- 更新日 : 2025年2月19日
リース投資資産の仕訳やリース資産との関係を解説
リース取引において、リース期間終了後、貸し手に支配権が戻るリース物件を、「リース投資資産」といいます。リース投資資産の処理は、リース業を行っている会社なら押さえておきたい業務です。本記事では、リース取引の概要からリース投資資産とリース資産の違い、リース投資資産の仕訳まで解説していきます。
目次
リース取引のおさらい
リース取引とは、リース物件の貸し手が借り手と契約を結び、契約期間(リース期間)の間、借り手が対象の物件を使用する権利、また使用による利益を得る権利を有する取引をいいます。一般的にリース取引は、所有する物件から行うのではなく、顧客からの注文を受けて、リース会社が顧客の代わりに販売会社から物件を取得し、顧客に貸し出します。
リース取引については、リース会計基準が定められており、取引の内容によって会計処理が変わってくる点に注意しなければなりません。リース取引は、以下の図のように、「ファイナンス・リース取引」と「オペレーティング・リース取引」に区分され、さらにファイナンス・リース取引は、「所有権移転ファイナンス・リース取引」と「所有権移転外ファイナンス・リース取引」に分かれます。それぞれの取引について説明していきましょう。

- ファイナンス・リース取引
- 所有権移転ファイナンス・リース取引
- 所有権移転外ファイナンス・リース取引
- オペレーティング・リース取引
ファイナンス・リース取引は、「フルペイアウト」と「解約不能」の2つの条件を満たす取引をいいます。フルペイアウトとは、物件を取得した場合と同じように、物件の使用により実質的に利益を享受し、物件の使用にかかるコストを負担。実際に物件を購入したのとほとんど同じ効果があるような状態をいいます。解約不能とは、リース期間の間、原則的に解約できない状態のことです。
リース期間終了後に、借り手に所有権が移るようなファイナンス・リース取引、または借り手用に作られた特別仕様物件のファイナンス・リース取引、リース終了後に割安購入選択権があるファイナンス・リース取引をいいます。
所有権移転ファイナンス・リース取引に該当しないファイナンス・リース取引をいいます。
購入するよりも大幅に安くリースできるなど、ファイナンス・リース取引に該当しない取引をいいます。
リース投資資産とは
リース投資資産は、リース取引の貸し手であるリース会社に関係のある勘定科目です。リース取引のうち、ファイナンス・リース取引は、所有権は貸し手側にあるものの、会計上は資産の売買と同じ経済実態をもった取引と考えます。
そのため、リース契約が行われたら、将来にわたって回収するリース物件の回収価値を反映すべく、貸し手側は資産として計上します。
このうち、リース投資資産は、所有権移転外ファイナンス・リース取引で使用する勘定科目で、リース期間終了時までに回収を見込む資産の価値(仕訳の方法によっては利息相当額も含む)を表したものです。
リース投資資産とリース資産の違い
リース投資資産と名称の似た勘定科目に、「リース資産」があります。リース投資資産とリース資産は、いずれもリース取引特有の勘定科目です。違いは、“誰”視点のリース取引かということになります。
リース投資資産は、前述したように、所有権移転外ファイナンス・リース取引の貸し手側のリース取引に関わる勘定科目です。
一方、リース資産は、貸し手ではなく、リース物件の借り手の仕訳で使用します。所有権移転ファイナンス・リース取引、所有権移転外ファイナンス・リース取引、いずれのリース取引でも使用される勘定科目です。
リース投資資産の会計処理の方法
リース投資資産に関わる、リース物件貸し手側の所有権移転外ファイナンス・リース取引の会計処理の方法には、以下の3つの方法があります。
- 開始時に売上高と売上原価を全額計上する方法
- 受け取りの都度、売上高と売上原価を計上する方法
- 利息相当額を各期に配分する方法
3つの仕訳方法に関連して、リース投資資産の利息の計算で用いられる「利息法」は、割引現在価値(将来の価値を現在に置き換えたらどのくらいか)を考慮した計算方法です。利息法による計算方法と仕訳例の利息額については、各仕訳方法の下の参考部分に、計算式と一緒に掲載していますのであわせて確認してください。
1.開始時に売上高と売上原価を全額計上する方法
取引開始日の仕訳例
原価25万円のリース物件のリースを開始した。リース料は、年1回後払いの5回払いで1回6万円(リース料総額30万円)である。
リース料受取時の仕訳例
1回目のリース料6万円を現金で受け取った。
リース開始日に売上高と売上原価を全額計上する方法では、リース料総額を「リース投資資産」として資産計上します。リース料受取時は、回収を完了したという意味でリース投資資産の回収分を減額します。なお、この方法によると、利息を含む全額を開始時に計上することから、決算時に未経過期間に対応する利息相当分の繰延処理が必要です。
【参考】リース料の決算処理
上記4月1日リース開始、毎年3月31日リース料支払いのリース投資資産について、決算にともなう繰延処理を行う。(当社の会計期間は毎年4月1日~翌年3月31日である。)
2年目以降の利息分合計額を繰延処理
(※利息額は下の「利息法による利息の計算表」を参考)
2年目に帰属する利益を計上する処理
繰延処理している分から2年目に回収した利息分を減額
(※利息額は下の「利息法による利息の計算表」を参考)
2.受け取りの都度、売上高と売上原価を計上する方法
取引開始日の仕訳例
原価25万円のリース物件のリースを開始した。リース料は、年1回後払いの5回払いで1回6万円(リース料総額30万円)である。
リース料受取時の仕訳例
1回目のリース料6万円を現金で受け取った。
リース開始時は、リース物件の原価を「リース投資資産」に計上し、リース料受取時に売上原価と振り替える処理を行います。1回目のリース料受取時に売上原価に計上するのは、利息法により計算した1回目の元本回収分です。(※元本回収分は下の「利息法による利息の計算表」を参考)
3.利息相当額を各期に配分する方法
取引開始日の仕訳例
原価25万円のリース物件のリースを開始した。リース料は、年1回後払いの5回払いで1回6万円(リース料総額30万円)である。
リース料受取時の仕訳例
1回目のリース料6万円を現金で受け取った。
リース開始時は、リース物件の原価を「リース投資資産」に計上。リース料受取時に、利息法により計算した利息分を受取利息に計上し、元本回収分をリース投資資産より減額します。(※元本回収分と利息分は下の「利息法による利息の計算表」を参考)
※参考(利息法による利息の計算表)
仕訳例の数値から利息法の計算に必要な利率を求める計算式
r=利息法で用いる利率
リース投資資産はリース取引貸し手の勘定科目
リース投資資産は、リース取引の貸し手(リース会社)の仕訳で必要な勘定科目で、所有権移転外ファイナンス・リース取引のときに使われます。借り手が使用するリース資産とは、別の勘定科目です。リース投資資産の仕訳には3パターンありますので、仕訳の考え方だけでも押さえておきましょう。
よくある質問
リース投資資産とは?
所有権移転外ファイナンス・リース取引の貸し手の仕訳で使用する勘定科目で、将来にわたり回収するリース物件の回収価値を表します。詳しくはこちらをご覧ください。
リース投資資産とリース資産の違いは?
リース取引において、リース投資資産は貸し手側、リース資産は借り手側が使用する勘定科目になります。 詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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