- 更新日 : 2025年2月20日
使途不明金とは?発生時の注意点や使途秘匿金との違いを解説
日々適切に会計処理を行っているつもりでも、法人税法上の使途不明金が発生することがあります。税務調査で使途不明金が発覚して指摘を受けた場合は損金算入ができず、納めるべき法人税額が増えるかもしれません。この記事では、使途不明金の意味や使途秘匿金との違い、使途不明金が発覚した際の注意点、使途不明金を発生させないための対策について解説します。
目次
使途不明金とは
使途不明金とは支出の目的がわからず、何に対して支出したものなのか不明な金額のことです。
使途不明金は法人税法上の概念であるため、会計上は使途不明金ではなく、交際費や雑費などとして仕訳をします。
使途不明金は領収書がないなどの理由で生じる金額で、事業との関連性を証明できないと法人税法上の損金(会計上の費用に相当するもの)に算入できません。
使途不明金と使途秘匿金との違い
使途秘匿金とは、法人が支出した金銭について、相当の理由がなく帳簿に相手方の氏名などが記載されていないもののことです。
使途不明金は単に支出の内容がわからない支出を指しますが、使途秘匿金は明らかに支出の内容を隠す目的で行われた支出を指します。
使途不明金は、原則的に損金に算入できません。内容が明らかでない支出を費用と認めるのは適切でないためです。
使途秘匿金については法人税とは別に、使途秘匿金の額に対して40%の課税が行われます。不正な支出や違法な支出を抑制することが目的です。
使途不明金が発覚するタイミングとは
使途不明金が発覚しやすいタイミングは税務調査です。税務調査は売上が大きく伸びたタイミングなど、変化があったときに行われることがあります。法人の場合は、数年から10年に一度のペースで税務調査が入るといわれています。
税務調査で使途不明金が発覚しやすいのは、対象期間の帳簿書類の内容の確認や反面調査といって、相手先の企業も含めた調査が行われることがあるためです。調査により帳簿書類に疑いのある部分が洗い出され、使途不明金が発覚することがあります。
使途不明金が発生した時の対応方法や注意点
使途不明金があることがわかったらどうするべきか、発覚したときの対応や注意点について紹介します。
支出の詳細を確認する
使途不明金が発覚した際には、ただの記載漏れなのか、内容がわからない費用なのかを調査します。領収書や請求書がない場合は、メモ書きなど使途不明金の内容がわかるものが残っていないか探しましょう。関連する書類が見つかれば事業との関連性を証明でき、帳簿に適切に記載できます。
損金不算入の扱いになる可能性がある
使途不明金の妥当性や事業との関連性を証明できず、税務調査で指摘を受けた場合は、損金不算入扱いになる可能性があります。会社で支払うべき費用だったのか、何を目的にした費用だったのかが不明なためです。
損金不算入の扱いを受けると法人の所得金額が増えるため、納めるべき法人税額も増えます。過去の使途不明金について税務調査で指摘を受けた場合は、修正申告も必要です。過去に損金に算入していた使途不明金が損金不算入扱いとなるため、不足する税金を納めなければなりません。
課税負担が重くなる可能性がある
税務調査で、使途不明金の指摘にとどまらず、目的も支払先も不明で故意に内容を隠していると判断された場合は、使途秘匿金と認定される可能性も考えられます。前述のとおり、使途秘匿金と判断された場合は、使途秘匿金の額の40%を法人税に加算して支払わなければなりません。
使途秘匿金と判断されなくても、証拠隠滅や水増しなどが疑われた場合は重加算税などが課されることもあります。
使途不明金を発生させないためには
使用不明金を発生させないために何ができるか、日頃から心がけたい対策を紹介します。
書類の管理を徹底する
本来は使途不明金に該当しない支出であっても、領収書や請求書などの書類が紛失したことで内容がわからなくなることも考えられます。
書類の紛失による使途不明金の発生を防ぐには、書類の管理を徹底することが重要です。日付順や仕訳順など、領収書や請求書はすぐに参照できるようにファイリングして、紛失が起こらないよう適切に保管しましょう。
紙で保存する代わりに電子データとして保存するのも有効です。電子帳簿保存法に規定されるスキャナ保存などの一定の要件を満たすことで、電子データのみの保存も認められます。紙を紛失しても電子データで内容を参照できるため、紛失や破損・汚損を防ぐことができます。
取引時に詳細を記録する
取引の際に、詳細を記録しておくことも重要です。領収書の発行を受けても、必要な情報が不足している場合もあります。領収書にメモ書きすることに問題はないため、領収書の裏や空白などに誰と何人で飲食をしたのかなど、詳細を記載して保管しておきましょう。
取引から時間が経過すると記憶が薄れてしまうため、できるだけ早期に記録を残しておくことをおすすめします。また、お中元などで一括して注文を行った場合は、配布先のリストを別に作成しておくと後で内容を調べやすくなります。
使途不明金は発生させないように対策しよう
使途不明金とは、支出した日付や金額などはわかっているものの、何のための支出なのかが不明なもののことです。
使途不明金が発覚しやすいタイミングは税務調査です。税務調査で使途不明金との指摘を受けると損金不算入となり、過去にさかのぼって不足する法人税額を納めなければならなくなることもあります。また、使途秘匿金として判断されれば、使途秘匿金の額の40%を法人税に加算して支払わなければなりません。
税務調査で使途不明金が発覚したときには、資料が紛失しているなどの理由で対応できない可能性もあります。普段から書類は適切に管理し、取引時に詳細を記録しておくなどして、使途不明金が発生しないよう心がけましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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