• 作成日 : 2025年3月31日

IFRSにおけるファクタリングの会計処理・仕訳は?売掛金・借入金に要注意

ファクタリングとは、売掛債権をファクタリング会社に買い取ってもらうサービスのことです。ファクタリングの会計処理は、日本基準とIFRSで異なります。IFRSのファクタリングの扱いや仕訳、関連する項目として、サプライヤー・ファイナンスの一種であるリバースファクタリングについて解説します。

IFRSにおけるファクタリングとは

ファクタリングとは、売掛債権を売却することで資金化する方法のことです。日本では、ファクタリングは基本的に債権の売却として扱われますが、IFRSではファクタリングの定義が異なります。IFRSにおけるファクタリングについて、概要を解説します。

IFRSとは

IFRSとは、国際会計基準審議会が策定する国際財務報告基準のことです。グローバルな会計基準として、EU域内の上場企業を中心に適用が進んでいます。日本では独自の日本基準に基づき会計処理を行うこととなっています。近年では、日本基準とIFRSの差異を縮小させるコンバージェンスが進められるようになりました。

IFRSにおけるファクタリングの定義

IFRSでは、ファクタリングを借入金として扱います。ファクタリングを利用した段階では、売掛債権が他社に移転したにすぎず、金融機関に貸し倒れリスクが移転したわけではないためです。IFRSでは、売掛債権を担保に資金を調達したものとして、借入金の扱いになります。

IFRSにおけるファクタリングの会計処理

ファクタリングには、取引先の介入がない2者間ファクタリングと、取引先を交えて行われる3者間ファクタリングがあります。ここでは、2者間ファクタリングを利用した場合の、ファクタリングの利用から返済にかけての会計処理を紹介します。

ファクタリング会社からの入金時の仕訳

ファクタリング会社を利用して、手数料を差し引いた入金を受けた場合、IFRSでは、対象の売掛債権を借入金とする会計処理を行います。

(仕訳例)ファクタリングを利用して売掛金100万円分の資金調達を行った。手数料として請求書の金額の8%が差し引かれ、残額は普通預金に入金された。

借方貸方
普通預金920,000円借入金1,000,000円
売上債権売却損80,000円

売掛先からの入金時の仕訳

IFRSでは、売掛金を売却する仕訳を行わないため、売掛先からの入金に影響が生じません。そのため、通常の売掛金の入金と同じように仕訳を行います。

(仕訳例)売掛金100万円について、売掛先から普通預金に入金があった。

借方貸方
普通預金1,000,000円売掛金1,000,000円

ファクタリング会社への返済時の仕訳

ファクタリング利用時に、売掛金を担保とした借入金として計上する仕訳を行っていました。そのため、ファクタリング会社に売掛金分を返済する際は、借入金が解消されたものとして会計処理を行います。

(仕訳例)売掛先からの入金が確認できたため、普通預金からの振り込みにより、ファクタリング会社に100万円の返済を行った。

借方貸方
借入金1,000,000円普通預金1,000,000円

IFRSと日本基準のファクタリングの違い

IFRSと日本基準のファクタリングの扱いの違いを解説します。

売掛金の消滅条件(オフバランス処理)の違い

オフバランスとは、貸借対照表(バランスシート)から資産や負債を消滅させることです。現実的には資産や負債でありながら、貸借対照表から切り離された資産などのことをいいます。

IFRSと日本基準では、売掛金の消滅(オフバランス)の条件が異なります。まず、日本基準については、ファクタリング利用時に売掛金を売却するものと考えるため、契約内容にもよりますが、基本的にファクタリングで資金調達を実現した時点で売掛金は消滅します。

一方、IFRSでは、ファクタリングで資金調達をしても売掛金をオフバランスにできません。売掛金を担保に借入を行うと考えるため、売掛金は貸借対照表上に残ったままとなるためです。IFRSでは、ファクタリングの返済が行われた際に売掛金を消滅させるため、貸借対照表のオフバランス化は期待できません。

借入金として計上するかの違い

ここまで解説してきたように、日本基準とIFRSではファクタリング利用時の会計処理に違いがあります。日本基準の場合、売掛金を買い取ってもらうことで資金調達を行った際は、売掛金の売却として会計処理を行うため、借入金の計上はありません。保証型のファクタリングを利用した場合でも、保証に対する手数料を支払ったものとして考えるため、借入金の計上はありません。

一方、IFRSでは、ファクタリングは借入金として扱うことから、ファクタリングの契約締結時に借入金を計上する会計処理を行います。

IFRSにおけるリバースファクタリングとは

ファクタリングに関連して、IFRSとリバースファクタリングの関係について解説します。

リバースファクタリングはサプライヤー・ファイナンスのひとつ

IAS第7号及びIFRS第7号において、開示が要求される「サプライヤー・ファイナンス契約」とは、仕入先に対する債務について、資金提供者が支払いを行い、契約に従って、利用者が支払いに同意する契約のことです。リバースファクタリングとは、仕入先に対する買掛債権を一時的にファクタリング会社に立て替えてもらうサービスです。

リバースファクタリングも、サプライヤー・ファイナンスの一種といえます。IFRSでは、サプライヤー・ファイナンス契約に関して、契約条件や表示科目、支払期日のレンジなどについて開示することが求められています。

IFRSにおけるリバースファクタリングの会計処理

IFRSにおいて、リバースファクタリングの会計処理をどのように行うのか明確な決まりはありません。関連する負債をどのように財務諸表に表示するのか、どのような関連情報を財務諸表に記載すべきか、複数の議論があります。

上記を踏まえ、リバースファクタリングの会計処理を行う場合は、契約の一部である負債の大きさや性質などの総合的な判断で区分することが必要です。また、買掛金のオフバランスについては、いつ行うべきか慎重な判断が求められます。つまり、リバースファクタリングの会計処理は、決まった形があるものではなく、状況に応じて行う必要があるということです。

IFRSではファクタリングは借入金として扱う

ファクタリングについて、日本の会計基準とIFRSには違いがあります。日本の場合、債権買取型のファクタリングは、売掛金を売却したものとして扱うため、基本的に契約締結にともない売掛金は消滅します。一方、IFRSでは売掛金を担保とした借入金の扱いになるため、契約締結の時点で売掛金が消滅することはありません。IFRSと日本基準では会計処理が異なることを確認しておきましょう。


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