• 更新日 : 2026年9月15日

電子記録債権と手形債権の違いは?仕訳やメリットもわかりやすく解説

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Point電子記録債権と手形債権の違いは?

電子記録債権はデジタル管理、手形債権は紙の証書で成立する別の債権類型です。

  • 電子記録債権は紛失・印紙税リスクなし
  • 手形は2027年3月末に電子交換所廃止予定
  • 仕訳は「電子記録債権」と「受取手形」を区別

Q. 電子記録債権と受取手形の勘定科目は同じ?

A. 異なります。電子記録債権は専用の勘定科目を使い、受取手形とは区別して処理します。

電子記録債権と手形債権の違いは、その記録・管理方法にあります。電子記録債権はデジタル管理され、ペーパーレスで発行・譲渡が可能です。一方、手形債権は紙媒体で物理的な発行と譲渡が必要です。

本記事では、電子記録債権(でんさい)と手形債権の違いについて、仕訳方法やメリットを含めて解説します。

※政府は、2026年度末を目途とした約束手形の利用廃止と、小切手の全面的な電子化の方針を示しております。詳しくは以下の記事をご確認ください。

電子記録債権と手形債権の違いは?

電子記録債権と手形債権は、どちらも将来代金を受け取る権利ですが、債権が成立・譲渡する方法が異なります。電子記録債権は電子データで管理されるのに対し、手形債権は紙の手形の交付を前提とします。

電子記録債権は電子記録によって発生・譲渡する債権

電子記録債権とは、電子債権記録機関の記録原簿に発生記録や譲渡記録を行うことで成立する金銭債権です。代表例には「でんさい」があります。紙の証書を使用しないため、紛失・盗難・偽造のリスクや、印紙税、郵送・保管の負担を抑えられます。また、債権の分割譲渡も可能です。

手形債権は紙の手形を交付して成立する債権

手形債権とは、約束手形や為替手形の振出し・交付によって成立する債権です。裏書譲渡や手形割引による資金化が可能ですが、紙の保管や期日管理、取立手続きが必要であり、紛失や不渡りのリスクもあります。電子記録債権は手形債権とは異なる債権類型として制度化されています。

電子記録債権は受取手形と区別して処理する

電子記録債権は、通常「電子記録債権」の勘定科目を用い、紙の手形に使用する「受取手形」と区別します。ただし、会計上は手形債権に準じて処理され、貸借対照表では重要性に応じて区分表示または受取手形などに含めて表示する場合があります。したがって、「電子記録債権は必ず受取手形に含まれる」とする説明は正確ではありません。

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電子記録債権(でんさい)の仕組みは?

電子記録債権の代表例である「でんさい」は、でんさいネットの記録原簿に電子記録を行うことで発生・譲渡する金銭債権です。紙の証書を使わず、金融機関のインターネットバンキングなどを通じて手続きを進めます。

発生記録によってでんさいが発生する

支払企業が取引金融機関を通じて発生記録を請求し、でんさいネットの記録原簿に債権金額や支払期日、債権者などが記録されると、でんさいが発生します。紙の手形のように証書を作成して交付する必要はありません。受取企業は、取引金融機関を通じて記録内容を確認できます。

譲渡記録によって第三者へ譲渡できる

でんさいを受け取った企業は、譲渡記録を請求することで、取引先などの第三者へ債権を譲渡できます。また、債権金額の一部だけを分けて譲渡する「分割譲渡」も可能です。例えば、100万円のでんさいのうち40万円だけを仕入先へ譲渡し、残り60万円を保有できます。

支払期日に自動決済され支払等記録が行われる

支払期日になると、原則として支払企業の口座から代金が自動で引き落とされ、受取企業の口座へ払い込まれます。決済が完了すると、でんさいネットの記録原簿に支払等記録が行われます。

そのため、受取企業が紙の手形を銀行へ持ち込んで取立を依頼する必要はありません。ただし、支払企業の口座残高が不足している場合は支払不能となるため、期日までの資金準備は必要です。

電子記録債権(でんさい)の利用方法は?

電子債権記録機関はいくつかありますが、ここでは一般的なでんさいネットを例に利用方法を説明します。でんさいネットを利用するには、債務者・債権者双方がでんさいネットに登録しなければなりません。

金融機関を通じてでんさいネットに利用申し込みを行い、「利用者番号」が通知されたら取引を開始できます。ここでは、支払利用と受取利用に分けて利用の流れを紹介します。

受取利用の流れ

  1. 支払企業からのでんさい発生記録の通知を確認する。
  2. 内容(金額・支払期日など)を確認する。
  3. 支払期日に口座へ自動入金される。
  4. 「支払等記録」で決済結果を確認する。

支払利用の流れ

  1. 取引先情報を確認する。
  2. 取引金融機関を通じて発生記録請求(支払い手続き)を行う。
  3. 設定・承認が済むと支払期日に自動送金される。

電子記録債権(でんさい)の仕訳・勘定科目は?

でんさいなどの電子記録債権は、紙の手形とは別の債権ですが、会計上は手形債権に準じて処理します。受取側は「電子記録債権」、支払側は「電子記録債務」を用い、発生・決済・譲渡などの段階ごとに仕訳します。

【でんさいの発生時】電子記録債権・電子記録債務を計上

売掛金100万円について、でんさいの発生記録が行われた場合、受取側は売掛金を電子記録債権へ振り替えます。

借方 金額 貸方 金額
電子記録債権 1,000,000円 売掛金 1,000,000円

支払側は、買掛金を電子記録債務へ振り替えます。

借方 金額 貸方 金額
買掛金 1,000,000円 電子記録債務 1,000,000円

【支払期日】債権・債務を取り崩す

支払期日に決済された場合、受取側は入金額を預金として計上し、電子記録債権を取り崩します。

借方 金額 貸方 金額
普通預金 1,000,000円 電子記録債権 1,000,000円

支払側は、電子記録債務を減らして預金を減額します。

借方 金額 貸方 金額
電子記録債務 1,000,000円 当座預金 1,000,000円

【譲渡・割引時】手数料や売却損を計上

でんさいを金融機関へ譲渡して期日前に資金化した場合は、入金額と債権額との差額を「電子記録債権売却損」などで処理します。取引先へ譲渡した場合も、譲渡した金額だけ電子記録債権を減額します。使用する勘定科目は会計ソフトや社内方針によって異なるため、継続して同じ処理を行うことが重要です。

電子記録債権(でんさい)のメリット・デメリットは?

でんさいは、紙の手形に伴う保管・郵送・取立の負担を軽減できる一方、導入や利用には一定の条件と費用がかかります。利用を検討する際は、取引先の対応状況や自社の運用体制を確認し、メリットとデメリットを比較しましょう。

【メリット】事務負担とコストを削減できる

でんさいは紙の証書を発行しないため、手形の紛失・盗難・偽造のリスクを抑えられます。手形用紙代や郵送料、保管作業が不要となり、発生記録には印紙税もかかりません。

支払期日には原則として口座間送金で自動決済されるため、受取側が銀行へ取立を依頼する必要もありません。また、債権の一部だけを分けて譲渡できるため、必要な金額だけ取引先への支払いや資金化に利用できます。

【デメリット】利用条件と手数料がある

でんさいを利用するには、原則として支払側と受取側が金融機関を通じて利用契約を結ぶ必要があります。取引先が対応していない場合は利用できず、銀行振込など別の決済方法を用意しなければなりません。

また、発生記録や譲渡記録、分割譲渡などには手数料がかかり、金額は金融機関やサービスによって異なります。導入時には審査や社内システムの設定、担当者への教育も必要です。システム障害や誤入力、不正アクセスのリスクもあるため、承認権限や操作履歴の管理を整備する必要があります。

手形債権の仕組みは?

手形債権は、振出人が紙の手形を作成して受取人へ交付することで発生し、支払期日に銀行を通じて決済される仕組みです。受取人は、期日まで保有するほか、裏書譲渡や手形割引によって第三者への譲渡や期日前の資金化もできます。

手形の振出しと交付によって債権が発生する

約束手形では、振出人が手形金額、支払期日、受取人、振出日などを記載し、署名または記名押印して受取人へ交付します。受取人は、手形に記載された金額を期日に請求できる手形債権を取得します。

ただし、手形を交付した時点で現金決済が完了するわけではありません。振出人は支払期日までに、決済口座へ必要な資金を用意します。

裏書譲渡や手形割引によって期日前に活用できる

受取人は、手形の裏面などに必要事項を記載する裏書によって、手形を取引先へ譲渡できます。また、金融機関の審査を受けて手形割引を利用すれば、割引料を差し引いた金額を支払期日前に資金化できます。

ただし、譲渡後に不渡りが発生した場合は、裏書人として支払いを請求されたり、金融機関から買戻しを求められたりする可能性があります。

支払期日には銀行を通じて決済される

受取人は通常、支払期日前に取引銀行へ手形を持ち込み、取立を依頼します。現在は紙の手形を金融機関が画像化し、電子交換所を通じて支払銀行へ交換呈示する仕組みです。支払期日に振出人の当座預金から代金が引き落とされ、受取人の口座へ入金されると手形債権は消滅します。

なお、電子交換所における紙の手形・小切手の交換は2027年3月31日に廃止されます。2027年4月以降も手形が法律上一律に無効になるわけではありませんが、取扱いは金融機関ごとに異なるため、でんさいや銀行振込への移行が必要です。

参考:手形・小切手機能の全面的な電子化について|金融庁

手形債権の利用方法は?

手形債権は、主に企業間において売掛金の回収や買掛金の支払いに使用され、資金調達の手段としても活用されます。

以下に、支払企業と受取企業それぞれの基本的な利用の流れを示します。

支払企業(債務者)の流れ

  1. 手形の作成:必要事項(金額・支払期日・支払場所など)を記入し、押印。
  2. 手形の交付:作成した手形を取引先(債権者)に渡す。
  3. 支払準備:支払期日までに決済資金を準備する。
  4. 決済:支払期日に指定された支払場所(通常は銀行)で支払う。

受取企業(債権者)の流れ

  1. 手形の受取:取引先から手形を受け取り、内容を確認。
  2. 手形の保管:支払期日まで安全に保管。必要に応じて他社へ裏書譲渡も可能。
  3. 取立て:支払期日に支払場所(銀行)で手形を呈示し、支払いを受ける。支払期日前に金融機関で割り引いて現金化することも可能。

手形債権の仕訳・勘定科目は?

手形債権の会計処理では、受取企業は「受取手形」、支払企業は「支払手形」を使用します。手形の受領・振出時と、支払期日の決済時で仕訳が異なります。不渡りが発生した場合も、通常の決済とは別の処理が必要です。

【受取企業】手形の受領時に受取手形を計上

売掛金100万円の回収として手形を受け取った場合、売掛金を減らし、受取手形を資産として計上します。

借方 金額 貸方 金額
受取手形 1,000,000円 売掛金 1,000,000円

支払期日に決済され、普通預金へ入金された場合は、受取手形を取り崩します。

借方 金額 貸方 金額
普通預金 1,000,000円 受取手形 1,000,000円

【支払企業】手形の振出時に支払手形を計上

買掛金100万円の支払いとして手形を振り出した場合、買掛金を減らし、支払手形を負債として計上します。

借方 金額 貸方 金額
買掛金 1,000,000円 支払手形 1,000,000円

支払期日に当座預金から引き落とされた場合は、支払手形を取り崩します。

借方 金額 貸方 金額
支払手形 1,000,000円 当座預金 1,000,000円

【不渡り時】不渡手形へ振り替え

受取手形が不渡りとなった場合、直ちに貸倒損失へ処理するのではなく、通常は「不渡手形」へ振り替えて回収を続けます。

借方 金額 貸方 金額
不渡手形 1,000,000円 受取手形 1,000,000円

その後、回収不能が確定し、税務上の貸倒要件を満たした場合に、貸倒引当金や貸倒損失を用いて処理します。

手形債権のメリット・デメリットは?

手形債権には、支払条件を明確にし、裏書譲渡や手形割引に活用できる利点があります。一方で、支払期日まで資金を回収できず、不渡りや紙の管理負担が生じる点はデメリットです。双方を比較して理解しましょう。

【メリット】支払条件を明確にできる

手形には、支払金額、支払期日、振出人などが記載されるため、受取企業は支払条件を確認しやすくなります。また、支払期日まで保有するだけでなく、裏書譲渡によって取引先への支払いに充てたり、金融機関で手形割引を利用して期日前に資金化したりできます。

振出企業にとっても、支払期日まで決済資金を準備できるため、資金繰りを調整しやすい点がメリットです。

【デメリット】回収不能と管理負担のリスクがある

受取企業は、原則として支払期日まで代金を回収できません。振出人の資金不足などで不渡りになれば、手形金額を回収できない可能性があります。手形割引や裏書譲渡を利用した場合も、不渡り時に買戻しや遡及請求を受けることがあります。

さらに、紙の手形には、紛失・盗難・偽造、郵送、保管、取立期限の管理といった負担があります。振出企業側にも、印紙税や手形帳の発行手数料、不渡りによる信用低下のリスクが生じます。電子交換所での交換廃止が予定されているため、今後はでんさいや銀行振込への移行が必要です。

手形取引の利用廃止に向けた動向は?

政府と銀行界は、企業間決済の効率化や中小企業の資金繰り改善を目的として、紙の手形・小切手の利用廃止を進めています。2026年7月時点では、電子交換所の廃止期限が迫り、金融機関による発行・振出しの終了も本格化しています。

電子交換所での手形交換は2027年3月末に廃止される

銀行界は、2026年度末までに電子交換所で交換される紙の手形・小切手をゼロにする目標を掲げています。これに伴い、電子交換所における交換は2027年3月31日で廃止される予定です。

ただし、2027年4月以降に手形法が廃止され、紙の手形が法律上一律に無効になるわけではありません。交換廃止後は個別取立などが必要となるため、金融機関によって取扱いが終了・変更される可能性があります。

参考:電子交換所の交換廃止時期の決定および手形・小切手交換廃止時期の明確化について|一般社団法人全国銀行協会

金融機関では発行終了と最終振出期限の設定が進んでいる

多くの金融機関は、手形帳・小切手帳の発行受付をすでに終了しています。また、最終振出期限を公表した金融機関の多くは、2026年9月30日を期限に設定しています。

該当する金融機関では、2026年10月1日以降に振り出された手形は、原則として当座勘定から支払われません。企業は取引銀行の発行終了日、最終振出期限、取立受付期限を個別に確認する必要があります。

でんさいや銀行振込への移行が進められている

紙の手形に代わる決済手段として、でんさいなどの電子記録債権やインターネットバンキングによる振込が推奨されています。電子化により、印紙税や郵送・保管費用、紛失・盗難、取立作業の負担を減らせます。

企業は支払方法を切り替えるだけでなく、取引先との支払条件、資金繰り、契約書、会計処理、承認フローも見直す必要があります。

電子記録債権への切り替えを検討しよう

でんさいなど電子記録債権の導入は、2026年度末(2027年3月末)の手形全面電子化に向けて避けられない課題です。単なる支払手段の変更ではなく、企業の財務管理全体の見直しにつながる重要な施策のひとつといえます。

早期に切り替えを検討し、自社の業務フローやシステムとの整合性を確認することが求められます。長期的な視点を持って計画的に進めることで、企業の競争力向上が期待できるでしょう。

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