- 更新日 : 2023年5月26日
ERPとは?概要や種類、選び方から導入の流れまでわかりやすく解説

ERPという言葉を耳にしたことはあるものの、いまいち理解できないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。本記事ではERPの概念や基幹システムとの違い、メリット・デメリット、選び方と導入の流れなど、ゼロからわかりやすく解説します。
目次
ERPとは?
ERPとは、エンタープライズ・リソース・プランニング (enterprise resource planning)の略称で、企業のさまざまな部門の人的資源や資産などのリソースを統合的に管理することにより、業務や経営全般の効率化・最適化を図る考え方、またはそれを実現するシステムを指します。
日本語では統合基幹業務システム、基幹システム、ERPパッケージ、ERPシステム、業務統合パッケージなど様々な呼び方をされています。
ERPは企業の「会計業務」「人事業務」「生産業務」「物流業務」「販売業務」など基幹となる業務を統合し、効率化、情報の一元化を図ることを目的に誕生しました。
これまで部門ごとに区切られていた資源や情報を横断的に連携して有効活用でき、包括的な企業戦略を策定することにも寄与します。
ERPと基幹システムの違い
では、なぜ今ERPが求められているのでしょうか。ここでは、ERPと基幹システムの違いという観点で解説します。
基幹システムとは、企業活動の中核となる基本的な情報システムのことです。例として、生産管理や販売管理、在庫管理など、役割に合わせて個々に独立したシステムが挙げられます。
それぞれのシステムは重要な役割を担っているものの、各システムに要求されるデータの種別や情報処理の手法が異なり、個々にデータベースを管理する必要がありました。
しかし、業務負担の改善や収益の向上といった観点で考えれば、これらの業務は統合して包括的に管理するほうが効率的といえます。
このような背景から、企業の資源を総合的に管理する仕組みであるERPが多くの企業から求められるようになったのです。
ERPのメリット・デメリット
ERPの導入は企業にとって多くのメリットをもたらしますが、少なからずデメリットも存在します。順番に見ていきましょう。
メリット
ERPを導入するメリットとはどのようなものでしょうか。詳しく見ていきます。
業務の効率化と標準化
ERPのデータ連携機能で業務の自動化を行うことで、手作業での業務がなくなり、人的なミスも削減されます。人的ミスのリカバリーにかかっていた時間も不要となるため、大きな業務効率化が可能です。
また、ERP導入時には業務フローの見直しが必要になります。無駄な業務や属人的になってしまっている業務を見直して業務フローを統一したり、ERPに合わせて伝票やデータ形式を統一することで、業務の標準化を実現することができます。
情報の一元管理
ERPでデータベースを統合することで、企業全体の情報の一元管理とデータ連携を実現します。これまで複数の部署やシステム間で発生していたデータのやりとりが不要になり、常にリアルタイムの正しい情報を把握できるようになります。それにより、意思決定のスピードアップ、業務効率化、ミスの削減などの実現にもつながります。
経営状況の可視化
ERPは企業内のデータベースを統合し、データを一元管理しています。常に企業の最新の状況をリアルタイムに可視化することが可能です。それにより企業の現状をリアルタイムに把握し、意思決定の高速化を実現します。
また、ERPの多くにはデータ分析ツールが搭載されているので、分析結果を利用することでさらに迅速な経営判断が可能になります。
デメリット
次に、ERPを導入することのデメリットを見てみましょう。より自社に合うものを導入するためにデメリットも把握して検討することをおすすめします。
導入コストがかかる
ERPを導入する場合、導入するシステムの規模や導入形態によってはイニシャルコストが高額になることがあります。
予算に限りのある場合は、自社に必要な機能を取捨選択し、最初はスモールスタートで導入することをおすすめします。その後、必要な機能を段階的に拡張していくことで、導入にかかるイニシャルコストの調整を行うことが可能です。
また、導入後にはイニシャルコストだけでなく維持・管理していくためのランニングコストもかかります。ERPを導入する場合、顧客に提供するサービスの品質・費用・納期がそれぞれどの程度改善されるか、またランニングコストを上回る収益を達成できるかどうかを試算する必要があります。その際は、ライセンス費用や保守費用、追加カスタマイズ費用なども十分検討しなければなりません。
ERPのランニングコストを抑えるためには、月額費用の負担のみで利用できるクラウド型を導入するのがおすすめです。
業務フローの見直しが必要
データベースやシステムが変わることで、業務フローにも影響が出ます。そのためERPを導入する際には、必然的に業務フローを見直すことになるでしょう。
ERPに限らず新たなシステムの導入を検討している企業では、いつの間にか「そのシステムを導入すること」が目的になってしまっていることがあります。しかし、ERPを導入する目的は社内の情報を統合して業務を効率化することであり、ERPの導入自体は業務改善の手段の1つでしかありません。そのため、まずは改善後の最適化された業務フローを明確に定義し、それを達成するために必要なERPの導入を検討することが大切です。
また、導入したERPを実際に利用する従業員ために、マニュアル・手順書を整備することも忘れてはなりません。その際に、ERPの必要性を従業員に周知することも忘れずに行いましょう。「ERP導入によって何を目指すか」「ERPを導入することで課題がどのように解決するか」「業務がどのように変わるのか」「企業の最終的な経営目標は何か」を従業員に説明することが目的です。
現場の従業員がERPの利用方法に加え、ERPによってどのような業務改善が期待されるのかを十分に理解していれば、ERPの導入やその後の運用、業務フローの変革がスムーズに進むでしょう。
ERPの種類
導入形態による分類
ERPには多くの種類がありますが、それぞれいくつかの基準によって分類できます。
まずは、ERPを導入形態で分類してみましょう。導入形態にはクラウド型とオンプレミス型があり、それぞれの特徴は以下のとおりです。
クラウド型
クラウド型は、ERPサービス提供企業がインターネット上で構築したシステムに利用企業がアクセスして利用する形態です。サーバーやシステムはクラウド上にあるので、社内でのシステム構築はほとんど不要なのが特徴です。また、汎用的なシステムであるため、保守を担当する人材を速やかに確保できるでしょう。
また初期投資が少なく、短期間で導入できる点もメリットです。オンプレミス型と比較すると、特に費用面で中小企業に向いているといえるでしょう。
オンプレミス型
オンプレミス型は、自社にサーバーを構築するタイプのERPです。自社内でシステムを構築するため、システムを自由にカスタマイズできるというメリットがある反面、導入時にサーバー構築やライセンス費用、教育費など多額の費用がかかるというデメリットがあります。
またオンプレミス型は独自のシステムであるため、メンテナンスに関しても自社内で行う必要があり、そのための人員を確保しなければなりません。中小企業で大規模な自社サーバーを設置することは費用面で厳しいかもしれませんが、大企業で多くの人が利用する場合にはオンプレミス型が向いています。
カバーする業務の範囲による分類
次に、ERPによって統合する業務の範囲で分類してみましょう。範囲は大きく分けると3種類です。
統合型
統合型のERPは、業務に関するさまざまな情報や基幹システムを1つに統合して管理するものです。統合することでデータの一元管理が実現し、さらに自動化によって業務効率が向上します。
統合型のERPは、データベースが1つなので、各システムからデータを更新できる点が特徴です。そのため最新の情報をリアルタイムで利用できるというメリットもあります。
経営者は企業全体のデータを把握した上で、俯瞰的に経営判断を下せるようになるでしょう。
その反面、全システムを統合することは容易ではなく、多くのコストと時間がかかることがデメリットとして挙げられます。
コンポーネント型
コンポーネント型のERPは、必要な基幹システムのみを選択して統合することで、業務の最適化を目指すものです。状況によっては、すでに利用している複数のシステムと新規で開発したシステムを組み合わせてコンポーネントを構築することもあります。
コンポーネント型のメリットは、必要なシステムを選択して連携できるので、統合型よりも導入に費用や時間がかからないことです。また、さまざまな機能を部品(コンポーネント)として必要に応じて拡張できるので、社会情勢や市場の流れに沿った最適なシステムを構築できます。
一方、デメリットとしては、必要なシステムのみを統合するため機能が限定的になることや、部分的に統合した時点では全システムを俯瞰できていない場合が多いことが挙げられます。特に後者は、あとになって抜本的なシステム改修が必要になることもあります。
業務システム型
業務システム型のERPは、生産管理システムや顧客管理システムなど、特定のシステムの一元管理を行うものです。
特定の業務に特化しているため、他のERPと比較してイニシャルコストを低く抑えられ、短期間で導入できるというメリットがあります。予算が限られており、特定の業務にフォーカスして改善したい小規模企業に向いているといえるでしょう。
デメリットとしては、企業の全業務をカバーしているわけではないので、収益の向上や業務効率の改善といった点では効果が限定的になることが挙げられます。
ERPの選び方と導入の流れ
ERPを導入するときに注意すべきポイントと、導入の流れを紹介します。
ERPの選び方
導入するERPを選定するときには、まず自社の課題やERP導入の目的を明確にした上で、次のようなポイントに注意して選定しましょう。
- 自社の課題を解決できるか
- 自社の業務に必要な機能を備えているか
- 自社が現在利用しているツールやシステムと連携できるか
- コストと機能のバランスは適切か
- 運用保守の方法や内容は自社に合っているか
- セキュリティ対策は十分か
- ベンダーの信頼性は問題ないか
ERPの選び方について、詳しくは次の記事も参考にしてください。
導入の流れ
ERPの導入は、次のような流れで行います。導入に必要な期間や費用は、企業形態、導入する企業やシステムの規模によって異なります。
- 企画
解決したい社内の課題から、その課題を解決することのできるERPを検討します。同時に、ERPの導入目的や導入範囲を設定します。最終的にはバックオフィス全体に導入する予定でも、スモールスタートで導入し、段階的に拡張していくことで、システム移行の負担を軽減することができます。 - 要件定義
実際の業務フローを洗い出し、効率化したモデルを基に、導入するERPに必要な機能や仕様を決定します。同時に、帳票やインターフェースの設計も行います。 - 実装・テスト
導入テストを行います。特に、必要な機能を満たしているか、必要な連携ができているか、本番環境でスムーズに動作するかなどがポイントになります。 - 導入
テストで不具合を修正したら、実際に導入します。導入前には、導入教育、マニュアル作成、サポート体制なども準備しましょう。 - 運用・保守
導入後は、継続的に運用保守を行います。ユーザーサポート、不具合の発見・修正、メンテナンス、連携する他のアプリの更新による修正などが必要です。不具合を発見した場合には、ベンダーに連絡する必要があります。
ERPの導入については、次の記事も参考にしてください。
まとめ
ERPは企業のさまざまな部門の人的資源や資産などのリソースを統合的に管理することにより、業務や経営全般の効率化・最適化を図る考え方、またはそれを実現するシステムを指します。
ERPには様々な種類があるため、どのようなERPであれば自社の課題解決や業務改善に有効活用できるか見極める必要があります。そのために、まずは自社の業務内容を洗い出し、解決すべき課題を明確にすることが大切です。
ERPの種類やメリット・デメリットを理解した上で、自社にとって最適なERPを選定し、業務の効率化や経営判断の高速化を実現しましょう。

マネーフォワード クラウドERPをご利用のお客様の声
マネーフォワード クラウドを導入し、業務改善の積み重ねたことにより、紙の使用量を半分以上削減し、ペーパーレス化に成功しました。また、業務効率化にも成功し、人的リソースを削減しながら月次締めにかかる日数を3営業日短縮することができました。
株式会社藤井大丸 会計課 上杉様
よくある質問
ERPとは?
ERPとは企業のさまざまな部門の人的資源や資産などのリソースを統合的に管理することにより、業務や経営全般の効率化・最適化を図る考え方、またはそれを実現するシステムを指します。詳しくはこちらをご覧ください。
ERPのメリットは?
ERPを導入すると情報の一元管理とリアルタイム更新が実現し、業務効率が向上します。また、経営状況が可視化されることで経営判断の高速化につながります。 詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。