- 更新日 : 2025年2月20日
割引率とは?計算式などをわかりやすく解説
将来受け取れる金銭を今受け取ると考えた場合の現在の価値を「割引現在価値」といいますが、割引現在価値を算出する時に用いる割合のことを「割引率」といいます。
割引率は減損会計や退職給付会計、資産除去債務の算出の際も利用されますが、どのように使われるのでしょうか。割引率の詳細、および割引率から割引現在価値を算出する際の計算方法などについて解説します。
割引率とは
割引率は、将来受け取る金銭などを現在の価値に換算する際の割合を表したものです。1年単位で割り引かれる割合をパーセンテージで表します。
割引率を知るためには、なぜ将来受け取る金銭と今受け取る金銭の価値が違うのかを押さえておく必要があります。以下で一つずつ確認していきましょう。
■利回りがあるから
金銭を金融機関に預ける場合、利息が付きます。例えば100万円を年利0.1%で預けた場合、1年後には100万1,000円になります(税金等は考慮していません)。また、株式等で運用した場合も期待される運用利回りがあり、期待どおりになると運用前よりも資産は増えます。よって、今の価値と将来の価値が違うといえるのです。
■物価上昇があるから
物価上昇の影響も見逃せません。現在1万円の価値がある商品は1万円で購入できますが、物価が上昇し続ければ、10年後は1万円を持っていても同じ商品を購入できません。このことからも、今の価値と将来の価値が異なることを説明できます。
■すぐには受け取れないお金だから
定期預金や満期まで持つ国債のように、預け入れた後、すぐに受け取れない金銭もあります。預け入れ中は使えないという不自由を受け入れるため、その分現在の価値よりも将来の価値が高くなるという考え方です。
割引率の計算
割引率を決める要素は以下の2つです。
- すぐに使えないリスク
定期預金や国債などは、預け入れた後すぐに受け取れないため、現在の価値と将来の価値が乖離します。その差から割引率を決めます。 - 将来に対するリスク
会社に対して投資した場合、投資した金額が将来きちんと戻ってくるとは限りません。戻るかどうかの確実度に応じて割引率を決めるという考え方です。
経過年数や対象が同じであっても、リスク等により割引率は異なることを認識しておきましょう。
なお、割引率が判明している場合、割引現在価格は以下の計算式で算出できます。
例えば、割引率1.0%で2年後に100万円の価値があるものの場合、以下のように計算します。
100万円÷(1+0.01)2 =100万円÷1.0201=約98万296円
約98万296円が割引現在価値です。
固定資産の減損会計と割引率
減損会計とは、価値が下がった固定資産の帳簿価格を実態に即して回収可能価額まで減額する会計処理のことです。
回収可能価額の中から使用価値を算定する際は、現在から将来にわたる回収可能性を反映する必要があります。その際使われる割引率は、金銭の時間価値を反映した税引前のものとすることが定められています。
また、資産または資産グループにかかる将来のキャッシュ・フローが見積もりから乖離するリスクがある場合は、そのリスクも割引率に反映させてください。
退職給付会計と割引率
退職給付会計の場合、以前は従業員の平均残存勤務期間に類似した年数の債券利回りを割引率として利用できました。
しかし、2012年の会計基準改正により、「安全性の高い債券利回り」を割引率の基礎とすることに加え、退職給付支払いごとに支払い見込期間も反映した割引率を算出することが定められました。具体的には「退職給付の支払い見込期間と支払い見込期間ごとの金額を反映した単一の加重平均割引率」「退職給付の支払い見込期間ごとの複数の割引率」のいずれかです。
なお、一度採用した割引率は継続して使用しますが、環境が変化した場合は必要に応じて見直しを行います。
資産除去債務と割引率
資産除去債務とは、会社が有形固定資産を取得・使用する場合に生じる、将来の除去義務のことです。具体的には、定期借地権契約終了後の建物の除去義務などがあります。企業会計では、この債務についてかかる費用を「負債」として計上しなければなりません。債務についてかかる費用は、業者に見積もってもらい算出します。
ちなみに、資産除去債務を計上する際は、見積もりで確認できた金額をそのまま計上するわけではありません。見積金額に一定の割引率を適用する必要がありますが、その際には有形固定資産取得から除去までの期間に対応した利付国債の利回りを割引率にするのが一般的です。その際、リスク等は考慮されません。
割引率を理解し、正しい企業会計を行おう
割引率とは、将来受け取る金銭などを現在の価値に換算する際の割合を表したもので、割引現在価値を算出する際に使われます。
割引率はどのような場合でも一定というわけではなく、経過年数や対象、性質によって異なります。特に企業会計においては、会計基準によって使用される割引率が異なりますので注意が必要です。「退職給付会計」「資産除去債務」など、目的に応じた割引率の求め方を確認しておきましょう。
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