• 作成日 : 2020年5月14日

情報通信業の会計・経理業務

初めて情報通信業の経理を担当する方の中には、「簿記の基本は理解しているが、情報通信業の経理はよくわからない」という方もいるでしょう。
しかし、簿記の基本に立ち返り、自社の人や物の流れに沿って正しいタイミングで仕訳を行えば問題ありません。

そこで、この記事では情報通信業の業務内容や経理業務を行う際の注意点について解説します。
    

情報通信業とは?

総務省の「日本標準産業分類」によると、情報通信業は次の5つに大別されます。

  1. 通信業
    映像や音声、文字による情報伝達
    ※固定電話、有線放送、携帯電話などの企業
  2. 放送業
    情報の伝達や運用
    ※TV局、ラジオ局など
  3. 情報処理サービス業
    ソフトウェア開発やその作成に関する調査・分析
    ※システム開発会社、ゲームソフト会社など
  4. インターネット付随サービス業
    オンラインでの情報提供、サーバー運用、音楽や映像等の配信、検索、ショッピングサイトの運営
    ※GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)などのオンラインサービス
  5. 映像・音声・文字情報制作業
    映像や音声、文字を使った情報等の加工や配給
    ※アニメ制作会社、映画配給会社、新聞社、出版社など

情報通信業の収入は広告収入、サーバーレンタル料、有料コンテンツ料金などですが、分類ごとにその内容は大きく異なります。
この記事では、あらゆる企業が抱える課題・問題をシステム技術(IT)で総合的に解決する「情報処理サービス業」を例に取り、その経理業務について見ていきましょう。

情報処理サービス業における売上とは?

情報処理サービス業は、IT業界の分類の一種で、SIer(エスアイヤー)とも呼ばれます。

SIerは「システムインテグレーター(System Integrator)」の略称で、顧客のシステム上の悩みを総合的に解決するための情報処理を行います。

情報処理サービス業で発生する売上は、大きく分けて3種類あります。

1.ハードウェア売上
システム機器類の販売などの売上です。

2.コンサルティング、企画、開発売上
検収結果が出た時の売上計上となります。
計上のタイミングは、納品先がシステムを利用して問題の有無を点検する際の「検収基準」に通った時です。納品先がOKサイン(検収書)を出した時点で売上として計上します。
売上高は、各工程に必要な技術担当者の人数や、完成までにかかった時間などの「工数」に加え、システムの難易度やリスクを勘案した積み上げ額で構成されます。

3.運用、保守売上
ハードディスクのレンタル料や在庫管理料、システムが完成した後の運用受託料などは「運用サービス売上」、システムのメンテナンス料は「保守サービス売上」として計上します。

期末には以上の売上高をもとに決算処理を行うため、正しいタイミングで売上計上する必要があります。

情報処理サービス業における決算処理に必要な事項とは?

情報処理サービス業においては、決算において完成していないシステムを仕掛品(しかかりひん)」として計算する過程が非常に重要です。

小売業のように多くの商品を扱うわけではありませんが、依頼をうけたシステムについて、技術者がどれくらいの時間を費やしたかを常に把握する必要があります。

顧客との契約の範囲内でシステムを完成させるためには、必要なスキルをもった技術者の確保が必要となり、外注することもあります。

決算日までに完成していないシステムについては、会計上「仕掛品」という勘定科目で計上され、棚卸処理の対象となります。

損益計算書には上の表のように簡易表示されることもあれば、工業簿記に則って製造原価報告書を作成する場合もあります。

損益計算書の当期製造費用には、

  • 技術者の給与や賞与
  • 外注費
  • 開発するためのシステム設備の減価償却費
  • 光熱費
  • 設備の保守費

などが含まれます。

したがって、それぞれ技術者の給与単価を把握することが求められます。また、仕掛高については期末になってから計算をするのではなく、案件開始から把握しておく必要があります。

情報処理サービス業の経理業務における注意点とは?

経理業務では会計データだけにとらわれず、気になる計数について積極的に調査することが非常に重要です。

案件数が増えると個々の案件の把握が非常に煩雑になるため、個々のプロジェクトを管理するシステムを導入することがあります。

ところがシステム開発の進行上、個々の工程の遅延や開発の難易度から計画どおりにいかない場合があります。

したがって、プロジェクトの管理システムが会計システムと連携していると安心して、連携された会計データを過信するのは危険です。売上原価ではなく、場合によっては損失として検討することが必要なケースもあります。

たとえば、「人事データを見ると残業している技術担当者が、受注案件ではあまり工数が増えていない」という場合があります。その場合は、案件の進行に問題があることを疑い、それによる損失について確認することが大切です。

・売上原価や仕掛品が何から構成されているか
・どのような作業の流れで会計にデータが集約されるのか

について徹底した調査を続けることは、会社の数字を左右する経理業務に欠かせない作業だと認識しましょう。
   

情報通信業では会計ソフトで経理業務の効率化を

情報通信業の経理業務においては、まず3つの売上高について正しく把握することが必要です。

また、会計システムと他システムの連携漏れや、売上原価や仕掛品の構成内容や会計にデータが集約される作業の流れなどをチェックすることも重要となります。

以上を念頭に置きながら簿記の基本にもとづく経理作業を行い、スムーズな決算処理につなげましょう。 

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:岡 和恵 (税理士 / フィナンシャルプランナー AFP)

大学卒業後、2年間の教職を経て専業主婦に。その後、システム会社に転職。
システム開発部門と経理部門を経験する中で税理士資格とフィナンシャルプランナー資格(AFP)を取得。
2019年より税理士事務所を開業し、税務や相続に関するライティング業務も開始。

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