- 更新日 : 2025年2月19日
諸掛の意味と仕入諸掛・売上諸掛の仕訳を解説
諸掛とは、商品に対して係る保険料や運送料などの費用を指します。諸掛には「売上諸掛」と「仕入諸掛」の2種類があり、それを自社と取引先のどちらが負担するかで使う勘定科目が異なるのです。
本記事では諸掛の読み方や英語表現、仕訳について紹介します。特に貿易や輸出に関わる事業を行う方は必須の内容といえるでしょう。
目次
諸掛とは
諸掛とは商品の仕入れや売り上げの際に係る、運送費用や送料などを指します。諸掛の読み方は「しょがかり」で、英語では「Freightage related expenses」として表記します。
諸掛には種類があり、仕入れ時の費用には「仕入諸掛(しいれしょがかり)」、商品の販売時の費用には「売上諸掛(うりあげしょがかり)」の2種類を使用します。諸掛を扱う上で重要なポイントは「その費用を誰が負担するか」です。
自社負担か、取引先の負担かによって仕訳の方法が異なり、この点を混同しやすいため注意しましょう。そこで以下では、仕入諸掛と売上諸掛の詳しい内容について解説します。
仕入諸掛とは
仕入諸掛は、商品の仕入や材料の購入などを行う際、その輸送に要する運送費や包装費などを処理するための勘定科目です。また、海外から輸入する際の関税や保険料など、商品購入に付随して生じる費用も仕入諸掛として扱います。
ただし、仕入諸掛の処理は、自社と取引先のいずかが負担するかによって、使用する勘定科目が変わります。
自社負担の場合(当方負担)
自社負担の場合は、仕入原価に算入し「仕入」勘定に含めて記帳。もしくは、新たに「仕入諸掛費」勘定を作り、独立した費用の勘定として処理する。
取引先負担の場合(先方負担)
仕入諸掛を取引先が負担する約束のもとで、経費を一時的に自社が負担した場合、勘定科目に「立替金」を使用。その後、取引先に対して後日請求、もしくは立替分を買掛金と相殺し「買掛金」から控除する。
売上諸掛とは
売上諸掛とは、商品や製品の販売時に、その商品の輸送に要する運送費や包装費などを処理するための勘定科目です。売上諸掛も仕入諸掛と同様、自社と取引先のどちらが負担するかによって使用する勘定科目が変わります。
自社負担の場合(当方負担)
自社負担の場合は「発送費」や「荷造費」などの勘定科目で処理。ただし、売上高との相殺はできないため注意が必要です。
取引先負担の場合(先方負担)
売上諸掛を取引先が負担する約束のもとで、経費を一時的に自社が負担した場合「立替金」に勘定科目を使用。そして、取引先に対して後日請求、もしくは立替分を売掛金と合算して請求する。
諸掛の仕訳・勘定科目は?
諸掛についてさらに理解を深めるために「仕入諸掛を当社が負担」「仕入諸掛を先方が負担」「売上諸掛を当社が負担」「売上諸掛を先方が負担」の4つのパターンに分け、それぞれの仕訳方法を解説します。
仕入諸掛を当社が負担する場合
仕入諸掛を自社負担する場合は「仕入」の勘定科目で処理します。その費用は決算の際に仕入勘定に含んだまま、売上原価に振替処理を行うことが一般的です。
【取引先から商品を100,000円で仕入れ。その商品に係る運送費として現金2,500円を着払いで支払う。運送費の2,500円は当社負担。】
また、仕入諸掛費の勘定科目でも処理可能です。なお、決算の際に未販売の商品にかかった「仕入諸掛費」は売上原価から「繰延仕入諸掛費」に振り替えを行い、翌期の資産として繰り越します。
【取引先から商品を100,000円で仕入れ。その商品に係る運送費として、現金2,500円を着払いで支払う。運送費の2,500円は当社負担。】
仕入諸掛を先方が負担する場合
仕入諸掛を先方が負担する場合には「買掛金」もしくは「立替金」の勘定科目で処理します。運送費を当社が立替え、最終的には先方が負担する契約などがこれに該当します。
【取引先から商品を100,000円で仕入れ。その商品に係る運送費として現金2,500円を着払いで支払う。当社負担が立替えた運送費の2,500円は買掛金と相殺。】
売上諸掛を当社が負担する場合
売上諸掛を当社が負担する場合には「発送費」の勘定科目で処理します。このとき、売上高とは分けて、別で処理する必要があります。仕入原価に加算する仕入諸掛とは異なるため、注意が必要です。
【取引先に対して商品を100,000円で掛け売り。その商品に係る運送費として現金2,500円を支払う。】
売上諸掛を先方が負担する場合
売上諸掛を先方が負担する場合には「売掛金」もしくは「立替金」の勘定科目で処理します。運送費を当社が立替え、最終的には先方が負担する契約などがこれにあたります。
【取引先に対して商品を100,000円で掛け売り。その商品に係る運送費として現金2,500円を支払う。当社負担が立替えた運送費の2,500円は売掛金として処理。】
諸掛について理解できましたか?
諸掛を会計処理する際には、まず「仕入」なのか、それとも「売上」なのか、また「自社負担」なのか、それとも「取引先負担」なのかという4つのチェックが必要です。また、商品の運送費だけでなく、保険料や輸入に係る関税なども諸掛に含まれるため、商品の仕入れや売り上げの際に係る費用の中身を精査しましょう。諸掛に該当する費用を正しく理解し、それぞれ適切に処理してみてください。
よくある質問
諸掛とは?
諸掛とは、商品の仕入や売上などの際に発生する送料などの費用のことです。諸掛には大きく分けて4つの仕訳処理の方法があります。詳しくはこちらをご覧ください。
仕入諸掛とは?
仕入諸掛は、商品の仕入や材料の購入などを行う際、その輸送に要する運送費や包装費などを処理するための勘定科目です。詳しくはこちらをご覧ください。
諸掛の読み方と英語表記は?
「諸掛」の日本語の読み方は「しょがかり」です。また英語で表現すると「Freightage related expenses」になります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
決算整理仕訳とは?やり方やポイントをわかりやすく解説!
企業は年に1回決算をする必要があり、決算作業の一つに決算整理仕訳の作成があります。 決算整理仕訳は、簿記のやり方に従って、減価償却費の計上や貸倒引当金の繰入、売上原価の計算・仕訳など期中では行わない処理を行います。 また、似ている言葉で決算…
詳しくみる【事例で解説】パソコンの勘定科目とは?ケース別に購入時の仕訳例まとめ
IT関連の企業をはじめとして、事務処理などのためにパソコンやマウスを購入する会社や個人事業主は多いでしょう。パソコンの購入は金額によって勘定科目が異なり、その後の会計処理も変わってきますので、しっかりポイントを押さえておきたいところです。今…
詳しくみるフランチャイズ加盟金を経費計上する場合の勘定科目まとめ
フランチャイズ(FC)は、本部が加盟店にブランド力や経営のノウハウを提供する代わりに、加盟店から加盟金やロイヤリティを得る契約のことをいいます。 加盟店が支払う対価のうち、加盟金はフランチャイズ契約の初期に支払う費用です。加盟金はどのような…
詳しくみる退職給与引当金とは?損益算入は廃止!具体例と計算方法
今回は、退職給与引当金の意味から具体的な計算方法、さらには税務的にはどのように取扱われているのかを紹介していきます。 退職給与引当金を計上する意味は? まずは、退職給与引当金の意味について確認しましょう。退職給与引当金とは、将来支払われる退…
詳しくみる退職金の勘定科目・仕訳は?損金算入はできる?具体例をもとに解説!
退職金とは、従業員や会社役員の退職にともない支払われる金銭のことです。退職時、または退職後に、勤続年数や役職に応じて支払われるもので、給与や賞与とは異なる性格をもつことから、給与や賞与と分けて会計処理を行います。 この記事では、会社が従業員…
詳しくみる業務用冷蔵庫を経費計上する際の勘定科目は?仕訳例も紹介
飲食店などにおける業務用の冷蔵庫はもちろん、オフィスに設置する冷蔵庫もビジネスに必要なものとして経費計上が可能です。その際の勘定科目は金額によって異なり、10万円未満であれば消耗品費、10万円以上は基本的に備品として資産に計上します。 本記…
詳しくみる