- 更新日 : 2025年2月20日
連結納税は得か損か?
連結納税とは、一企業ではなく、その企業が属するグループ全体に対して、法人税が課税される制度です。この制度を用いると、企業グループ内の各企業の黒字と赤字を通算して、「企業グループ=ひとつの法人(納税単位)」として扱うことができます。ここでは、連結納税の基本的な事項を踏まえて、この制度を用いることにより得になるケース、損になるケースを解説します。
目次
連結納税とは
連結納税とは、企業グループに属する個々の企業に対してそれぞれ別々に課税するのではなく、全体をひとつの法人とみなして法人税を課税する制度です。企業グループ内の個々の企業の経営が、実質的に一体化している場合には、連結納税を採用した方が、実態に即した課税が行われると考えられています。
連結納税の適用法人の範囲
連結納税が適用される法人とは、実質上、ひとつの法人(納税単位)とみなしうるほどに、経営が一体化している企業グループのことです。これは、親会社が子会社の発行済株式を100%保有している場合にのみ当てはまるもので、子会社のうち、親会社に発行済株式を100%保有されていない会社が含まれる企業グループは、連結納税の適用範囲には該当しません。これにより、子会社の株式を保有する少数株主を保護するものとなっています。
連結納税の適用方法
連結納税の適用を受けるときには、その事業年度が始まる日の前日から3ヶ月前までに、企業グループ内のすべての企業の連名で、「連結納税承認申請書」を納税地の所轄税務署長を経由して国税庁長官に提出します。また。連結子法人となる法人は「連結納税の承認の申請書を提出した旨の届出」を納税地の所轄税務署長に提出します。
連結納税が適用されるかどうかの処分は事業年度の開始の日の前日までにくだされます。承認がおりた場合には、通常、継続的に連結納税が適用されることとなり、やむを得ない事情があるときのみ、適用を取り止めが承認されますが、このときは事前に国税庁に手続きする必要があります。
連結納税の主体とは
連結納税により法人税の申告を行うのは親会社で、企業グループ全体の所得を一括して管理し、申告・納税を行います。ただし、子会社にも連帯納付責任があるため、親会社が納税義務を果たさない場合は、親会社に代わって子会社が行わなければなりません。
親会社が連結所得や連結納税を計算するためには、子会社は必要な資料を提出します。同時に、税務署への提出書類もあり、個別の所得や欠損額に関する「個別帰属額」を提示しなければなりません。なお、地方税は、連結納税ではなく一企業ごとに課税されます。地方税の申告や納税のためにも、子会社は申告資料を準備しておくことが重要です。
連結所得金額と連結税額の計算方法
連結所得金額は、親会社、子会社すべての所得金額を合算したものになりますが、企業間の取引の譲渡損益を繰延するなどの調整を加えたうえで、最終的な金額を計算します。
また親会社、子会社それぞれの所得や欠損金額をもとに、納税額を配分することになります。具体的には、以下のように求められます。
連結所得金額×税率-各種の税額控除=連結税額
会社の資産は「時価評価」で行う
連結所得金額や連結税額を計算するとき、グループ内の企業間では、資産の譲渡を行うなど、さまざまな取引が行われます。このときの取引において、会社の資産は、基本的に「時価評価」で計算されます。
そこで、固定資産や金銭債権などの資産について、帳簿価額がその会社の資本などの金額の2分の1に相当する金額、あるいは1,000万円以上のものは、時価評価による取引となります。
また、時価評価で行われたグループ間の資産の譲渡等は、グループ内部での取引であるため、その譲渡損失は譲渡時に認識せず、その資産が除却や再度売却された場合等まで繰延処理が行われます。
連結納税が得になるケースは
連結納税を利用すると、企業グループ内の損益通算が可能となるため、さまざまなメリットがあります。例えば、以下のようなケースでは、連結納税が有利になる可能性があります。
連結納税が損になるケースは
一方で、連結納税が必ずしも企業グループにメリットをもたらさないこともあります。例えば、事務処理の規模が大きくなり、その負担が増大することもデメリットのひとつで、これは適用を取り止める「やむを得ない事情」として認められています。
その他のデメリットには、繰越欠損金が切り捨てられる場合がある、子会社の含み益に対して課税される可能性があるなどが挙げられます。
まとめ
今回、見てきたように、企業グループは、グループ内の各企業の損益を通算して課税する「連結納税」という制度を利用することができます。
ただし、得になるケースと損になるケースがあります。利用するまえに自社においての状況を確認することは必要です。まずは、基本的な事項についてよく知っておくことが大切です。
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