- 更新日 : 2025年2月20日
会計システムとは?主な種類と機能について
企業の会計業務は、適切な会計処理に加え、債権債務の管理や経営に合った管理が必要など、複雑です。多くの企業では、複雑な会計処理を効率良く済ませられるようにするため、会計システムが用いられています。
会計システムとは具体的にどのようなシステムを表すのか、この記事では、会計システムの種類と機能、目的など、会計システムについて解説します。
目次
会計システムとは
会計システムとは、企業の会計業務をシステム化することで、帳票などの作成作業、帳票の連携などを行えるようにしたものです。
従来は、伝票を作成して帳簿に転記し、試算表を作成。作成した書類から、決算書の作成や経営分析、管理など、作業は分かれていました。会計システムは、ひとつひとつに区分されていた作業を連動させ、データを一元化することによって、会計業務を効率良く回せるようにしたシステムです。
会計にかかわるすべての作業を個別に進めるのは手間がかかるほか、転記漏れなどでミスが発生しやすい可能性もあります。会計業務を円滑に進めるためにも、多くの企業で会計システムが導入されるようになりました。
会計システムの種類
会計システムを役割でみると、「財務会計システム」、「管理会計システム」、「債務・支払管理システム」の3種類に分けることができます。それぞれ単独でシステムとして存在することもあれば、複数の種類を有したシステムも存在します。
財務会計システム
財務諸表など、企業の会計情報を外部の利害関係者に提供することを目的とした会計を「財務会計」といいます。財務会計で必要なのは、期間や他社との比較ができる統一された決算書、そして決算書作成のための適切な会計処理です。
財務会計システムとは、つまり、財務会計の目的を果たすための機能が備わった会計システムを表します。具体的には、伝票入力や帳簿の作成、決算書の作成などの機能を有したシステムのことです。
帳票の作成など、日々の経理の仕事と密接に関係しているため、財務会計システムは比較的イメージしやすい種類といえるでしょう。
管理会計システム
株式の発行や社債の発行など、金融機関だけに限らないさまざまな資金調達が可能になったことから、企業は存続することが前提となりました。しかし、長期に渡って企業が存続するには、資金調達だけでは十分ではありません。企業に投資したいと思う投資者が増えるように、企業が存続できるように、状況をよく分析する必要があります。そこで必要となったのが、「管理会計」です。
管理会計とは、会社内部のステークホルダーである取締役や経営者が、会計状況を把握することを目的とした会計のこと。つまり、管理会計システムとは、企業の経営層が自社の経営状況を適切に確認できるようにしたシステムをいいます。すべての企業で導入されているシステムではありませんが、会計情報の把握と活用が経営にも関係してくることから、注目されるようになってきました。
債務・支払管理システム
債務・支払管理システムとは、支払手形や買掛金などの債務を取引先ごとに分け、支払が遅延なく行われているか管理するためのシステムです。
財務会計システムでは、債務の総額を確認することはできても、支払期限がいつかなど、取引先ごとの詳細までは基本的にみることができません。
取引先が多いほど複雑で、経理以外の部門も関わる可能性がある債務に関しては、詳細を管理できるシステムである債務・支払管理システムが便利です。
ほかにも、債務・支払管理システムと同じ目的で、債権の回収を管理する、債権管理システムも存在します。
インストール型とクラウド型の違い
中堅企業や大企業など、規模の大きい企業では、カスタマイズがしやすく、ほかのシステムと連携して管理できる「基幹システム」型を導入するケースがよく見られます。
一方、中小企業でよく取り入れられているのが、「インストール型」や「クラウド型」の会計システムです。
インストール型
インストール型は、パッケージを購入して、使用する端末にソフトをインストールするタイプのものです。パッケージで購入するため、パッケージ版ともいわれます。
特徴は、インストールした端末でしか使用できないこと。重要な会計情報を固定の端末でのみ編集できることからセキュリティ面を強化できますが、社外などから会計情報にアクセスすることが困難です。
クラウド型
クラウド型は、インターネットを利用したタイプのものです。データはインターネットをとおして保管されるため、インストール型のようにバックアップは必要なく、サービスにアクセスするだけで会計情報を閲覧、編集できるようになっています。
インターネットが利用でき、アクセス情報をもっていれば、どの端末からもデータにアクセスできるため、インストール型と違い、さまざまな場所からアクセスが可能です。税理士との会計情報の共有にも適しています。
会計システムを導入する目的とメリット
会計システムは、経理の仕事など、会計業務全般の業務効率化を目的としたシステムです。導入することによって、以下のようなメリットがあります。
会計業務をスピーディーに行える
会計システム導入によって得られる大きなメリットは、会計業務をスピーディーに行えることです。自動作成などの機能により、データを入力すれば、帳票やグラフを作成できるようになっているシステムが多いため、必要な書類をひとつひとつ作成する手間が省けます。
作業が楽になるため、管理会計まで手を付けられていなかった企業は、管理会計などさらに経営に注力した業務を行えるようになるでしょう。
ミスを軽減できる
ミスを軽減できるのも、会計システムを取り入れるメリットです。従来の帳票の作成では、転記などが必要で、伝票から帳簿への転記作業などでミスが生じる可能性があります。
一方、会計システムはひとつひとつの帳票を一から作成する必要のないものです。基本的には、伝票入力など1回の入力で、関連する帳票などに自動でデータが反映される仕組みになっています。入力したデータを修正する場合であっても、元データを修正すれば、関連するすべての帳票などに修正後のデータが反映されるため、ミスを最小限に抑えて業務を進めることが可能です。
制度に対応した会計処理が行える
会計システムは、財務会計などの制度に対応したシステムです。システムに倣って作成を進めることで、現制度に合った会計処理を行えるようになっています。なお、インストール型は現制度に対応させるためのアップデートが必要ですが、クラウド型は自動でアップデートされるため、インストールなどの対応は必要ありません。
会計システムの主な機能
次に、会計システムの主な機能を、会計システムの種類ごとに紹介します。
財務会計システムの主な機能
伝票入力
入金伝票、出金伝票、振替伝票など、取引を伝票として入力する機能です。紙の伝票での記録が従来の方法であるため、伝票入力といわれますが、実際に伝票を作成するというよりは、仕訳入力・登録に近い作業となります。
帳簿作成
現金出納帳、総勘定元帳など、伝票の取引状況から転記して作成する帳簿を作成する機能です。通常の財務会計システムでは、伝票入力(仕訳入力)によって、自動的に帳簿に勘定科目と金額が反映されるようになっています。
自動仕訳
自動仕訳は、これまでの仕訳データを予測して自動仕訳を提案する機能です。AI機能が搭載されているシステムなど、一部の財務会計システムに備わっています。
データ連携
データ連携機能は、銀行の入出金データ、クレジットカードデータなど、外部のデータを会計システム上にデータとして取り込む機能です。金額やすべての取引がデータとして取り込めるため、入力ミスを軽減できます。自動仕訳と同じで、一部の財務会計システムに備わっている機能です。
決算書作成
入力したデータをもとに、貸借対照表や損益計算書などの、財務会計に必要な決算書を作成する機能です。
帳票等の出力
作成した帳票や決算書を出力する機能です。印刷のほか、システムによっては、PDFでの出力、csvなどでの出力が可能です。
固定資産管理
固定資産は、取得した資産ごとに管理する必要があります。資産によって償却期間が異なりますし、償却方法(定額法や定率法など)も異なるためです。多くの財務会計システムには、固定資産を適切に管理するための機能が備わっています。
管理会計システムの主な機能
予実管理
予実管理とは、予算と実際を管理することです。部門ごと、あるいは事業ごとに振り分けて予算を、実際費と比較してどうだったか分析のために活用します。
経営分析
経営分析は、貸借対照表や損益計算書などからわかる数値などをもとに、経営や財政状態を分析する機能です。システムによっては、部門別に分析が可能であったり、グラフなどで視覚的にわかりやすくまとまっていたりするものもあります。
経費管理
経費管理とは、従業員の経費を管理するためのシステムのことです。
シミュレーション
シミュレーションとは、企業の会計情報をもとに、将来を予測する機能のこと。管理会計システムによっては、将来の経営状況をシミュレーションできるものもあります。
債務・支払管理システムの主な機能
支払消込
支払消込は、支払済みの債務を消込する機能です。手動で消込するシステムのほか、支払予定情報から、自動で消込を行うシステムもあります。
支払分析
支払分析は、債務残高や支払情報から、支払を分析できる機能のこと。どの部門で支払が多いか、支払に対して債務が過剰でないかなど、状況分析に役立ちます。
なお、債権管理システムも債務・支払管理システムと同様に、債権を適切に管理できるような機能が備わっています。
会計システムで効率良く会計業務を
会計システムは、会計業務を効率良く回すためのシステムです。会計システムは、役割別に、財務会計システム、管理会計システム、債務・支払管理システムに分けられます。どのシステムも、会計業務の負担を減らし、適切に処理を行うのに便利なシステムです。
会計システムには、さまざまなタイプがありますが、中小企業で導入されることが多いのが、インストール型やクラウド型。いずれも、一からシステムを構築する必要がないため、導入しやすいのが利点です。
よくある質問
会計システムとは?
会計システムとは、企業の会計業務をシステム化することで、帳票などの作成作業、帳票の連携などを行えるようにしたものです。詳しくはこちらをご覧ください。
会計システムにはどんな種類があるの?
代表的なものに「財務会計システム」、「管理会計システム」、「債務・支払管理システム」の3種類があります。詳しくはこちらをご覧ください。
会計システムを導入するメリットは?
「会計業務がスピーディになる」「ミスを軽減できる」などがあります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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