- 更新日 : 2024年8月8日
法人税申告書の別表8(1)とは?見方や書き方、注意点まで解説
関連会社がある場合、その法人から配当金などを得ることがあります。その際の処理についてご存じでしょうか。どのように処理するかで法人税額が変わってきますので、しっかりと理解しておきたいところです。
今回は、配当金を受け取り、「益金不算入」する際に使用する法人税申告書別表8(1)についてご紹介します。主な項目や書き方、そして注意点を把握しましょう。
目次
法人税申告書の別表8(1)とは
法人税申告書別表8(1)とは、受取配当金を益金不算入とする際に必要な書類です。よって、出資等を行わず、配当金を得ていない場合はこの書類は不要です。
また、配当金を支払う法人との関係性によって、どの程度の金額を益金不算入できるかが変わってきます。
持ち株比率 | 益金不算入できる割合 |
---|---|
3分の1超 | 100% |
3分の1以下 | 50% |
5%以下 | 20% |
持ち株比率が高いほど益金不算入できる割合も高くなります。
なお、法人税申告書別表8(1)は国税庁ホームページ「令和5年4月以降に提供した法人税等各種別表関係(令和5年4月1日以後終了事業年度等分)」からダウンロードしてください。
法人税申告書の書き方については下記記事を参考にしてください。
受取配当金の益金不算入がある理由ですが、法人税の二重課税を防止するためです。法人から支払われる配当金は法人税を支払った後の利益をもとに計算されているものです。その配当金を受け取った別の法人が配当金を含めた所得から法人税を払うと、同じ利益から法人税を2回納税することになります。
そのため、益金不算入を行い、二重課税を防ぐというわけです。
法人税申告書の別表8(1)に記載する主な項目と書き方
法人税申告書別表8(1)に記載する主な項目と書き方についてご紹介します。
関連法人の受取配当等の額など
上記でご紹介した通り、関連法人の場合、配当金の益金不算入額は持ち株比率で決まります。例えば、持ち株比率100%であった場合、14の「受取配当等の額」と16の「益金不算入の対象となる金額」は同額です。
非支配目的株式等の受取配当等の額など
支配目的で株式を保有していない法人からの配当金は「非支配目的株式等」の部分に書き込みます。31「受取配当等の額」に配当金額を書き込んでください。益金の額に算入される金額がない場合は、33「益金不算入の対象となる金額」にも同額を書き込みます。
法人税申告書の別表8(1)を書く際の注意点
ETF以外の投資信託の収益金は益金不算入できない
特定株式投資信託(ETF)の収益の分配の額は、非支配目的株式等として益金不算入の対象ですが、以下のようなものは益金不算入できません。
- 生命保険の契約者配当金、相互会社である損害保険会社の基金利息
- 特定目的会社、不動産投資信託(REIT)又は不動産投資法人等からの利益の配当又は分配
- 証券投資信託の特別分配金
- 公社債投資信託の分配金、転換社債の利子、割引債券の償還差益、協同組合等の事業分量分配金及び貸付信託の分配金並びに外国子会社等からの配当及び外国法人の発行する投資信託の収益の分配金等
株式の保有割合に応じて益金不算入額を算出する
先に解説した通り、関連会社か否かにより、益金不算入できる割合が異なります。関連法人の場合は、100%益金不算入できますが、非支配法人の場合は株式の保有割合に応じて益金不算入額を計算しましょう。
法人税を抑えたいならば別表8(1)を作成しよう
益金不算入は法人税の二重課税を防止するために必要なものです。法人税の課税額を抑えられますので、法人から株式の配当金などを受け取っている場合は法人税申告書別表8(1)を作成しましょう。
また、配当を支払う法人との関係によって益金不算入の割合が変わってきます。持ち株の割合を把握しておくことも重要です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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