- 更新日 : 2025年4月23日
保険積立金とは?保険別に会計処理を解説!
保険積立金とは、生命保険や損害保険の保険料のうち、満期返戻金など貯蓄性がある部分の保険料を計上するための勘定科目です。貸借対照表の資産の部の投資その他資産として表示されます。
保険積立金とは
一般に、生命保険や損害保険には、死亡や傷害に備える保険部分と、契約が満期になったときに受け取る貯蓄部分があります。
支払った保険料は、保険部分と貯蓄部分に区分し、保険部分の保険料は支払保険料などの勘定科目で当期の費用として計上します。貯蓄部分は、銀行預金や金融商品などと同じ効果があると考えられることから、保険積立金などの勘定科目で資産として計上します。
保険料・保険積立金の会計処理の具体例
保険にはさまざまな種類があり、保険料・保険積立金の会計処理は、保険の種類ごとに定められています。ここでは、法人が加入する保険について、保険料・保険積立金の会計処理の方法をご紹介します。
養老保険・終身保険の場合
養老保険は老後の生活資金を準備するための保険で、貯蓄性が高い保険です。終身保険には満期がありませんが、解約すると解約返戻金を受け取ることができるため、貯蓄性があると考えられます。
法人がこれらの保険を契約する目的としては、役員・従業員の万が一の場合に備えるほか、退職金の準備があげられます。
養老保険・終身保険の保険料・保険積立金の会計処理の方法は、下表のとおり契約の形態によって異なります。
| 契約者 | 被保険者 | 満期保険金の受取人 | 死亡保険金の受取人 | 保険料の会計処理方法 | |
|---|---|---|---|---|---|
| (1) | 法人 | 役員・従業員 | 法人 | 法人 | 保険積立金(資産計上) |
| (2) | 役員・従業員 | 役員・従業員の遺族 | 役員報酬・給与(費用計上) | ||
| (3) | 法人 | 役員・従業員の遺族 | 1/2 : 保険積立金(資産計上 ) 1/2 :福利厚生費(費用計上) |
(1)満期保険金・死亡保険金は法人が受け取る場合
保険料は費用計上せず保険積立金として資産計上します。支払った保険料は、やがて満期保険金や死亡保険金として払い戻されると考えられるからです。
毎年支払う保険料は5万円、満期保険金は110万円、満期時の保険積立金は100万円である場合の仕訳例は次のとおりです。満期保険金と保険積立金の差額は雑収入として計上します。
■保険料の支払
■保険金の受取
(2)満期保険金は役員・従業員が受け取り、死亡保険金は役員・従業員の遺族が受け取る場合
保険料は役員報酬または給与として費用計上します。満期保険金や死亡保険金は役員・従業員やその遺族が受け取り、法人は受け取ることができないからです。
毎年支払う保険料は5万円、満期保険金は110万円である場合の仕訳例は次のとおりです。法人は保険金を受け取らないため、保険金受取の会計処理は行いません。
■保険料の支払
■保険金の受取
仕訳なし
(3)満期保険金は法人が受け取り、死亡保険金は役員・従業員の遺族が受け取る場合(1/2養老保険 ハーフタックスプラン)
保険料の半分を保険積立金として資産計上し、もう半分を福利厚生費として費用計上します。(特定の人だけが加入している場合は、役員報酬または給与に計上します。)
毎年支払う保険料は5万円、満期保険金・死亡保険金は110万円、満期時・死亡時の保険積立金は50万円である場合の仕訳例は次のとおりです。
■保険料の支払
■満期保険金の受取
■死亡保険金の受取
満期保険金と保険積立金の差額は雑収入として計上します。法人は死亡保険金を受け取らないため、死亡保険金が支払われた場合は保険積立金を取り崩して雑損失とします。
定期保険・長期平準定期保険・逓増定期保険の場合
定期保険には貯蓄部分がないため、定期保険の保険料は支払保険料などの勘定科目で費用計上します。
ただし、長期平準定期保険や逓増定期保険では、途中で解約したときに高額の解約返戻金が支払われることがあります。そのため、長期平準定期保険・逓増定期保険の保険料の会計処理は次のように定められています。
・保険期間のはじめの6割の期間
保険料のうち所定の割合を資産計上し、残りの部分を費用計上します。
・保険期間の残りの4割の期間
保険料を全額費用計上し、資産計上していた保険料を残りの保険期間で均等に取り崩して費用計上します。
保険料を資産計上する場合は、保険積立金勘定ではなく前払保険料勘定を使用します。
損害保険の場合
火災保険や傷害保険など損害保険の保険料は、基本的にその全額を費用計上します。
ただし、満期返戻金がある積立型の損害保険では、保険料は積立部分と危険保険料部分に分かれます。このうち、積立部分の保険料を保険積立金として資産計上します。
まとめ
法人が支払う生命保険や損害保険の保険料のうち、掛け捨てとなる保険部分については費用計上します。一方、満期保険金や解約返戻金など貯蓄部分については、資産計上することとされています。
役員や従業員の退職金の準備に保険商品を活用する場合は、保険の種類によって保険料や保険積立金の計上方法が異なります。実務にあたっては、保険会社の担当者や税理士などの専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。
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・締め日がポイント|退職時に損をしないための税金と社会保険料
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よくある質問
保険積立金とはどのような場合に使う?
一般に支払った保険料は保険部分と貯蓄部分に区分し、その貯蓄部分を資産として計上する際に保険積立金などの勘定科目を使います。詳しくはこちらをご覧ください。
保険料・保険積立金の会計処理はどのように行う?
保険にはさまざまな種類があり、保険の種類ごとに定められています。詳しくはこちらをご覧ください。
法人が養老保険・終身保険を契約する目的は?
役員・従業員の万が一の場合の備え、退職金の準備などの理由があります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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