- 更新日 : 2024年8月8日
制服代や作業服代は経費になる?仕訳と勘定科目まとめ
業務で制服や作業服を着用する会社では、従業員に支給した制服・作業服代を経費に計上します。その際、勘定科目は消耗品費にするか福利厚生費にするかが迷うところです。また、制服・作業服のクリーニング代や、スーツを支給した場合の扱いも問題になります。
本記事では、制服・作業服購入費の仕訳と勘定科目について説明し、クリーニング代の取り扱いやスーツを支給した場合の仕訳についても紹介します。さらに、軍手など小物の支給を経費にできるかも解説しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
制服や作業服購入費の仕訳と勘定科目
飲食店や製造工場などで支給される制服・作業服は、業務に必要な費用として経費計上されます。その際、仕訳に使用する勘定科目は主に以下の2つです。
- 福利厚生費
- 消耗品費
どの勘定科目を使うのが妥当なのか、それぞれの勘定科目ごとに見ていきましょう。
福利厚生費
通常、飲食業や医療、警備など業務の遂行に欠かせない制服を購入した場合、勘定科目は福利厚生費とするのが適切です。
また、制服や作業服の費用を製造原価に含められるかどうかでも判断は異なります。製造原価とは、製品の製造に要する材料費や人件費などのことです。
例えば、製造業や建築業などでは、製造や建築に直接かかわる従業員の制服購入費は売上に関係するため、製造原価に含まれると考えます。売上に関わる制服を製造原価に含めることで、商品製造に必要なコストに加えることが可能です。
制服や作業服を製造原価に含まれると考える場合、仕訳の勘定科目は福利厚生費として処理します。
警備会社において、警備に携わる従業員の制服購入に5万円を現金で支払った場合の仕訳は以下の通りです。
消耗品費
制服や作業服着用が売上に関係する業種でも、制服着用が売上とは直接かかわらない事務員などの制服購入費は福利厚生費に含めません。消耗品費で処理するのが妥当です。
また、従業員を雇わない一人法人や個人事業主の場合、自分用に制服や作業服を購入した際は福利厚生費にできません。福利厚生費は従業員に支給される報酬の一部であり、個人事業主自身への福利厚生という概念がないからです。この場合も、消耗品費で計上することになります。
個人事業主が自分用の制服を現金2万円で購入した場合、仕訳は以下の通りです。
制服や作業服のクリーニング代の仕訳と勘定科目
制服や作業服のクリーニング代も会社が支給している場合は、その費用は従業員の負担を軽減するものと考え、一般的には福利厚生費で計上します。
ただし、福利厚生費として経費にするためには、以下の要件に該当していることが必要です。
- 対象が全従業員である
- 金額が社会通念上妥当である
特定の従業員の制服や作業服のみをクリーニングする場合は、福利厚生費とは認められません。給料の一部と扱えば、所得税が課税される場合もあるでしょう。
また、クリーニング代として妥当な金額である必要もあります。
従業員全員の制服をクリーニングして1万円を現金で支払った場合、仕訳は以下の通りです。
スーツは制服として経費にできる?
個人事業主や中小企業の社長などは、スーツ代を経費にできないか考えることもあるかと思います。基本的にスーツは私用でも着用できるため、経費に計上できません。
ただし、会社のロゴが入っているなど、業務に必要なスーツであることが明らかな場合は、経費に計上することが可能です。
また、業務の性質上、スーツの着用が不可欠な場合も経費として認められる場合があります。以下のような場合です。
- 弁護士等の士業、保険外交員、営業マンなど
- 講演会やセミナーの講師
- 取引先に常駐する場合
- 商談や取引先訪問などに合う機会が多い場合
なお、個人事業主やフリーランスの場合、業務に関連して使用するスーツにつき家事関連費として経費に計上できる可能性もあります。
家事関連費とは個人用と業務用を兼ねており、切り離せない費用のことです。例えば、自宅で仕事をしている場合の家賃や光熱費などで、計上する際は金額を個人用と業務用に区別する按分(あんぶん)を行います。
スーツもこの家事関連費として、按分した金額を経費に計上することが可能です。例えば、週に3日間取引先に会うためにスーツが必要になり、8万円のスーツを購入した場合、按分計算すると以下のような数字になります。
週3日で1ヶ月に12日として40%と考え「8万円×40%=3万2,000円」
家事関連費として計上する勘定科目は消耗品費で、金額が少ない場合は雑費でも問題ありません。個人事業主の私的な支出になる4万8,000円は事業主貸を使って仕訳します。
購入したスーツ代を家事按分して経費計上する場合の仕訳は、以下の通りです。
軍手やマスクなどの小物は経費にできる?
業務によっては、制服以外に軍手やマスクなどの小物を支給する場合もあります。これら小物の購入費用も、業務に関連する場合は経費に計上が可能です。
全員に支給するものであれば福利厚生費として計上し、一部の従業員に支給する場合は消耗品費で仕訳します。
消耗品費の勘定科目は、購入金額が10万円未満で、使用可能期間が1年未満の場合に使うものです。
全員に配布する場合でも、経費の内容を制服など福利厚生費とは分けて把握したい場合には消耗品費として計上するとよいでしょう。
マスクは衛生費で仕訳することもできます。従来と異なり大量のマスクを購入したという場合は、消耗品費と分けることで支出が増えた理由を把握しやすくなるでしょう。
制服や作業服の勘定科目は業種によって使い分けよう
業務に関連して制服や作業服を購入する場合、飲食店や警備会社など業務の遂行に不可欠だと判断できるときには、福利厚生費に計上します。制服や作業服の着用が売上に関わらない事務員が着用する場合は、消耗品費として処理してください。制服や作業服の勘定科目は、売上への影響可否などを考慮し、業種ごとに判断するとよいでしょう。
スーツは私用でも着用できるため経費では落とせませんが、個人事業主の場合は家事按分で一部を計上することも可能です。
制服や作業服と似たような仕訳の解説記事
制服や作業服と似たような仕訳に使う勘定科目の解説を、以下の記事でも解説しています。
よくある質問
制服代を消耗品費で仕訳する場合のポイントは?
制服着用が業務に直接関わらない場合、および従業員を雇っていない場合や個人事業主は消耗品費で計上します。詳しくはこちらをご覧ください。
制服代を福利厚生費で仕訳する場合のポイントは?
制服着用が業務の遂行に不可欠な場合は、福利厚生費で仕訳します。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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