• 更新日 : 2024年8月8日

売上高営業利益率とは?計算方法や業種別目安を解説

売上高に対する営業利益の割合を売上高営業利益率といいます。利益率の指標は他にもありますが、売上高営業利益率とはどのような違いがあるのでしょうか。売上高営業利益率の業種別目安、売上高営業利益率を上げる方法、売上高営業利益率がマイナスになった場合についてもあわせて解説していきます。

売上高営業利益率とは

営業利益

売上高営業利益率とは、図のように売上高のうち営業利益が占める割合をいいます。営業利益とは、次の計算で求めた利益のことです。

営業利益 = 売上高-売上原価販売費及び一般管理費

営業利益は、売上高から売上原価と販売費及び一般管理費の額を差し引いた利益のことで、本業の事業活動による純粋な利益を表します。

つまり、売上高営業利益率とは、売上に対して本業でどれくらいの利益が出ているかを示した値になります。

売上高営業利益率の計算方法

売上高営業利益率を計算するのに必要な要素は、次の3つです。

  • 売上高
    商品やサービスの提供など本業によって得た売上総額のこと。
  • 売上原価
    売上高に対する商品原価のこと。例えば小売業の場合、期首商品棚卸高+商品仕入高-期末商品棚卸高(※減耗や劣化などによる評価損がない単純計算の場合)で売上原価を算出します。
  • 販売費及び一般管理費
    販売費は商品やサービスの販売に関わる費用(広告宣伝費発送費など)、一般管理費は管理業務にかかる費用(販売費以外の本業を営む上でかかる費用)のことです。

会計期間の売上高、売上原価、販売費及び一般管理費は損益計算書から確認できます。まず、3つの要素を用いて営業利益を算出します。

営業利益 = 売上高 - 売上原価-販売費及び一般管理費

売上高営業利益率は、算出した営業利益の額と売上高を用いて、次のように計算します。

売上高営業利益率(%) = 営業利益 ÷ 売上高 × 100

 

他の利益率との違い

売上高営業利益率の他にも、利益率にはいくつか種類があります。売上高営業利益率は他の利益率とどのような違いがあるのか、それぞれ見ていきましょう。

売上総利益率との違い

売上総利益率は、売上高における売上総利益(粗利)の割合を表します。売上高総利益とは、売上高から売上原価を差し引いた利益額のことです。

売上高営業利益率は、売上総利益から販売費及び一般管理費を差し引いた営業利益をもとに計算しますので、売上総利益の方が利率は高くなります。

売上高営業利益率と異なり、売上高と売上総利益を比較することで、販売する商品やサービスの利益率の高さを把握できるのが特徴です。取り扱う商品・サービスの質や原価率が適正かどうか分析する場合などに活用できます。

売上高経常利益率との違い

売上高経常利益率は、売上高における経常利益の割合を表します。経常利益とは、営業利益に営業外収益を加算、営業外費用を減算した利益額のことです。

営業外収益や営業外費用は本業以外の財務活動(貸付金の利息受け取りや借入金の利息支払いなど)などで生じた経常的に発生する収益・費用になります。一時または突発的な収益や費用は含まれません。

売上高営業利益率は、純粋に本業による利益率をもとに計算しますが、売上高経常利益率は本業以外の経常的に発生する収益や費用を計算に含める点で違いがあります。売上高経常利益率は、企業の経営成績を把握するのに適した利益率です。

税引前当期純利益率との違い

税引前当期純利益率は、売上高における税引前当期純利益(法人税などを支払う前の当期純利益)の割合を表します。税引前当期純利益は、経常利益からその事業年度に突発的に発生した特別利益を加算、特別損失を減算した利益額のことです。

税引前当期純利益率は法人税等を除いたすべての計算を行った上での利益であるため、本業の利益を見る売上高営業利益率は異なる性質を持ちます。その事業年度における利益の規模を把握できるのが税引前当期純利益率です。

売上高当期純利益率との違い

売上高当期純利益率は、売上高における当期純利益の割合を表します。当期純利益は、税引前当期純利益から法人税等を差し引いた最終的な利益額です。

売上高営業利益率は本業の利益を見る点、当期純利益率は法人税等も考慮した最終的な利益を見る点で違いがあります。

売上高営業利益率の業種別目安

以下の表は、中小企業庁の中小企業実態基本調査の令和2年度決算実績に基づき作成した業種別の売上高営業利益率の平均値です。

業種売上高営業利益率(平均)
建築業4.02%
製造業2.69%
情報通信業4.75%
運輸業・郵便業▲0.24%
卸売業1.66%
小売業1.58%
不動産業・物品賃貸業9.35%
学術研究、専門・技術サービス業10.03%
宿泊業・飲食サービス業▲1.83%
生活関連サービス業・娯楽業▲0.31%
サービス業(その他)3.82%

※少数点第3位以下四捨五入

参考:中小企業実態基本調査 令和3年確報(令和2年度決算実績)の統計表3.売上高及び営業費用(1)産業別・従業者規模別表|中小企業庁

宿泊業・飲食サービス業、生活関連サービス業・娯楽業はコロナ禍の影響で、運輸業・郵便業はコロナ禍や燃料高騰でマイナスとなっていますが、通常時は1~5%程度が目安です。

販売数が少なく取引額が大きいビジネスモデルほど売上高営業利益率が高く、販売数が多く取引額が小さいビジネスモデルほど売上高営業利益率が低い傾向にあります。

売上高営業利益率はなぜ重要なのか

売上高営業利益率は、本業による収益力がどれくらいか、経営効率が良いか、を把握するのに重要な指標です。

例えば、業種別の目安などと比較して売上高営業利益率が低い場合は、本業での収益力が下がっていることがわかります。反対に、業種別の目安よりも売上高営業利益率が高い場合は経営効率が良いと判断できるでしょう。

なお、売上高営業利益率を見るときは、売上高総利益率と比較することも重要です。売上高営業利益率が低い原因が販売費及び一般管理費の割合が多いからではなく、売上高総利益率が低く商品やサービスの原価が高いことが原因であることもあります。

このように、売上高営業利益率は本業での利益が下がっている原因を究明するのにも役立つため、自社の経営の見直しや経営戦略を立てるのにも活用できます。

売上高営業利益率を上げる方法

企業の収益力の目安にもなる売上高営業利益率を上げるにはどうすれば良いのでしょうか。売上高営業利益率を上げる4つの方法を紹介します。

経費削減

経費削減は、営業利益を構成する販売費及び一般管理費を減少させることで営業利益額を増やし売上高営業利益率を向上させるアプローチです。

営業利益 = 売上高 - 売上原価- 販売費及び一般管理費

経費削減にあたっては、まず非効率な働き方で無駄なコストがかかっていないかの見直しを行いましょう。業務フローを見直したり、リモートワークなどの多様な働き方を受け入れたりすることで人件費などのコストを結果的に削減できることがあります。

アウトソーシングを利用したり、システムを導入して効率化を図ったりするのも方法のひとつです。書類の保管にコストがかかっている場合はペーパーレス化も検討してみると良いでしょう。

広告宣伝もあまり効果が出ていないようであれば、やり方を見直したり、他の手法を取り入れたりして時代や状況にあったものへと見直しを図ると良いでしょう。イベントやメディア出稿の他、SNSやインターネットなどを利用した広告宣伝の方法もあります。

なお、経費削減は突き詰めすぎるとかえって利益を縮小させてしまうこともありますので、注意が必要です。サービスの質が落ちるような経費削減、従業員のモチベーションを低下させるような経費削減など、経営に悪影響を及ぼすような経費削減は避けましょう。

販売量を増やす

販売量の増加は、売上高を上げることで営業利益額を増やし、売上高営業利益率を伸ばすアプローチです。

営業利益 = 売上高 - 売上原価- 販売費及び一般管理費

本業に関わる費用には、売上高や販売数に比例して増加する変動費と、売上高や販売数が影響しない固定費があります。固定費は変動しないため、販売数の増加で売上を伸ばすことができれば営業利益の増加になるでしょう。

また、販売数増加に伴う仕入数の増加で結果的に単価が引き下げられる可能性もあるため、仕入れコスト低下による売上総利益の増加も期待できます。

このように、売上高が上がれば、売上高営業利益率の上昇につながります。

なお、販売数を増やしていくためには、効果的な広告宣伝による認知度の向上、新規顧客獲得やリピート客獲得など、販売数を増やせるような施策に取り組むことも必要です。

単価を上げる

単価を上げる方法は、売上高を上げることで営業利益額を増やし、売上高営業利益率を伸ばすアプローチです。

営業利益 = 売上高 - 売上原価- 販売費及び一般管理費

単価が上がれば、同じ販売数量でも売上高が増えるため利益額の増加を期待できます。

ただし、現在取り扱っている商品の単価をそのまま上げると、顧客流出などで結果的に売上高を下げてしまう恐れもあります。

顧客が対価分の価値を十分に感じられる範囲で値上げを行ったり、値上げに伴い付加価値を付けたりなど、単価を上げても引き続き利用してもらえるような工夫をする必要があります。

利益率の高い商材に注力する

利益率の高い商材に注力する方法は、売上高、売上原価、販売費及び一般管理費全体を改善して営業利益を増やし、売上高営業利益率を伸ばすアプローチです。

営業利益 = 売上高 - 売上原価- 販売費及び一般管理費

企業が扱う商品やサービスは、営業利益率がそれぞれ異なります。どのくらいの原価やコストがかかっているのか営業利益を商品やサービスごとに計算して、個別の営業利益率を把握しましょう。

個別の営業利益率がわかったら、営業利益率の高い商品やサービスが全体の売上の何割を占めているか計算します。

商品やサービスの売上高に占める割合がわかったら、利益率の高い商材の宣伝広告に力を入れるなど、全体の売上において、営業利益率が高い商品やサービスの比率を高めていく施策を実行します。

売上高営業利益率がマイナスだとどうなる?

売上高営業利益率のマイナスは、本業で赤字が出ていることを示します。

しかし、マイナスになったからといって、直ちに経営に影響が出るわけではありません。会計上の収益や費用の計上時期と資金の流入または流出時期が異なるためです。

収益・費用の計上と資金の流れが異なるものの代表例が固定資産です。固定資産を一括で購入した場合、資金の流出時期は購入時となりますが、会計上は耐用年数にわたって償却となるため、複数期間にわたって費用に計上することになります。

そのため、手元資金があっても売上高営業利益率がマイナスになることもあるのです。反対に、売上高営業利益率がプラスであっても、売上債権の回収などがうまくいかないと黒字でも経営が厳しくなることもあります。

このように、売上高営業利益率がマイナスでも経営難に直結するとは限りません。しかし、本業でうまく利益が出ていないことから、金融機関からの融資が受けにくくなる可能性はあります。返済能力があるかどうかが重要な判断材料となるためです。

また、業種別の目安でも取り上げたように、コロナや燃料費高騰などの社会情勢の影響を受けて売上高営業利益率がマイナスに転じることもあります。

一時的な売上高営業利益率のマイナスであれば経営に与える影響は限定的なこともありますが、長期的な赤字は倒産のリスクを高めます。マイナスになったら、問題点を把握して必要に応じて改善していくことが重要です。

本業の収益力を把握できるのが売上高営業利益率

売上高営業利益率は、本業の収益力や経営効率を把握するのに適した指標です。売上高営業利益率がマイナスに転じているときは、本業で十分に収益性を確保できていないことになります。マイナスになったからといって倒産に直結するとは限りませんが、赤字が続けばリスクが高まりますので、経費削減や販売単価の見直しなどの改善を図っていきましょう。

よくある質問

売上高営業利益率とは?

売上高のうち営業利益が占める割合のことです。 詳しくはこちらをご覧ください。

売上高営業利益率の計算方法は?

営業利益を売上高で除した額に100をかけて計算します。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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