• 作成日 : 2019年10月17日

会計業務におけるエクセルの位置づけ

エクセルは非常に操作しやすい表計算ソフトであるため、会計業務に最適だと思う経理担当者も多いでしょう。しかし、真にエクセルの良さを活かすためには、実はエクセルが高いリスクを持つソフトであることも理解する必要があります。

そこで今回は、会計業務にエクセルを使う時の注意点について具体的に紹介します。

会計業務におけるエクセルの位置づけとメリット

数値データの集計や複雑な計算などを行うソフトウェアを「表計算ソフト」と呼びます。中でも、マイクロソフト社製のExcel(以下、エクセル)は、最もベーシックな表計算ソフトの1つです。
エクセルは、今や表計算ソフトの枠を超え、企業のあらゆる部署で使われる基本的なソフトウェアとなっています。そのメリットは以下の通りです。

1. 操作しやすい
エクセルは難しい初期設定が必要なく、初心者でも感覚的に操作できます。また、セル幅の変更、画像の挿入、レイアウト訂正などの自由度が高い点でも操作しやすいのが特徴です。

2. 大量のデータ処理や作業の自動化が可能
顧客名簿など大量のデータを処理する能力が高いほか、マクロ機能で作業の自動化を図れる点も大きなメリットです。それに伴い、複雑な計算を要する経理業務も簡略化できます。

3. 会計ソフトとの互換性が高い
CSVデータをエクセルで編集し、会計ソフトへの連携データを作成できます。また、会計ソフトによってはエクセル形式でデータをエクスポートできます。

これらのメリットを持つエクセルは、スタッフ間で能力差があっても業務に一定の質が保たれるので、経理業務を効率化できます。

会計業務におけるエクセルのデメリットとは?

一方、エクセルにはデメリットもあります。

1. エクセルファイルの管理が難しい
ネットワークとパソコンのローカルエリアの双方に多数のエクセルファイルがある場合、最新のファイルがどれかわからなくなる場合があります。

2. 誤って上書きや削除を行ってしまう
経理スタッフ間にスキルの差があると起こりやすいトラブルです。共有ファイルを誤って上書きすると、元の状態に戻すのが非常に難しくなります。また、削除したシートは復元できません。

3. 業務ごとに書式の異なるファイルが存在する
書式が違うファイルが散財していると情報が分断され、部門や会社全体の生産性からみてムダが多くなります。

4. セキュリティの脅威にさらされる
セキュリティの設定レベルが違うパソコンで同じファイルを取り扱う場合、セキュリティ設定レベルが低いスタッフのパソコン経由でマクロウィルスなどに感染する危険があります。

エクセルを使った会計業務ではこれらのトラブルが起こりやすく、状況によっては業務に大きな支障を生じる恐れもあります。

マクロやデータベース接続に潜むさまざまな問題点

マクロやデータベース接続に潜むエクセルの問題点についても知っておきましょう。

マクロとは?

マクロとは、面倒なエクセルの操作を自動化できる便利な機能です。
エクセルでは、「VBA(Microsoft Visual Basic for Applicationsの略)」というプログラム言語で「マクロ」と呼ばれる自動化プログラムを作成します。VBAは他のプログラム言語より簡単なので、素人でもマクロを開発できます。

しかしマクロには問題点もあります。

マクロの問題点

プログラミングの基礎を知らない人がマクロを開発すると、プログラムの構成がしっかりしていない場合があります。
その結果、開発者が担当を外れた場合にファイルが「ブラックボックス化」し、後任者がそのファイルを操作できなくなる恐れがあるのです。
また、エクセルのバージョン違いでマクロ実行ができない場合も、同じことが起こる可能性があります。
特に、請求書や領収書など、業務の根幹となる帳票にマクロを使う場合、ファイルのブラックボックス化で業務に支障が生じ、内部統制的にも非常に不都合となります。
エクセルから他のデータベースに接続すると、他のアプリケーションを利用した操作が可能となり、利用範囲は拡大されます。しかしその分ブラックボックス化のリスクも増えるため、担当者が変わる場合は必ず接続先や接続方法などの引継ぎを行う必要があります。

エクセルに頼り過ぎない効果的利用法とは?

スキルの異なる人が1つの共有ファイルを利用する場合に生じる上書きなどのリスクは、エクセル以外のソフトにもあります。しかし操作性の高さゆえの慣れから油断が生じ、利用者のリスクへの認識が乏しくなる点が、エクセルの最大のリスクだと言えるでしょう。

したがって、エクセルの利便性だけに目を向けず、ファイル閲覧者を含めた全員が安心してエクセルを使い続けられる工夫をすることが大切です。

そのためにも次のことを徹底させましょう。

・エクセルで共有ファイルを作成する際のルールを徹底する
共有ファイルを作成する際は、式や関数やセル参照には保護をかけたり、共通のセル色にしたりするなどのルールを設け、それをスタッフ全員に周知しておく。

・初心者用のエクセル利用ルールを別途に作っておく
「数式を変えない」「顧客に送る場合はエクセルファイルをPDF変換する」などです。

・顧客データを作るときは、権限設定やパスワードで管理を行う

以上のことを共通の認識とすることにより、全員がエクセルの注意点を認知しやすくなり、ファイルのブラックボックス化などのリスクを防ぐことができます。

利用ルールを徹底してエクセルを安全に使いましょう

エクセルは誰でも扱いやすい反面、経理スタッフ間でエクセルファイルやマクロに関する情報が共有されにくい欠点があります。それが原因で重要ファイルのブラックボックス化などのリスクが生じ、業務に悪影響を及ぼすのを防ぐためにも、利用ルールの作成や権限設定、パスワードの管理などを徹底させましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:岡 和恵 (税理士 / フィナンシャルプランナー AFP)

大学卒業後、2年間の教職を経て専業主婦に。その後、システム会社に転職。
システム開発部門と経理部門を経験する中で税理士資格とフィナンシャルプランナー資格(AFP)を取得。
2019年より税理士事務所を開業し、税務や相続に関するライティング業務も開始。

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