• 更新日 : 2023年9月8日

黒字倒産とは?原因や回避方法の解説

黒字倒産とは?原因や回避方法の解説

黒字倒産とは、商品やサービスの販売で利益が出ているにもかかわらず、決済資金が不足して支払いが滞り、倒産してしまうことです。決して珍しいものではなく、倒産する企業は高い割合で黒字倒産しています。この記事では、黒字倒産の原因と回避法、および作成すれば黒字倒産の回避に有効な、キャッシュフロー計算書について解説します。

黒字倒産とは

黒字倒産とは、商品やサービスの販売は好調で、利益が出ている状況(=黒字)でありながら、決済資金が不足して支払いが滞り、倒産してしまうことです。企業間取引(BtoB)においては商品やサービスを販売し、帳簿上では売上が計上されても、実際に代金を受け取れるのが数カ月後になることは多くあります。売上が計上されてから実際に代金を受け取るまでの間に、仕入代金や人件費、借入返済などの支払いが続いてしまうと、支払いに必要な資金が不足してしまうことがあるのです。

黒字でありながら倒産するのは、ちょっと奇妙な感じがする人もいることでしょう。しかし、黒字倒産は決して珍しくありません。実際、東京商工リサーチの2020年「倒産企業の財務データ分析」調査によれば、2020年に倒産した企業7,773社のうち赤字だったのは53.2%で、46.8%は黒字でした。倒産した企業のうち約半数は、黒字倒産だったのです。

出典:2020年「倒産企業の財務データ分析」調査|東京商工リサーチ

特に、成長期にあるスタートアップなどは、売上が急激に伸びるとともに売掛金や在庫が膨らみます。そのため、資金繰りが追い付かなくなって黒字倒産する例は多くあります。

黒字倒産の原因

黒字倒産は以下のようなことが原因となって起こります。

過剰な在庫

黒字倒産の原因としてまず挙げられるのは、過剰な在庫です。一般に在庫は販売されて現金化されるまでに時間がかかるため、資金的な負担となります。過剰な在庫を抱えてしまえば、現金化されるまでの期間が長くなり、売れ残りのリスクもあるため、資金繰りに無理が生じがちです。

売掛金の未回収

売掛金が回収できないことも黒字倒産の原因となります。企業間取引では一般に、商品を引き渡して売上が計上されてから、実際に代金が入金されるまで数カ月かかります。この場合、売上が計上されると同時に発生するのが、将来的にお金を受け取る権利である売掛金です。

どんなに売上が計上されても、売掛金が回収されて現金化されなければ資金繰りは良くなりません。未回収の売掛金がたまってしまえば、黒字倒産のリスクは高まります。さらには、取引先が倒産して売掛金の回収が不能になる事態になれば、一気に黒字倒産へ陥ってしまいかねません。

無理な投資

無理な投資も黒字倒産の原因の1つです。事業の成長のためには、設備や人材への適切な投資は行わなければなりません。しかし、一般に投資は回収までに時間がかかるため、回収までの間に資金不足となる可能性があります。借入などをして無理な投資を行った場合には、資金繰りの悪化を招き黒字倒産となるリスクがあります。

借入返済額や納税額の増大

上述してきた過剰な在庫や売掛金の未回収、無理な投資などで資金繰りが悪化しているところへ、借入返済額や納税額が増大するタイミングが重なると、黒字倒産のリスクが高まります。一般に借入金の返済は重要なことですが、手元の資金がなくなるほど力を入れれば黒字倒産につながります。

黒字倒産の回避方法

黒字倒産を回避するためには、まずキャッシュフロー(資金の流れ)の管理が必要です。資金繰り表を作成し、商品を販売したらいつまでにいくらの入金があるのか、仕入れをしたらいつまでにいくらの支払いが必要なのか、入出金状況を細かく把握しなければなりません。

そのうえで、以下の施策を実行するのが良いでしょう。

適切な在庫管理

過剰在庫を減らし、適時適量の仕入れを行いましょう。

回収・支払条件の見直し

売掛金の回収はできるだけ早く、買掛金の支払いはできるだけ遅くすれば資金繰りは楽になります。回収は先払い、支払いは後払いや分割払いを視野に入れ、取引先と取引条件の見直しを交渉しましょう。

資金調達力の強化

資金不足に陥らないよう、必要な資金を必要なときに調達できる体制を構築しておくことも重要です。そのためには、取引先金融機関との関係強化に務めるとともに、複数の金融機関と取引して資金調達先の多様化を図ることが必要となるでしょう。

キャッシュフロー経営を心がける

黒字倒産の回避には、日頃からキャッシュフローがプラスになるような経営、「キャッシュフロー経営」を心がけることがおすすめです。そのためには、次で解説するキャッシュフロー計算書を作成するのが良いでしょう。

キャッシュフロー計算書とは

キャッシュフロー計算書とは、企業の現金収支の流れを示す財務諸表の1つです。中小企業に作成義務はありませんが、作成すれば自社のキャッシュフローの把握が容易になります。

キャッシュフロー計算書では、資金繰り表のように細かい取引の内容は記録しませんが、営業活動、投資活動、財務活動の3つに分けて、資金の流れの大枠を把握します。

  • 営業活動によるキャッシュフロー
    企業の本業から生じる現金の流れ。販売した商品の代金や、仕入れや給料の支払いなど。
  • 投資活動によるキャッシュフロー
    有価証券や固定資産の売却や購入にかかわる現金の流れ。設備の購入や不動産の売却など。
  • 財務活動によるキャッシュフロー
    借入金や社債、株式にかかわる現金の流れ。借入金の借入や返済、株式の発行や買い戻しなど。

営業活動によるキャッシュフローがプラスであり、その範囲で設備投資や借入金の返済ができるのなら、経営は順調であるといえます。その一方、営業活動によるキャッシュフローがマイナスで、投資活動や財務活動によるキャッシュフローがプラスの場合には、資産の売却や借入により経営が成り立っている状態です。黒字倒産のリスクが高まっているといえるでしょう。

なお、キャッシュフロー計算書については、以下の記事でも詳しく解説しています。

キャッシュフロー計算書を作成して黒字倒産を回避しよう

利益は出ており黒字なのに、支払いの資金が不足するため倒産する黒字倒産。2020年に倒産した企業のうち約半数は黒字倒産しています。

黒字倒産の原因は、過剰な在庫や売掛金の未回収、無理な投資、借入金や納税額の増大などです。資金繰り表とキャッシュフロー計算書を作成してキャッシュフロー経営を心がけ、黒字倒産を回避しましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談していただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

貸借対照表の関連記事

新着記事