- 更新日 : 2024年8月8日
減価償却費を月割りで計算する方法は?具体例と共に紹介
減価償却費は資産の価額に償却率を掛けて計算し、耐用年数で償却するものです。しかし、取得の時期は1年の途中であることも多く、正確に計算するためには月割り計算が必要です。
減価償却費の計算方法には定額法と定率法の2種類の方法がありますが、月割り計算はどちらも同じように考えます。資産を取得した年度には減価償却費の月割り計算を忘れずに行うためにも、月割り計算について正確に把握しておきましょう。
目次
減価償却費を月割りで計算する方法
年度の途中で取得した資産の減価償却費は、1年分を計上するのではなく月割りで計算します。例えば、3月決算の会社が10月に資産を取得した場合は、10月から翌年の3月、つまり6ヶ月分を計上しなければなりません。
実際に使用した期間を月単位で反映して計算します。
個人事業主の場合は原則定額法ですが、税務署に届け出ることで定率法を選択できます。
法人の場合は「建物」「建物付属設備」「構築物」は定額法、それ以外の固定資産は定率法と、資産の種類によって計算方法が定められています。
減価償却について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
定額法における計算式
定額法では以下の式で計算します。
参考:国税庁 No.2106 定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)
償却率を用いて計算しますが、考え方としては取得価額を法定耐用年数で割った金額を1年分ずつ費用にすると考えると分かりやすいでしょう。毎年同じ金額が償却されて資産の価値が均等に減っていき、最終的にゼロになるというイメージです。
ただし、実務では残存価額はゼロにせず、資産の存在を示すため1円とします。
定率法における計算式
定率法では以下の式で計算します。
参考:国税庁 No.2106 定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)
未償却残高とは取得にかかった金額から前年までの減価償却費の合計をマイナスした金額です。減価償却費の合計が大きくなるにつれて未償却残高は減っていくため、減価償却費も年々減っていきます。
計算方法は定額法より複雑ですが、資産は経年によって価値を生み出しにくくなるものもあります。そういった資産の特徴に沿った費用計上ができる点が定率法のメリットです。
定率法には「償却保証額」が設定されています。上記の計算式で算出した減価償却費が償却保証額に満たなくなった場合は、「改定取得価額×改定償却率」で計算します。
参考:国税庁 No.2106 定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)
ひと月に満たない期間の扱い方
年度の途中で資産を取得した場合の減価償却費は月割りで計算しますが、月の途中で取得した場合は1ヶ月に満たない日数でもひと月と考えます。
例えば、3月決算の会社が2月18日に減価償却資産を取得した場合は、2ヶ月分の減価償却費を計上しなければなりません。
月割りで減価償却費を計算する際の具体例
ここからは減価償却費の月割り計算の方法を具体的に解説します。計算結果が小数となった場合には、小数点以下は切り上げで処理します。
定額法の場合
以下の例を定額法で計算してみましょう。
【例1】3月決算の会社が以下の機械装置を6月に取得した。(償却率:0.100)
- 耐用年数10年
- 取得価額100万円
=83,333.333
=83,333円
取得価額に償却費を掛けて、さらに10ヶ月分を求めます。10ヶ月を「12分の10」年と考えて計算すると、減価償却費は上記の金額になります。
なお、この0.100という償却率は10分の1のことであり、単純に取得価額を耐用年数で割ることと同じです。月割り計算するにはこれに「使った月/12」をかけて計算します。毎年同じ金額が償却されるため、イメージしやすい方法です。
定率法の場合
以下の例を定率法で計算してみましょう。
【例2】3月決算の会社が以下の機械装置を6月に取得した。(償却率:0.200)
- 耐用年数10年
- 取得価額100万円
=166,666.666
=166,667円
減価償却資産を取得した年度の計算の手順は定額法と同様ですが、償却率が異なります。定額法よりも高額ですが、翌年以降は未償却残高に償却率を掛けるため、減価償却費は徐々に減っていきます。
例えば、この例の次年度の減価償却費は、100万円から16万6,667円をマイナスした金額(未償却残高)に0.200を掛けます。間違えないよう注意しましょう。
減価償却資産を取得した年度は減価償却費の計上は月割りで
減価償却資産を取得した年度の減価償却費は、取得月によって変わります。期首の月に取得した場合は丸1年分を計上しますが、それ以降に取得した場合は月割り計算を忘れずに行いましょう。
償却方法には定額法と定率法の2種類があり、個人事業主と法人では償却方法の決まり方が異なることも重要なポイントです。
よくある質問
減価償却費を月割りで計算するには、どうすればいいですか?
1年分の減価償却費を12で割り、さらに使用した月数を掛けることで求められます。 詳しくはこちらをご覧ください。
ひと月に満たない期間は、月割り計算の際にどう扱えばいいですか?
ひと月に満たない場合でもひと月として計算します。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
太陽光発電の減価償却費計算をわかりやすく解説
太陽光発電設備を導入した場合、法定耐用年数に従って減価償却できます。本記事では、太陽光発電の減価償却費の計算方法と仕訳を紹介します。減価償却を行う際の注意点も解説しているので、併せて参考にしてください。 太陽光発電は減価償却が可能? 太陽光…
詳しくみるトラクターの減価償却の計算方法は?中古の場合まで解説
トラクターは農業者に欠かせない機械ですが、金額が大きいだけに会計上の取り扱いに困る人も多いかもしれません。この記事では、トラクターの減価償却方法について詳しく解説します。耐用年数や中古の場合の取り扱い、国税庁による法定耐用年数、一括償却扱い…
詳しくみる携帯電話の減価償却方法は?耐用年数や特例などを解説
携帯電話の端末は、購入価格が10万円以上なら法定耐用年数10年の固定資産として減価償却を行わなければなりません。ただし、携帯電話の価格によっては、より負担の少ない方法での会計処理もできます。この記事では、携帯電話の減価償却期間や計算方法、仕…
詳しくみる中古車は一括償却できる?減価償却との違いや経費計上のシミュレーションも
中古車は取得価額20万円未満であれば、一括償却資産として3年で経費化が可能です。 本記事では、一括償却制度の概要をはじめ、減価償却との違いや法人・個人事業主を問わず利用可能な要件について解説します。さらに、2年落ちや4年落ち、10年落ちとい…
詳しくみる無形固定資産と有形固定資産とは?違いや減価償却の解説
固定資産には、無形固定資産と有形固定資産があります。物理的な形態を持つか、持たないかが主な違いです。 無形固定資産には、ソフトウェアや特許権、有形固定資産には土地や建物などの種類があります。本記事では、それぞれの概要だけでなく、減価償却方法…
詳しくみる新リース会計基準がレンタルやサブスクリプションに及ぼす影響と留意点
2027年4月から導入される「新リース会計基準」により、多くの取引がリースに含まれることが想定されます。 リース取引はオンバランス化が原則とされるため、各企業はより正確な会計処理が求められます。 ここでは、新基準におけるリースの識別方法や、…
詳しくみる