- 更新日 : 2025年2月19日
売上の計上基準の種類とは?
商売をしていく上で最初に決断しなければならないことのひとつに、どの時点で売上を計上するか、つまり、「売上の計上基準」をどれにするかというものがあります。
売上の計上基準をいったん採用すると、正当な理由がない限り変更は認められていません。ここでは、売上の計上基準にある種類を学びながら、どの業種にはどの基準を採用するべきかを検証してみましょう。
売上の計上基準について
現金商売をしている個人店舗では、商品やサービスと引き換えに現金を受け取った時点で売上となります(現金主義)。しかし、ほとんどの取引が現金でない限り、入金時に売上を計上しても、税務署は認めてくれません。
現金ではなく売掛金や買掛金を利用して事業を運営する会社が採用する売上の計上時期は、業種または事業の運営方法によって異なっており、多くの場合、「実現主義」と呼ばれる原則が用いられています。
いずれにせよ、どの計上基準を採用するかは、業種や取引事情、事業の運営方法を考慮した上で決定されなければならず、会社の実情に沿った最も合理的な計上基準を採用し、毎期継続して適用しなければなりません。
売上の計上基準を決める
実現主義とは、売上(収益)を計上する時期は取引が実現した時点であるとする考え方で、現金を受け取った時点ではありません。しかし、実現主義を原則とする計上基準にも、いくつかの種類があります。
例えば、ある会社が3月末に精密機械Aの注文を受けたとします。4月5日にその会社の倉庫からAが出荷され、4月7日にAを発注先に納品しました。
そして、4月10日に取引相手が検品を済ませ、問題がないという旨の連絡をしてきました。さて、この会社が精密機械Aの売上を計上するのはどの時点でしょう?
正解は・・・
この会社が売上の計上基準をどの時点に定めているかによって決まります。「出荷基準」を採用していれば4月5日に売上が帳簿に記録され、「納品基準」を採用していれば4月7日、「検収基準」を採用していれば4月10日となります。
商品・製品を売る場合
商品・製品を販売している会社にとって、収益が実現するのは、原則として商品が取引相手に引き渡された時点です。法人税法でも、棚卸資産の販売から得た売上(収益)は、「その引渡しがあった日の属する事業年度の益金の額に算入」するよう定められています。
それでは、棚卸資産を扱う会社の主な売上の計上時期を見てみましょう。
・「出荷基準」とは、商品・製品を店舗や倉庫から取引相手に出荷した時点で引き渡したとする基準で、物販業でよく採用されています。
商品が相手方に到着した時点ではないため、出荷したことを示す記録を保存しなければならないことが注意点として挙げられます。
・「納品基準」とは、出荷した日ではなく、相手に届いた日、つまり納品日に売上を計上する基準です。納品したことの証拠として、納品書に取引先の相手から日付入りの受領印を押してもらうことが一般的です。
・「検収基準」とは、納品する商品の品質や種類、数量が重視される場合に用いられ、製造業者間の取引や前述の例で取り上げた精密機械のように試運転が必要な場合によく使われる基準です。
取引相手が納品されたものを検収したことで、引渡しが完了したとみなされます。
土地・建物を売る場合
そのほか、「使用収益開始基準」は、土地・建物を販売する不動産業などで採用され、取引相手が商品を利用し、収益をあげることが可能になった時点を基準とします。
請負の場合
注文物を作り、完成品を引き渡した時点で売上を計上する「完成引渡基準」や、完成部分のみを納めた時点で売上計上する「部分完成基準」は、請負の建築・建設工事業で多く採用されています。
そのほかにも、受注制作のソフトウェアの制作や、建設業で工事が完成した時点に計上する「工事完成基準」、工事の進行具合に応じた売上を期間ごとに分配して計上する「工事進行基準」などがあります。
売上の計上基準は頻繁に変えられる!?
このように、売上の計上基準にはさまざまな種類があり、いったん採用すると、決定した基準は継続して使用することになっています。変更は、取引事情や販売方法、契約条件が変わった場合など、正当な理由がない限り認められていません。
まとめ
もし、税務調査や監査役の会計監査で売上の計上基準が適格でないと判断されるなら、財務諸表には売上(収益)が正確に反映されてないとみなされます。計上基準を決定する際には、その基準が合理的かつ会社の実情を的確に反映しているかを判断し、慎重に決断しなければなりません。
関連記事
・法人税を節税するために押さえておきたい3つのポイント
・売掛金のトラブルを未然に防ぐ!貸し倒れを避けるための正しい対処法とは?
・キャッシュフロー計算書は、間接法と直説法どちらが良いか?
よくある質問
売上の計上基準とは?
売掛金や買掛金を利用する会社の売上の計上時期は、業種または事業の運営方法によって異なっており、多くの場合「実現主義」という原則が用いられています。詳しくはこちらをご覧ください。
土地・建物を売る場合の売上の計上基準は?
取引相手が商品を利用し収益をあげることが可能になった時点を基準とする「使用収益開始基準」が採用されています。詳しくはこちらをご覧ください。
請負の場合の売上の計上基準は?
注文物を作り、完成品を引き渡した時点で売上を計上する「完成引渡基準」や、完成部分のみを納めた時点で売上計上する「部分完成基準」などが採用されています。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
繰り越しヘッジ損益とは?デリバティブの定義から解説!
繰延ヘッジ損益勘定は、先物取引やオプション取引といったデリバティブについて、期末時点での時価評価による差額を翌期以降に繰り延べるときに使用する勘定科目です。 財務諸表では、貸借対照表の純資産の部の評価・換算差額等として表示されます。 デリバ…
詳しくみる期間按分とは?計算方法・対象となる勘定科目・エクセル管理も解説!
月次処理や決算など会計処理をしていく過程で「期間按分」が必要になるケースがあります。「期間按分」とは、一定の基準に基づいて収益や費用を対応する期間それぞれに按分する計算方法を指します。今回はこの「期間按分」について、基本的な考え方や計算方法…
詳しくみる仕入帳の書き方は?作成義務の有無や記入例を解説
仕入帳とは、仕入によって発生するお金の流れを記載する書類です。仕入先や単価、数量など、仕入にかかわる情報はすべて記載します。仕入帳があることでお金の流れを時系列に把握しやすくなりますが、作成義務はありません。本記事では、仕入帳の書き方や保存…
詳しくみる収入印紙を買ったときの勘定科目は何を使えばいい?
この記事では、収入印紙を買ったときの会計処理で、一般的にどの勘定科目を使えばよいかについてお伝えします。 収入印紙をすぐに文書に貼って使用するのか、しばらく手元においておくのか、それによって勘定科目は変わります。また、収入印紙を買った場所に…
詳しくみる純額表示と総額表示の違いをわかりやすく解説
2021年4月1日から「収益認識に関する会計基準」が適用されたことによって、収益の表示方法が変更されました。強制適用を受ける上場会社や大会社などでは、これまでの収益認識の仕訳を会計基準に合わせて変更しなければならなくなったのです。 新たに適…
詳しくみる固定資産売却損とは?仕訳方法から消費税の取り扱いまで解説
固定資産を売却した際に発生することがある固定資産売却損。どのようなケースで発生し、会計処理はどのように行えば良いのでしょうか。 ここでは、固定資産売却損の基本的な概要や仕訳方法について解説します。 固定資産売却損の基礎知識 土地や建物、車両…
詳しくみる