- 更新日 : 2024年8月8日
特別償却準備金とは?メリットから仕訳方式まで解説!
特別償却準備金は特別償却をするために積み立てるお金を指します。これを理解するためには、そもそも「特別償却とはどんなものか」を理解する必要があります。
ここでは特別償却の定義や会計上の機能、種類などを解説するとともに、特別償却準備金の定義と財務諸表での位置付け、そして仕訳方法について解説します。
特別償却とは?
特別償却の定義と機能
まずは特別償却準備金の前提となる特別償却の定義を知っておきましょう。特別償却とは租税特別措置法に基づいて、一定の要件を満たす固定資産について通常の減価償却費以外に特別な償却額を損金として認める特別な減価償却のことです。
政策的見地からの課税の延期を目的としており、実質的な国からの無利子融資機能を果たしています。というのも特別償却は通常の減価償却(普通償却)よりも多くの減価償却費を計上でき、利益減・節税効果があるからです。
しかし取得価額に応じた金額しか損金として計上できないため、最終的な損金算入額は変わりません。
すなわち特別償却には損金算入時期を早め、税金の支払いを繰り延べる効果があるのです。したがってこれは実質的に国から節税という形で無利子の融資を受けている、ということができます。
様々な特別償却制度
特別償却制度には様々なものがあります。
・エネルギー需給構造改革推進税制(エネルギー需給構造改革推進設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除)
・子育て支援税制(事業所内託児施設等の割増償却)
・生産性向上設備投資促進税制(生産性向上設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除)
・環境関連投資促進税制(エネルギー環境負荷低減推進設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除)
中小企業等投資促進税制であれば資本金または出資額や従業員数、「機械等」についての種類や金額などについての要件が決められています。
環境関連投資促進税制では「エネルギー需給構造改革推進設備等」についての種類の定めはありますが、適用対象法人に関しては「青色申告書を提出する法人」という定めしかありません。このように制度によって特別償却を利用する要件は変わるため、利用の際は注意が必要です。
特別償却の種類
特別償却は計算方法の違いによって2種類に大別されます。1つは「初年度一時償却(初年度特別償却)」で、もう1つは「割増償却」です。
初年度一時償却では償却資産を取得した事業年度に限って、取得価額の全部または一部を費用計上します。これに対して割増償却は一定期間にわたって普通償却額の一定割合を割増して費用計上する方法を指します。
・初年度一時償却
特別償却費=固定資産の取得価額×特別償却率
・割増償却
割増償却費=固定資産の普通償却費×割増率
特別償却準備金の定義と仕訳方法
特別償却準備金とは?
特別償却準備金は各種特別償却制度の適用を受ける場合に、積立金方式によって特別償却に相当する金額を積み立てるお金のことです。
特別償却の対象となる資産に応じて定められた法定耐用年数に相当する期間に、均等に益金として算入されます。なお、法定耐用年数が10年以上のものは7年間、5年以上10年未満のものは5年間にわたって益金算入されます。
特別償却準備金の財務諸表での位置付け
特別償却準備金は貸借対照表の純資産の部、株主資産の中の利益剰余金のうち「その他利益剰余金」に区分されます。その他利益剰余金は利益剰余金のうち利益準備金以外のものを指し、さらに任意積立金と繰越利益剰余金に分けられます。
このうち任意積立金は企業が一定の目的を持って積み立てるものです。特別償却準備金はこの任意積立金の一種として処理されます。
特別償却準備金の仕訳方式
特別償却準備金の仕訳方法としては次の3つの方式が認められています。
1.通常方式
→減価償却費として費用計上し、資産の帳簿価額を減額させる方法。
2.準備金方式
→減価償却費として費用計上し、特別償却準備金(負債)として積み立てる方法。
3.剰余金処分方式
→剰余金の処分によって、特別償却準備金として積み立てる方法。
企業会計上は剰余金処分方式が正しいと考えられていますが、税務上の処理にあわせるため通常方式が採用される場合もあります。
まとめ
特別償却は取得した償却資産を普通償却よりも早期に費用計上することで、納税を後回しにするための制度です。これを利用する際に使用する勘定科目が特別償却準備金です。
仕訳には3つの方式が認められていますが、これも状況に応じて使い分ける必要があります。適用を受ける特別償却制度について理解を深めるとともに、仕訳方式についても覚えておきましょう。
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国税庁|特別償却・特別税額控除
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