- 更新日 : 2024年8月13日
売掛債権とは?未収入金との違いや管理・回収方法までわかりやすく解説
事業をしていく上で重要となるのが、売掛債権です。せっかく売上をあげても、売掛債権をしっかり管理しておかないと、キャッシュが不足するなどの事態に追い込まれる可能性があります。
そこで、ここでは売掛債権の内容や管理・回収方法についてわかりやすく解説します。
売掛債権とは
売掛債権とは、品物の販売やサービスの提供をした会社が、取引先や顧客から代金の支払いを受ける権利のことです。売上債権と呼ばれることもあります。
売掛債権は代金を受け取ることが出来る権利のため、会計上は資産とみなすことができます。そのため、売掛債権を担保として銀行からの借入れを行なうこともできます。勘定科目としては、資産の部の流動資産に区分され、売掛債権で手形を保有しているときは受取手形、保有していないときは売掛金に分類されます。
売掛債権には行使できる期限が定められており、その期限までに代金支払いの請求を行わないと、権利を行使することができなくなるケースがあります。売掛債権の時効は、契約の形態や役務の提供など債権の種類によって変わってきます。
なお、時効が近づいてきた場合に、時効の中断をすることができます。支払い誓約書などへの署名捺印の要求などにより、支払いの承認を行なってもらうことで時効を中断できます。
売掛債権の種類
売掛金
売掛金とは、ものの販売など売上の対価として将来的に金銭を受け取る権利のことです。売上にかかる債権という意味で、受取手形と同じく売上債権に分類されます。経理上、販売時に手形や現金での受け入れがない、掛取引で使われる勘定科目です。ツケや仮取引をイメージすると分かりやすいかもしれません。
売掛金は、手形のように証書が発行されるわけではないため、信用がないと成り立たないことから、信用取引にも区分されます。簿記の実務では、取引が発生した時点で仕訳をする発生主義ではなく、取引により相手方に商品などが引き渡された時点で売掛金の仕訳を行うのが原則です。これは実現主義とよばれています。
売掛金が多い業界は卸売業、サービス業、製造業などで、幅広い業種において経理上の勘定科目として使われています。
受取手形
受取手形も売掛金と同じように、ものの販売などの売上の対価として将来的に金銭を受け取る権利のことです。売掛金と違う点は、相手が発行した証書(約束手形など)を受け取ることです。取引をしている相手から受け取る約束手形や為替手形のことを受取手形といいます。
受取手形には支払日が設定されており、設定された支払期日に、手形の額面金額を金融機関で受けとります。また、期日前に手数料を支払い現金化することもできます(手形割引)。
売掛金と未収入金の違い
未収入金は、営業活動以外の取引に関して、金銭の回収ができていない金銭債権のことです。すでに取引が生じたもので、代金の回収ができていないという意味では売掛金と同じです。
しかし、売掛金が営業活動における売上によって発生するものであるのに対して、未収入金は営業活動以外で発生するものです。未収入金の例は、本業以外で発生した土地や建物の売却代金、有価証券の売却代金のうち、回収できていないものなどです。
売掛債権の請求・管理
売掛債権は売掛金、受取手形など債権の種類(勘定科目)にわけて、種類ごとに管理します。売掛金なら「売上台帳」「売掛帳」といった帳簿、受取手形なら「受取手形帳」を作成し、請求書の発行などによる請求の都度や入金・回収の都度に記載し、管理します。
売掛債権の時効
売掛債権の時効は、2020年3月以前に発生したものと、2020年4月以降に発生したもので異なります。2020年3月以前に発生したものは、宿泊料・飲食代金などなら1年、建築代金や工事代金などなら3年と、売掛金の内容に応じて時効が決まっていました。しかし、令和2年の民法改正により、2020年4月以降に発生した売掛債権の時効は、次のいずれか早いほうに統一されました。
- 債権者が権利を行使することができることを知ったとき(主観的起算点)から5年
- 債権者が権利を行使することができるとき(客観的起算点)から10年
一般的に売上発生時には、債権者(売り手)、債務者(買い手)ともに契約内容を知っていることから、時効は主観的起算点の5年となることが多いです。
売掛債権の回収方法
得意先と掛取引を始める際、あらかじめ決めておかなければならないのが「回収方法」です。
売掛金の回収方法としては、取引先と直接会って回収する「現金による回収」や「受取手形による回収」と、取引先と直接会わずに回収する「銀行振込による回収」が一般的です。
受取手形の回収方法としては、期日に銀行に受取手形を持ち込み取り立てを依頼し「預金」として回収する方法や、手形割引による回収方法などがあります。
売掛債権を活用した資金調達方法
上述した一般的なもの以外の回収方法で、最近増えているのが「ファクタリング」です。ファクタリングとは、売掛債権を売却して回収する方法のことです。
ファクタリングでは、手数料を支払うことで、回収期限前に売掛債権を現金化することができます。そのため、すぐに資金が必要な場合の資金調達手段として、特に中小企業や個人事業主を中心に利用されています。
ファクタリングには大きく分けて、自社とファクタリング会社の2者間で行う「2社間ファクタリング」と、自社とファクタリング会社、取引先の3者間で行う「3社間ファクタリング」があります。
最近では、審査から入金まで即日で行うファクタリング会社も増えています。ただし、手数料の支払が必要となるため、どうしてもすぐに資金が必要な場合のみ利用するなど、賢く売上債権の管理・運用をしていく必要があります。
売掛債権を正しく管理し、資金繰りを改善しよう
売掛債権の管理は、事業をする上で基本的な作業のひとつです。しかし、きちんと管理しないと資金繰りが悪くなり、支払いができないなど、会社に悪影響を与えてしまいます。
売上債権の管理方法や回収方法をしっかりと理解し、正しい管理をすることが、正しい経営判断や事業を継続するために必要不可欠といえるでしょう。
よくある質問
売掛債権とは?
品物の販売やサービスの提供をした会社が、取引先や顧客から代金の支払いを受ける権利のことです。
未収入金との違いは?
売掛金が営業活動における売上によって発生するのに対して、未収入金は営業活動以外で発生します。
売掛債権の回収方法は?
現金による回収や受取手形による回収、銀行振込による回収が一般的です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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