- 更新日 : 2024年8月8日
法人税で「繰延資産」を節税に活用できていますか?
法人税を確定申告するときに、繰延資産を上手く利用すると節税効果があることをご存知でしょうか。
繰延資産には、会社法上や税法特有のものなどさまざまな費用があり、支出の効果が及ぶ期間にわたって繰り延べることができるのです。
そうすると、法人税の軽減につながります。
ここでは、繰延資産の定義や種類、償却方法や期間、法人税の節税対策について解説します。
繰延資産とは
繰延資産を活用すると、法人税を減らすことができます。
「繰延資産」とは、必要経費として支出された金額のうち、翌年度以降の負担となるべき分は、当期だけの負担とせずに一時的に繰り延べることを認められている資産のことです。
支出の効果が1年間以上に及ぶことが期待されており、その効果の期間にわたって配分されます(これを「償却」といいます)。
具体的には、次のようなものとなります。
会社法上の繰延資産
税法特有の繰延資産
・会社が利益を得るための公共的施設、または共同的施設を新設したり、既存のものをより良くしたりするために支出する費用
(例:公共的施設とは、道路、堤防、護岸のための施設、駅への地下道などをいい、共同的施設とは、商店街の共同アーケードや日よけなどをいう)
・会社の資産を借りたり、使用したりするための権利金や立退き料、その他の費用
(例:会社の資産とは、建物や電子計算機などの機器をいう)
・サービスや情報の提供を受けるための権利金、その他の費用
(例:サービスや情報とは、製品の製造方法や技術実施に関する知識といったノウハウなどをいう)
・広告宣伝用資産を販売代理店に贈与したことによる費用
(例:広告宣伝用資産とは、看板や陳列棚、モデルハウスなどをいう)
・その他、会社が利益を得るために支出する費用
(例:出版権の設定、同業者団体などへの加入金、職業運動選手などの契約金などをいう)
法人税を確定申告するときのポイント
法人税の確定申告をするときには、会計上の益金(収益)と損金(費用)を考慮して加減調整をします。
1年以上にわたって配分する繰延資産は償却の方法も期間もさまざまであるため、会計上の損益を調整するのに都合がよく、法人税の軽減につなげることができます。
繰延資産の償却について
繰延資産の償却には、3つの方法があります。
ただし、繰延資産の償却費が「損金」として算入されるのは、繰越限度額になるまでの金額を「費用」として計上したときだけです。
任意償却
会社法上の繰延資産を対象とし、好きなときに好きなだけ償却することができます。
償却限度額は帳簿上の残存価額です。
均等償却
税法特有の繰延資産に対して行うもので、償却限度額は以下の計算式で算出します。
繰延資産の額×当期の月数÷償却期間の月数
少額繰延資産
均等償却を行う繰延資産のうち、その支出額が20万円未満のものは、その支出が生じた事業年度にその全支出額が損金に算入されます。
繰延資産の償却期間について
会社法上の繰延資産は任意償却のため、実質上、償却期間はありません。
一方で、税法特有の繰延資産の償却期間は、次のようになります。
・一定の契約をするに当たって支出した費用は、その契約期間を基準として算定した期間
さらに、法人税法の基本通達によって定められている償却期間には、次のようなものがあります。
・上記以外の公共的施設の場合は、施設の耐用年数の40%に相当する年数
・自社でも使用することを念頭に、建設などの費用を支出した共同的施設の場合は、施設の耐用年数の70%に相当する年数、土地の取得に使われた費用は45年
・商店街のアーケードや日よけなど、自社を含めてみんなで使用するものに支出した場合は、5年
・会社の資産や機器などを賃借したり、使用したりするための権利金、立退き料、更新料の場合は、5年
・ノウハウの頭金などの場合は、5年
・看板や陳列棚などの広告宣伝用資産を贈与したことによる費用の場合は、その資産の耐用年数の70%に相当する年数
・スキー場のゲレンデ整備費用の場合は、12年
・出版権の設定による対価の場合は、契約に定める存続期間
・同業者団体等の加入金の場合は、5年
・職業運動選手等の契約金の場合は、契約期間
(参照:第2節 繰延資産の償却期間|国税庁)
このように、繰延資産を上手く利用すると会計上の節税効果を高め、法人税を軽減することができるのです。
繰延資産の定義や種類、償却方法や期間に関する正しい知識を身につけ、賢い法人税の確定申告を行いましょう。
関連記事
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国税庁|繰延資産
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