- 更新日 : 2024年8月8日
法人税申告書の別表6(1)とは?見方や書き方、注意点まで解説
法人税の納税申告をするためには「法人税申告書」の作成が必要です。しかし、法人税申告書は別表の種類も多いため、何を使ったらいいのか迷う場合も多いのではないでしょうか。
そこで、本記事では別表の中の一つ「法人税別表6(1)」について詳しく解説します。どのようなときに使うのか、および書き方についても見ていきましょう。
目次
法人税申告書の別表6(1)とは
「法人税申告書別表6」と一口に言っても別表6には(1)~(32)まであり、それぞれで用途が異なります。今回は「所得税額の控除に関する明細書」である法人税申告書別表6(1)(以下、別表6(1))について詳しくご紹介します。
別表6(1)が必要になるのは、源泉所得税額控除の金額を算出するためです。「控除」といえば所得から計算した金額が引かれるもの、というイメージをお持ちかもしれません。「源泉所得税額控除」では、控除分を引いた後の金額を元に税金を計算し、その税額からさらに控除があります。法人にとっては非常にお得になるため、提出すべき書類といえるでしょう。
なお、法人税申告書の別表は以下からダウンロード可能です。
参考:国税庁「令和5年4月以降に提供した法人税等各種別表関係(令和5年4月1日以後終了事業年度等分)」
法人税申告書の書き方については以下の記事を参考にしてください。
法人税申告書の別表6(1)に記載する主な項目と書き方
法人税申告書別表6(1)に記載する項目はいくつかありますが、主には以下のとおりです。
- 預貯金等の利子・源泉所得税・控除額
- 株式の配当金や投資信託の分配金・源泉所得税・控除額
預貯金等の利子・源泉所得税・控除額
預貯金をしていると利子が付きますが、受け取る場合、一律20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%、地方税5%)が引かれます。これは源泉所得税のため特に申告する必要はなく、自動的に引かれるものです。
しかし、受け取った利子は「営業外収益」扱いとなり、法人の所得金額の一部となります。そして所得金額には「法人税」が課税されます。つまり、利子には源泉所得税が課税され、利子を含めた所得金額には法人税が課税されるとなると二重課税とみなされるのです。
よって、利子に課税された源泉所得税を法人税額から控除するため、別表6(1)が必要となります。
株式の配当金や投資信託の分配金・源泉所得税・控除額
株式の配当金や投資信託の分配金も同様です。受取時に20.315%の源泉所得税が引かれます。支払われた配当金・分配金は営業外収益扱いとなり、法人税課税対象となりますので、二重課税を防ぐために所得税控除が行われるということです。
法人税申告書の別表6(1)を書く際の注意点
法人税申告書別表6(1)に記入する際の注意点を押さえておきましょう。
「個別法」「簡便法」どちらで記載するかを決める
源泉所得税額控除ですが、基本的には源泉所得税額が法人税からの控除金額となります。しかし、株式の配当金、投資信託の分配金、公社債の利子の場合、控除できるのは所有期間に応じる部分のみです。控除金額の計算方法には「個別法」と「簡便法」がありますので、確認しておきましょう。計算方法は事業年度ごとに有利な方を選ぶことができます。
■個別法
元本の銘柄ごと、所有期間の月数ごとに計算する方法です。
■簡便法
配当等にかかる元本を「株式および出資」と「集団投資信託の受益権」とに分け、これを配当等の計算期間が1年を超えるものと1年以下のものとに区分して、その区分に属するすべての元本について、その銘柄ごとに計算する方法です。
控除額の計算方法を解説
個別法、簡便法、それぞれの計算方法をご紹介します。
■個別法
■簡便法
①配当等の計算期間が1年以下のもの
②配当等の計算期間が1年を超えるもの
※A:配当等の計算の基礎となった期間の開始時に所有していた元本の数
B:配当等の計算の基礎となった期間の終了時に所有していた元本の数
ちなみに、控除する所得税等の金額がその事業年度の法人税額より多い場合、控除されなかった金額は還付されます。
そして、算出された金額は収入金額や所得税額と共に、別表6(1)の以下の欄に記載してください。
源泉所得税控除のために別表6(1)の記載方法を押さえておこう
法人が受け取る預貯金の利子、株式の配当金や投資信託の分配金にも源泉所得税が課税されます。さらに、源泉所得税が引かれて受け取った金額にも法人税がかかるため、そのままにしていると二重課税状態となります。
法人税申告書別表6(1)を作成することで、控除できる源泉所得税額がわかり、二重課税状態の解消ができます。法人税申告書を作成する際は別表6(1)も忘れないようにしましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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