- 更新日 : 2025年9月9日
償却資産申告書の作成を税理士に依頼できる?費用や流れも紹介
償却資産申告書とは、企業や個人事業主が所有する償却資産を自治体に申告するための書類です。実は申告書の作成から提出まで税理士に依頼できます。
実際に税理士に作成を頼もうと検討している人の中には「どのくらいの費用がかかる?」「依頼後の流れを把握しておきたい」と考えている人もいるでしょう。
そこで本記事では、償却資産申告書の作成を税理士に依頼する場合の費用相場や、作成依頼から納税までの流れなどをわかりやすく解説します。
目次
償却資産申告書とは?
償却資産申告書とは、法人や個人事業主が所有する償却資産について地方自治体に申告するための書類です。地方自治体側が固定資産税や償却資産税を正しく計算できるように申告するため、確定申告書のように税金の計算を行う必要はありません。
償却資産申告書は地方税法の第383条にて提出が義務付けられているため、提出が遅れたり提出し忘れたりすると過料が科される場合があります。提出期限は1月31日です。
ただし、償却資産として申告の対象となっている資産を所有していない場合は、申告する必要はありません。
申告の対象となる償却資産
申告の対象となる償却資産を、以下の表にまとめました。
構造物 | 舗装路面、庭園、門・塀・緑化施設などの外構工事、看板や広告塔など、ゴルフ練習場の設備、受変電設備、予備電源設備、その他建築設備、内装・内部造作など |
---|---|
機械・装置 | 各種製造設備の機械や装置、大型特殊自動車のうち建設機械に該当するもの(分類番号が「0」「00~09」「000~099」のもの)、ターンテーブルを含む機械式駐車設備など |
船舶 | ボート、釣船、漁船、遊覧船など |
航空機 | 飛行機、ヘリコプター、グライダーなど |
車両・運搬具 | 大型特殊自動車(分類番号が「9」「90~99」「900~999」のもの) |
工具・器具・備品 | パソコン、陳列ケース、看板やネオンサインなど、医療機器、測定工具、金型、理容機器や美容機器、衝立など |
対して、申告の対象外の償却資産は以下の通りです。
- 土地
- 建物
- 自動車のような移動可能な資産
- 評価額が10万円未満の器具や備品
- 特許権
- 商標権
- 棚卸資産
- オペレーティングリース(貸し手側のみ)
- ファイナンスリース(借り手側のみ)
土地や建物は固定資産税の対象であり、特殊車両を除く自動車のような移動可能な資産は自動車税や軽自動車税の対象です。このように他の税金が課せられる資産は、基本的に償却資産申告の対象外という認識で良いでしょう。
もし申告の対象となる償却資産がないのであれば、申告書を提出する必要はありません。
償却資産申告書の作成を税理士に依頼できる?
税務関係の書類の作成は税理士の独占業務の一つであるため、償却資産申告書の作成を税理士に依頼することが可能です。
申告書以外の書類の作成に追われていたり人員が足りなかったりする場合は、税理士に償却資産申告書の作成を頼むと良いでしょう。顧問税理士がいるのであれば、償却資産申告書の作成も追加で依頼できるか聞いてみることをおすすめします。
まだ税理士と契約をしたことがない人は、検索サイトや相談会などを利用して税理士を探してみましょう。スポットで契約して申告書の作成のみ依頼するという方法もあれば、顧問契約を締結して、申告書の作成以外に税金の相談や他の書類の作成などを依頼するという方法もあります。
償却資産申告書の作成を税理士に依頼するメリット
償却資産申告書を税理士に作成してもらうメリットについて紹介します。
正確な償却資産申告書を作成してもらえる
償却資産申告書を作成するには、申告対象の償却資産と対象外の償却資産をきちんと把握しなければなりません。専門知識を持つ税理士に依頼すれば、申告対象かどうかの判断が難しい資産でも正確に判断してもらえます。
対象外の資産を申告してしまって、税金を払い過ぎるリスクも回避できます。反対に、対象となっている資産を申告し忘れてしまうという事態も防げるため、申告後に追徴課税される心配もありません。
また、自分で申告書を作成する場合は、資産ごとに取得価額や耐用年数なども調べる必要があります。税理士に任せれば、必要な資料を渡してヒアリングに応じるだけで、申告に必要な情報を調べたうえで正確な申告書を作成してくれます。
本業に集中できる
償却資産申告書を自分で作成するとなると、作成自体に時間がかかったり申告する償却資産についての情報を調べたりする手間がかかります。
税理士に作成を頼めば、固定資産台帳との照合や資産に関する必要な情報の取得、申告書の作成といった煩雑な作業をすべて任せられます。
その結果、企業の経理担当者や個人事業主は、専念するべき他の業務に時間を割けるようになるでしょう。
とくに申告書の提出期限である1月31日あたりは、年末調整や確定申告の時期と被っています。人員や時間が限られているのであれば、専門知識が必要な申告書は税理士に一任して、年末調整や確定申告などの業務に集中するのが賢明でしょう。
税務調査に立ち会ってもらえる
税理士と契約すると償却資産申告書の作成以外にもメリットがあり、税務調査に立ち会ってもらえます。
もし税理士と契約していなければ、税務調査には自社の担当者が対応しなければなりません。税理士と契約しており、契約内容に税務調査の立ち合いが含まれていれば、当日同席してもらえます。
税理士に立ち会ってもらうことで、税務調査官からの質問に代わりに回答してもらうことも可能です。自社の担当者だけだと税金に関する知識がなくスムーズに回答できないことも考えられますが、税理士であれば聞かれたことに対して適切に回答してもらえます。
また、税務調査の当日に手元に用意しておいた方が良い書類や指摘される可能性が高いことなども教えてもらえます。万全の体制で税務調査に対応できるでしょう。
節税に関する相談もできる
税理士に償却資産申告書の作成を依頼すれば、作成の段階で節税に関してアドバイスをもらえる場合があります。
たとえば「30万円未満の少額減価償却資産の特例」のような、節税につながる制度についてルールや活用方法などを教えてもらえることもあるでしょう。この特例以外にも、適用される制度を共有してくれる可能性もあります。
また、資産を購入するタイミングや節税効果の見込める金額の範囲など、将来的に固定資産税の負担を軽減するための戦略的な相談も可能です。償却資産税だけでなく、法人税や所得税といった他の税金を減らす方法についてアドバイスをしてくれる場合もあります。
ただ、実際に相談できるかどうかは契約の内容によるため、節税できる箇所を見てほしい人や助言がほしい人は契約するときに確認することをおすすめします。
償却資産申告書の作成依頼から納税までの流れ
償却資産申告書の作成を依頼してから納税するまでの流れを解説します。
1.税理士を探して契約する
税理士に初めて依頼する人は、まず税理士を探して契約する必要があります。「税理士情報検索サイト」を利用するか、税理士会の相談会に行くなどして税理士を探しましょう。
税理士を選ぶときは、以下のポイントを比較するのがおすすめです。
- これまでの実績や経験
- 契約料金
- 税理士との相性
税理士によって得意な分野が異なるため、自社の業界について精通しているかどうか実績や経験などを確認しましょう。契約料金については、どこまでの業務に対応してくれるのか、予算に合っているかなどを見ておくことを推奨します。税理士との相性も重要で、スムーズにコミュニケーションを取れるかどうか見極められれば、なお良いです。
最初から1人の税理士に決めきるのではなく、何人かの税理士を比較して1人を選ぶと良いでしょう。最初の相談は無料であることが多いため、その際に相性を見るのも一つの手です。
税理士を選んだら連絡を取り、対応してもらえる業務や料金などを確認して契約を締結します。
2.税理士に資料を提出する
税理士と契約できたら、償却資産申告書の作成を依頼しましょう。
償却資産申告書を作成するにあたって、税理士から以下の資料の提出を求められることがあります。
- 固定資産台帳
- 決算書や確定申告書
- 法人事業概況説明書
- 過去の償却資産申告書の控え
契約を締結した段階で書類を整理しておき、いつでも税理士に提出できる状態にしておくと良いでしょう。
また、申告書の作成準備として税理士からヒアリングをお願いされることもあります。所有する資産に関して詳しく質問される可能性があるため、日時を調整して対応しましょう。
3.償却資産申告書を作成し提出してもらう
資料を提出してヒアリングにも対応したら、それらの情報をもとに税理士が償却資産申告書を作成します。
申告書の作成が完了したら確認を求められるため、記載されている資産の情報が間違っていないか一つひとつ丁寧に確認しましょう。
償却資産申告書は代理提出が可能であるため、確認が完了したら税理士が地方自治体へ申告書を郵送するかeLTAXで申告してくれます。そのため、作成してもらった申告書を自分で提出する必要はありません。
4.納税通知書をもとに税金を納める
償却資産申告書を提出したら、後日に償却資産税の納税通知書と納付書が送られてきます。原則として年4回(東京23区では6月・9月・12月・翌年2月)に分けて納税することになるため、必ず期限までに税金を納めましょう。
もし償却資産税を滞納してしまうと、納付期限の次の日から延滞金が発生します。具体的には、期限の翌日から納付する日までの日数に応じて規定の延滞税が課せられます。
また、督促状が送られてきたり自治体から連絡が来たりしているにもかかわらず無視し続けると、最終的には財産の差し押さえが実施される場合があるため注意してください。
償却資産申告書を税理士に作成してもらう場合の費用
償却資産申告書の作成を税理士に依頼する場合の費用相場を、以下の表にまとめました。
契約形態 | 法人 | 個人事業主 |
---|---|---|
顧問契約 | 月額1万円〜6万円ほど | 月額1万円〜5万円ほど |
顧問契約+記帳代行 | 顧問料+5,000円〜3万円ほど | 顧問料+5,000円〜2万円ほど |
顧問契約+決算申告 | 顧問料+10万円〜30万円ほど | 顧問料+7万円〜15万円ほど |
スポット | 10万円〜25万円ほど | 7万円〜15万円ほど |
上記の費用はあくまでも目安です。抱えている従業員数や年間の売上高などによって費用は上下します。
また、一般的にスポットで依頼すると顧問契約よりも割高となります。そのため、対応してほしい業務の範囲や今後の利用回収などを考慮して、顧問契約を結ぶのかスポットで依頼するのかを決めた方が良いでしょう。
償却資産申告書に関するよくある質問
最後に、償却資産申告書に関するよくある質問をいくつか紹介します。
償却資産申告書を税理士に直接送付してもらう制度はある?
いくつかの地方自治体が、償却資産申告書を税理士に直接送付する制度を実施しています。
たとえば、石川県の金沢市が直接送付する制度を行っており、必要な書類を窓口に提出することで手続き可能です。翌年以降も自動で送付してもらえるため、こちらから書類を税理士宛にその都度発送する必要がなくなります。
ただし、申告書を税理士に直接送付する制度をすべての地方自治体が行っているわけではないため、公式サイトや窓口などで事前に確認することをおすすめします。
参考:償却資産申告書の税理士送付制度について|金沢市公式ホームページ いいね金沢
償却資産申告書の作成依頼はいつ頃までにするべき?
償却資産申告書の提出期限は1月31日であるため、遅くとも12月の上旬までには税理士に作成を依頼しておいた方が良いでしょう。
12月〜5月ごろは年末調整や確定申告などの提出時期と重なっており、税理士の繁忙期となっています。そのため、期限のギリギリに申告書の作成を依頼すると、断られてしまう可能性もあります。
反対に6月〜11月ごろは閑散期であるため、余裕を持って10月か11月には作成を依頼しておくと安心でしょう。
書類の作成のみをスポットで依頼できる?
償却資産申告書の作成をスポットで依頼することは可能です。
ただし、顧問契約のクライアントが優先されるケースが多いため、12月以降の繁忙期にスポットで依頼すると断られる可能性があります。また、顧問契約よりもスポットの方が割高に設定されていることがほとんどです。
継続的に申告書の作成を依頼したい場合や税金関係の相談もしたい場合は、顧問契約の締結を検討した方が良いでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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