起業したらいつ税理士をつける? 契約タイミングの目安は「1年間の売上」

読了まで約 4

起業した方から、「どのタイミングで税理士をつけたらいいですか?」と質問されることがあります。その質問に答える前に、税理士紹介サービスを手掛ける私がまずお伝えしているのは「税理士をつける目的」です。

そもそも税理士にお願いできることとできないことを理解しておかないと、「なんとなく顧問契約をしたけど期待していたものと違った」と物足りなくなり、報酬の支払いに負担を感じるようになるでしょう。

今回は税理士をつける目的と、顧問契約のタイミングの目安をお話しします。(執筆者:タックスコム代表取締役 山下健一)

顧問税理士をつける2つの目的

起業間もない方にぜひ知ってもらいたいのですが、顧問税理士をつける目的は2つあります。

1つ目は、合法的な手段で会計や税務処理をし、後々のリスクを最小限に抑えるため。
2つ目は、税務調査が入ったときに、会社側の立場に立って守ってもらうため。

会社設立当初は様々な手続きや税務署への提出物などが多く、細々と疑問が出てくるでしょう。全部税理士にまかせたい気持ちにはなりますが、その疑問の大部分はネットで調べればすぐに解決できるでしょう。起業したてでほとんど売上が無いにも関わらず、一時的な疑問を解消するために顧問税理士をつけるのは無駄な経費と言えます。

また、税理士に売上を上げるための経営的な相談をするのも間違えています。税理士はあくまでも会計・税務の専門家であって、経営コンサルタントではありません。以前の記事で、税理士に依頼できることを詳しく書いているのでぜひ参考にしてみてください。

>>「税理士が何も提案しない」? 税理士にお願いできることは“3つ”

税理士に資金調達の相談をしたい場合は…

資金調達の段階から相談に乗ってもらいたい方もいるでしょう。金融機関とのパイプがある税理士もいますが、パイプがあるからと言って融資の枠が広がったりはしません。ただ、審査までの流れが早くなることはあります。

そのため、事業計画書の段階から税理士にアドバイスをもらうのはアリですが、あくまでも審査までの手続きのスピードが早くなるだけだと心得ておきましょう。過度な期待は禁物です。

もちろん、個人投資家やベンチャーキャピタルからの出資がないと実現できない事業モデルもあるでしょう。そうなると税理士のアドバイスも必要になりますが、資金調達が不要なケースもあるので、本稿ではその場合の説明を割愛します。

顧問税理士をつける目安は「1年間の売上」

では、どのタイミングで税理士をつけるといいのでしょうか。

私が提案している目安は、1年間の売上が1,000万円を超えているかどうかです。1年間の売上が1,000万円未満の場合、顧問税理士をつけても、そのメリットより報酬の支払いが負担に感じるでしょう。

「会計の知識がない場合はどうすれば?」と心配する方もいますが、実は管轄の税務署に行けば無料で相談に乗ってもらえます。一般的に売上が1,000万円に満たない場合は、税務処理もシンプルです。会社の存続を揺るがすような致命的なミスが起こる確率は限りなく低いと言えます。税務署での相談でまかなえそうな場合は、無駄な経費を削ることをおすすめします。

税務調査のリスクは…

また、税務調査のリスクですが、税務署は規模が大きい法人や、不正発見率が高そうな業種、過去に不正を働いた個人・法人などを優先に調査します。売上が1,000万円に満たない場合は、急に売上が激増して税務署に注目されたり、虚偽の申告をして怪しまれたりしない限り、税務調査が入る確率は低いでしょう。とはいえ万が一に備えたいという方は、税理士との顧問契約を検討してみてください。

余談ですが、どうせバレないだろうと不正な申告をする人がいるものです。くぎを刺していても「売上を誤魔化して申告したら税務署が入った」「何年も申告せずにいたら税務調査が来た。どうすれば……」などと問い合わせが来ます。そうなってからでどうしようもありません。多額の罰金(重加算税や不納付加算税、延滞税)を科せられ、事業の継続自体が困難な状態になります。

私がある社長と面談をしていたところ、その方が「自分の知り合いもバレていないし、少しぐらいの不正は見つからない」と言いました。「もし脱税をしているなら必ず見つかりますよ!」とその方に言いましたがその社長は不正を続けていたようで、その後マルサの調査が入り、精神的に追い込まれボロボロになっていきました。どんなに売上を上げるのが得意な経営者でも脱税は必ず見つかります。これは私が10年以上、税理士と経営者の間に入って仕事をしてきて言い切れることです。

まとめ

年間売上が1,000万円を超えるまでは、会計もシンプルかつ税務調査の対象になる可能性も低いため、自分で税務署に相談に行ったり、ネットで調べたり、クラウド会計を活用したりして、なるべく経費を抑えることをおすすめしました。

税理士と顧問契約をせずに自分で申告しようと思った方は、「売上を誤魔化さない」「必ず申告する」ことを心に留めて事業に取り組んでいきましょう。

山下健一氏の執筆記事一覧

■2019年4月24日掲載:
「親身な税理士」を見極めるポイント。報酬の安さで決めるのはハイリスク

■2019年3月28日掲載:
“良い税理士”の評判がネットで出回らない理由 どこで口コミ得られる?

■2019年2月4日掲載:
「税理士が何も提案しない」当然の理由 上手に付き合うコツは?

■2019年1月8日掲載:
納税額も変わる? 税理士によってサポート内容は“ここまで違う”

■2018年12月13日掲載:
“良い税理士”を見極めるたった一つのポイント 「近所」「紹介」の落とし穴も

※掲載している情報は記事更新時点のものです。

執筆:山下 健一(やました けんいち)

株式会社タックスコム 代表取締役 / 社団法人 日本税理士紹介協議会 理事長

会計の実務経験を活かし、税理士紹介サービスを提供中。10年で1万件以上の相談実績がある。執筆した書籍『税理士に顧問料を払う本当の理由』は、発売から1年以上経過した今でもAmazonカテゴリ「税理士」で上位をキープ。

■著書『税理士に顧問料を払う本当の理由
■1000名の面談済み税理士の中から、ピッタリの税理士を無料で紹介してもらえるサービス「全国税理士紹介相談所



関連するマネーフォワード クラウドシリーズはこちら
マネーフォワード クラウド会計(法人会計ソフト)



「マネーフォワード クラウド」シリーズのサービス資料