- 更新日 : 2025年2月4日
入金管理をエクセルで行うには?具体的な方法やさらに効率化するためのポイントを解説
入金管理とは、請求した金額が予定日までに入金されたかどうかを確認し、その記録を管理することを指します。入金管理は、企業の収支を管理する上で必要不可欠な作業です。
本記事では、エクセルで入金管理を行う方法や、よくあるエラーの回避策を具体的に解説します。
目次
入金管理の流れ
まずは、入金管理の流れについて確認しておきましょう。
入金データの記録・確認
入金管理は、入金データの登録から始まります。入金データは「顧客情報(顧客名、ID、連絡先など)」「入金情報(金額、日付、方法)」「請求情報(金額、日付、支払期限)」などです。
入金データの見落としや、他案件との混同に注意しながらチェックしましょう。誤ったデータが記録されていた場合、この後の段階で問題が発生してしまいます。
入金データの整理・分類
入金データを必要に応じて整理・分類します。例えば、顧客別や月別、入金方法別など、後々分析しやすいように分類することが大切です。
入金データを帳簿へ記録
整理・分類したデータを帳簿に記録します。これにより全体の入金状況を一覧で確認でき、必要に応じて分析することが可能になります。
入金データと売掛金の照合
通常、請求内容と振込内容に誤りがなければ、売掛金と入金データは完全に一致するはずです。しかし、不一致が生じた場合は、再度確認しなければなりません。
たとえば、わずかな金額の差異は振込手数料によるものかもしれません。これは、顧客が本来負担すべき振込手数料を差し引いて送金している可能性が考えられます。
一方、大きな金額の相違がある場合は「請求書自体の誤り」「残高リストの記載ミス」「入金データの入力ミス」「顧客側の送金ミス」などが考えられます。原因を特定し、顧客の誤りであれば不足分の追加請求が必要です。
入金消込
入金消込とは、実際の入金データと売掛金を照合し、債権残高のデータを記録から削除する作業です。これにより、未回収分の把握が可能です。
この作業では、支払や振込手数料を考慮せずにデータを処理してしまうミスがよく発生します。そのため、振込手数料のマイナス金額もその都度記録する必要があります。
後払い取引の仕訳では、借方が「売掛金」貸方が「売上」です。入金確認後は、借方に「現金(預金)」、貸方に「売掛金」を計上して消込を完了させます。振込手数料が発生した場合は、借方に「支払手数料」としてマイナス分を入力します。
エクセルでの入金管理の方法
エクセルは入金管理に大変有効なツールです。柔軟性と多機能性を活かすことで、煩雑な作業を簡素化し、ミスを減らせます。ここでは、エクセルを使って入金管理の方法を紹介します。
テンプレートを活用する
入金管理を始める簡単な方法は、Excelのテンプレートを活用することです。経理関連のウェブサイトやテンプレート専門サイト等から既存の入金管理表をダウンロードし、そのまま使用することもできるでしょう。
さらに、自社のニーズに合わせて管理項目の名称や項目数を調整し、カスタマイズすることも可能です。複数のテンプレートをダウンロードし、自社に合いそうなテンプレートを比較検討してみましょう。
テンプレートを活用することにより、専門知識がない場合でも入金管理システムを構築できる利点があり、とくに小規模企業や新規事業開始時には非常に便利です。
ピボットテーブルを活用する
ピボットテーブルを利用することで、顧客別の入金状況など、特定条件でのデータ集計・分析が容易になります。ドラッグ&ドロップの操作で対象のデータを指定できるため、難しい関数を使用せずとも分析が可能です。
エクセル関数や数式を利用する
エクセル関数や数式を利用することで、入金管理の効率化が可能です。SUMやSUMIF、VLOOKUPなどの関数を使用することで、計算や入力の一部を自動化できます。
関数の習得には時間がかかりますが、長期的に見れば自動計算などによって作業効率の大幅な向上につながるでしょう。
ただし、関数をセルに直接入力するため、他の人に誤って削除されたり変更されたりするリスクには注意が必要です。誤入力を避けるために、「セルの保護」機能を活用しましょう。計算式があるセルを指定することにより、誤入力等を防げます。
エクセルマクロを活用する
エクセルマクロを活用すれば、以下のような複雑な作業の自動化ができます。
- 入金データを入力すると、自動的に未入金リストが更新される
- 入金データのシートと顧客情報のシートを連携させ、顧客ごとの入金状況を自動的に更新する
マクロの作成には、エクセル内で行う一連の操作を記録し、それを自動化する方法と、VBA(Visual Basic for Applications)というプログラミング言語を用いて、自分でマクロを作成する方法があります。いずれも専門的な知識を要するため、作成におけるハードルは高いことに注意が必要です。
エクセルの入金管理を効率化できる関数
エクセルの関数を活用することで、入金管理や入金消込作業の大幅な効率化が可能です。ここでは、とくに有用な3つの関数「SUM」「IF」「VLOOKUP」について解説します。
SUM
SUM関数は、Excelで複数のセルや範囲の数値を合計するための基本的な機能です。使い方は非常にシンプルで、「=SUM(A1:A10)」のように合計したいセル範囲を指定するだけです。また、複数の範囲や個別のセルを指定することもでき、「=SUM(A1:A10, B1:B10, C5)」のように、隣接していないセルでも合計計算の記述ができます。
SUM関数は数値だけでなく、他の数式の結果や関数の結果も合計できるため、さまざまな計算に応用できます。入金管理や売上集計など、ビジネスシーンで頻繁に利用される便利な関数です。また、指定範囲のうち条件が一致するデータを合計する場合にはSUMIF関数を用います。
IF
IF関数は、条件に基づいて異なる値や計算結果を出す、Excelの論理関数です。基本的な構文は 「=IF(論理式, 真の場合の値, 偽の場合の値)」 です。
たとえば、「=IF(A1>10, “合格”, “不合格”)」 と入力すると、A1セルの値が10より大きい場合は「合格」、そうでない場合は「不合格」と表示されます。複数の条件を組み合わせたり、他の関数と組み合わせたりすることで、より複雑な条件分岐も可能です。
入金管理では、支払期限や入金額の条件に応じた処理を行う際に活用できます。たとえば「入金一覧表に名前がある場合は入金管理表に○をつけ、ない場合は空欄のままにする」といった入力作業が、この関数を使えば一つずつ目視で確認する必要がなくなります。
VLOOKUP
VLOOKUP関数は、Excelで大量のデータから特定の情報を素早く取り出すためのツールです。この関数を使えば、商品コードを入力するだけで、対応する商品名や価格を自動的に表示させることが可能です。
主な用途としては、在庫管理や売上管理における繰り返し入力の省力化があります。あらかじめ商品コードと商品名、価格などの情報をまとめた参照用の表を作成しておき、VLOOKUP関数を設定することで、入力作業を大幅に効率化できます。
なお、構文は「=VLOOKUP(検索値, 範囲, 列番号, 検索の型)」です。
エクセルで入金管理するメリット
エクセルは、手軽に入金管理を始められるツールとして広く利用されています。ただし、メリットとデメリットを理解した上で、自社に適した方法を選択することが重要です。
エクセルで入金管理を行うメリットは、以下のとおりです。
低コストで済む
Excelは多くの企業のパソコンで標準搭載されているため、追加の投資もなく入金消込に活用できます。Microsoft社が提供するアップデートや機能改善により、運用コストも抑えられます。
柔軟にカスタマイズできる
Excelの豊富な機能により、自由度の高い管理表を作成できます。関数の組み合わせによる複雑な計算や、マクロ機能を使った単純作業の自動化も可能です。
容易にデータ共有ができる
Excelは広く使用されているため、データの共有や受け渡しが容易です。
エクセルで入金管理するデメリット
エクセルで入金管理するデメリットは、以下のとおりです。
手作業のミス
エクセルでの入金消込作業では、データ入力や突合作業を手作業で行うため、完全な自動化は困難です。一つの入力ミスが全体の計算に影響を及ぼす可能性があり、それが重大な問題に発展することもあります。ミスが発生した場合、原因究明や取引先との信頼関係の修復に多大な労力と精神的な負担がかかります。
業務の属人化
エクセルの柔軟なカスタマイズ性により、特定の担当者しか理解できない複雑な管理表が作成されがちです。これにより、業務の引継ぎが困難となり、特定の個人に依存した業務体制が形成されてしまう要因にもなります。
検証作業の非効率性
エクセル管理では、最終的な確認を目視で行う必要があるため、完全な自動化は困難です。営業部門と経理部門の間で多くの目視作業が発生します。このような人的リソースの投入は、業務効率化の観点からすると見過ごせない問題です。
これらの問題点を考慮すると、エクセルによる入金消込管理には効率化の限界があるといえます。より効果的な業務改善のためには、専門的なシステムの導入を検討する必要があるでしょう。
エクセルで入金管理する場合によくあるエラーと対処法
続いて、入金管理をエクセルで行う際によくあるエラーとその対処法をご紹介します。
データの入力ミス
エクセルは手動での操作が必要なため、データ入力のミスが起こりやすい点に注意が必要です。
具体的には以下のようなミスが想定されます。
- 値を間違えて入力する
- 列や行を間違えて入力する
- データを二重で入力する
データ入力の際にダブルチェックを行うことや、「ドロップダウンリスト」「入力規則」を設定し、入力可能な値を制限するなどしてミスを防ぐことが大切です。
フォーマットの破損
運用当初は正しいフォーマットでも、操作誤りによって書式設定や数式の参照範囲が変わり、フォーマットが破損してしまうケースがあります。
これを回避するためには、定期的なバックアップが必要不可欠です。
また数式の参照範囲が変わっている場合、参照先が1行ズレている程度では気づけないケースもあります。計算ミスが許されないデータについては、人の目で再チェックを行うこともおすすめです。
誤操作によるデータ削除
誤ってセルのデータや数式を消してしまったり、複数行をまとめて削除してしまったりするケースもあります。定期的なデータバックアップは、このようなケースの対策としても有効です。
入金管理を効率化するシステム
最後に、エクセル以外で入金管理を効率化するシステムを2つご紹介します。
会計システム
会計システムとは、企業の財務情報を管理し、会計処理を自動化するシステムです。
企業の「売上・費用・資産・負債」などの情報を一元管理し、日々の仕訳作業や財務諸表の作成、税金計算などの自動化ができます。
入金管理においては、売上と入金の対応関係を管理し、未入金の追跡や入金の予測などが可能です。
近年では銀行口座の取引履歴やクレジットカードの使用履歴と連携し、日々の取引明細データが自動記録されるシステムもあります。
ERP
ERP(Enterprise Resource Planning)とは、企業の全ての業務プロセスを一元管理し、業務全体の最適化を目指すためのシステムです。
「財務、営業、製造、人事、経営戦略」など、各部門の情報を一元管理し、部門間の情報共有や業務連携が効率化できます。
入金管理においては、ERPの中の財務会計モジュールによって未入金の追跡、入金の予測、キャッシュフロー管理などが可能です。
ERPの概要や詳細については、以下の記事で解説していますので、ぜひ併せて参考にしてください。
入金管理にはエクセルやシステムを活用しましょう
エクセルを有効活用することで、入金管理業務の効率化が可能です。
テンプレートを活用して一覧形式のフォーマットを作成し、自社が管理しやすい形式で管理しましょう。関数やピボットテーブル、マクロといった機能を活用することで、入金管理のさらなる効率化や自動化ができます。
ただし、エクセルは手作業での操作が多いため、以下のポイントに注意しましょう。
- データの入力ミス
- フォーマットの破損
- 誤操作によるデータ削除
ミスが許されない入金管理を正確かつ効率よく実施したい場合は、会計システムやERPの導入もおすすめです。
エクセルやシステムの導入など、自社に最適な方法を選択し、入金管理の正確化・効率化を実現しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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