告宣伝費として計上可能です。宣伝効果は見込めないものの、協賛金を募る事業者との関係構築のために協賛金を支出する場合は、交際費として処理します。
新製品を新聞広告で告知するために、100,000円を預金から振り込んだ場合は次の仕訳が行われます。
広告宣伝費を正しく計上しましょう
ここまで販売促進費の概要や販売促進費・交際費との違い、具体的な仕訳例などを紹介しました。広告宣伝費は基準が分かりにくい部分もありますが、正しく理解することが重要です。
特に大きな額の広告費を支払う場合、広告宣伝費として計上できなければ、翌年の税負担に大きな影響を与えかねません。広告宣伝費を正しく理解して、慎重に処理をしましょう。
よくある質問
広告宣伝費とは?
会社の商品やサービスなどを、不特定多数の消費者に対して販売するために必要な広告や宣伝にかかる経費のことです。詳しくはこちらをご覧ください。
販売促進費との違いは?
お客様に対して間接的に宣伝する場合は広告宣伝費であるのに対し、お客様に直接会って宣伝活動を行う場合は販売促進費となります。詳しくはこちらをご覧ください。
広告宣伝費の具体的な仕訳例は?
この記事では、ホームページの作成費用やチラシの印刷費用の仕訳例をご紹介しています。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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