法人税の課税対象と時価会計の関係

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近年、法人会社による金融投資が増加する傾向にあります。そこで金融取引の実体を財務諸表に色濃く反映させるために、金融商品を時価で会計処理する時価会計が採用されました。

しかし、会計上の処理と法人税法上の課税対象の評価が異なる金融商品があるため、企業側は決算時に法人税の計算をする際、差額を調整する必要があります。

金融商品とは

金融商品とは、企業が所得を得るために活動していく上で発生する「金融資産」や「金融負債」のことをいい、課税対象になります。金融商品は、市場での公正な評価額である「時価」または合理的な根拠に基づいて算出された公正な評価額をもち、その「時価」は変動し、「時価」により売却できるものとされます。

・金融資産には、現金預金や売掛金、貸付金、受取手形、株式や公社債、ゴルフ会員権などの有価証券、および先物取引やオプション取引、スワップ取引における債券などの金銭で回収が可能なものが含まれます。

・金融負債には、買掛金や借入金、支払手形、資金調達のために利用される社債、および先物取引やオプション取引、スワップ取引における債務などの、近い将来、金銭で支払いに使われるものが含まれます。

先物取引オプション取引、スワップ取引などの取引は、「デリバティブ取引」といわれています。金融資産や金融負債の両方から数種類混合して使う複合金融商品も課税対象となる金融商品に含まれます。

時価会計が採用された背景

金融取引で利用される技術の発展やインターネットの急速な普及によって、企業の金融投資が大幅に増加しました。これまでの金融商品の「取得原価」を元に処理する会計の基準では、財務諸表が金融取引の実体を反映できない可能性が出てきました。

「取得原価」を元に処理する会計の基準では、金融商品の「時価」の変動による「含み損益」を把握することが困難でした。そのため、「時価」を用いて金融商品を会計処理する金融商品会計が採用され、すべての会社で課税対象となったのです。

会計上の評価と法人税法上の評価の違いはなぜ生じるのか?

法人税法と企業会計ではその目的が異なるために評価上の違いが生じます。法人税法は適正な課税所得の計算に基づく法人税額の計算を目的とし、企業会計は、投資家・債権者等の利害関係者への適正な財政状態及び経営成績を明らかにすること目的としております。
この目的の違いにより、会計上の収益及び費用と法人税法上の益金及び損金に差異が生じます。
法人会社はこの差異を決算時に調整し、申告することになります。会計上の利益から差額分の調整をすることを「決算(申告)調整」といいます。

会計上の評価と税法上の評価の損益は課税対象?

時価評価を行う金融商品会計が義務化されたことに応じ、法人税の計算でも評価する際に生じる損益が「益金」または「損金」として課税対象になりました。会計上の評価と税法上の評価の差異が生じるものに有価証券があります。

有価証券は、企業がそれを保有する目的によって子会社株式および関連会社株式や満期保有目的の債券、売買目的有価証券、その他有価証券に分けられます。それぞれの目的によって保有期間も異なり、有価証券が及ぼす影響も保有する目的によって変わるため、目的別に異なる評価をすることになります。

売買目的有価証券

売買目的有価証券は、将来の価値の変動により証券を売買することで利益を出すことが目的の有価証券のことを指します。

会計上、法人税法上ともに、売買目的有価証券の評価額は「時価」で評価され、課税対象である評価で生じた損益も「営業外損益」として処理されるので、会計上の評価と税法上の評価の差異は存在しません。なお、「営業外損益」とは、企業の本業以外の活動である投資活動や財務活動で得た損益のことをいいます。

満期保有目的の債券

満期保有目的の債券は、満期まで所有する目的で保有する有価証券のことをいいます。

会計上、法人税法上ともに、満期保有目的の債券の評価額は原則として「償却原価」で評価され、会計上の評価と税法上の評価の差異は存在しません。

子会社株式および関連会社株式

会計上、法人税法上ともに、子会社株式および関連会社株式の評価額は原則として「取得原価」で評価され、会計上の評価と税法上の評価の差異は存在しません。

その他有価証券

その他の有価証券は、売買目的有価証券や満期保有目的の債券以外の有価証券のことをいいます。その他の有価証券の場合、会計上と法人税法上で評価額が異なります。

会計上は、適正な市場価格がある場合は「時価」で評価され、評価で生じた損益は税務調整後の値が純資産に加えられますが、適正な市場価格がない場合は「取得原価」または「償却原価」で評価されます。一方、法人税法では、適正な市場価格がある場合もない場合も、「取得原価」で評価されます。

まとめ

会計上の処理と法人税法上の課税対象の評価に差異があるものとそうでない金融商品が存在することに注意して、法人税の計算をする際は正しい税務調整を心がけましょう。

参考:
有価証券の評価損が認められる場合/国税庁
(償還有価証券に係る調整差損益の計上)/国税庁
法人税法における有価証券の時価評価―その理論的根拠と拡大可能性―/国税庁

監修:三井 啓介 (公認会計士 / 税理士)

税理士法人ゆびすい
ゆびすいグループは、国内8拠点に7法人を展開し、税理士・公認会計士・司法書士・社会保険労務士・中小企業診断士など約250名を擁する専門家集団です。
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