• 作成日 : 2025年3月3日

ソフトウェアは一括償却資産に計上できる?要件や判定方法などを解説

ソフトウェアの取得価額が20万円未満のときは、一括償却資産の勘定科目で計上できます。一括償却資産として計上した場合は、3年間で減価償却が可能です。本記事では、ソフトウェアが一括償却資産になる要件や一括償却資産に計上するメリット・デメリット、一括償却資産に計上するかどうかを判定する方法について解説します。

ソフトウェアは一括償却資産に計上できる?

ソフトウェアは、一括償却資産として計上できます。ただし、すべてのソフトウェアが一括償却資産の勘定科目で計上できるわけではありません。

事業の用に供したソフトウェアは、正しく会計処理をすることが必要です。要件ごとに勘定科目や会計処理の方法が変わるため、あらかじめ確認しておきましょう。

一括償却資産とは

一括償却資産とは、取得価額が20万円未満の減価償却資産のことです。なお、減価償却資産とは事業などのために用いられる建物や設備、器具備品などの資産のことで、一般的には時間の経過により価値が減少します。

減価償却資産を取得したときは正しく会計処理をすることが必要です。通常は耐用年数に合わせて償却していきますが、取得価額が20万円未満の場合は一括償却資産として計上し、3年にわたり取得価額を3分の1ずつ必要経費として償却します。

一括償却資産について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

ソフトウェアが一括償却資産になる要件

ソフトウェアを一括償却資産として計上するときは、以下の要件をすべて満たすことが必要です。

  • 使用可能な期間が1年以上である
  • 取得価額が20万円未満である

なお、一括償却資産として計上するときは、資産ごとに個別に会計処理をする必要はありません。

そもそも一括償却資産とは会計処理を簡略化するための方法でもあるため、一括償却資産に該当する資産はまとめて計上し、3年に分けて減価償却していきます。

ソフトウェアを一括償却資産に計上するメリット

使用可能な期間が1年以上で、なおかつ取得価額が20万円未満のソフトウェアであっても、必ずしも一括償却資産として計上しなくてはいけないわけではありません。消耗品費通信費などの勘定科目で計上し、耐用年数に合わせて償却する会計方法も選択できます。

しかし、一括償却資産として計上することにより、いくつか会計処理上のメリットを得られるケースがあります。主なメリットは以下をご覧ください。

  • 3年間均等に費用計上することで税負担を分散できる
  • 資産管理の方法がシンプルになる
  • 償却資産税の対象にならない

それぞれのメリットを解説します。

3年間均等に費用計上することで税負担を分散できる

使用可能な期間が1年未満の資産や、取得価額が10万円未満の資産は、原則として全額を一括で損金算入しなくてはいけません。また、取得価額が30万円の資産なら、条件を満たす中小企業に限り、「少額減価償却資産の特例」を適用して取得価額の全額を一括で損金算入できます。

損金として算入する金額が増えると、課税対象額を減らし節税できることがあります。しかし、損金算入する金額が特定の年度に集中すると、それ以外の年度の税負担が重くなり、経営に影響をおよぼす恐れがあるでしょう。

一方、ソフトウェアなどの償却資産を一括償却資産とすれば、3年間で均等に分けて必要経費として計上できます。特定の年度の損金算入額が極端に増えることを回避でき、税負担も分散しやすくなります。

資産管理の方法がシンプルになる

一括償却資産とすれば、耐用年数に合わせて計上額を計算する必要はありません。法定耐用年数が3年を超える資産であっても、一様に3年で必要経費として計上するため、取得価額を3等分するだけで簡単に計上額を算出できます。

また、一括償却資産は資産個々に減価償却費を計算する必要がありません。複数の資産があっても一括償却資産としてまとめて計上額を記載すればよいため、会計処理がシンプルになります。

償却資産税の対象にならない

償却資産税という税金はありませんが、固定資産のうち償却資産に課せられる税金を償却資産税と呼ぶケースもあります。ソフトウェアは無形固定資産のため、減価償却資産ではありますが、償却資産税の課税対象ではありません。

また、ソフトウェア以外の減価償却資産の中には、償却資産税の課税対象のものもあります。しかし、一括償却資産として計上する場合は減価償却をしないため、償却資産税の対象外となります。

ソフトウェアを一括償却資産に計上するデメリット

ソフトウェアを一括償却資産として計上すると、会計処理がシンプルになるだけでなく、税負担を分散できるといったメリットがあります。しかし、いくつかデメリットが生じることもあります。主なデメリットは以下をご覧ください。

  • 初年度の費用負担が増える場合がある
  • 4年目以降は費用計上できない

それぞれのデメリットを解説します。

初年度の費用負担が増える場合がある

ソフトウェアを一括償却資産として会計処理をする場合は、3年間に分けて取得価額を経費計上します。そのため、課税所得額を減らす効果も3年間に分散されます。

しかし、実際にソフトウェアの費用を支払ったのは初年度のみです。初年度に計上される費用が減ることにより、課税所得額が減額される金額も減るため、初年度の費用負担が増える可能性があります。

ソフトウェアを購入した年度の経費支払が多い場合は、一括償却資産として会計処理をするのではなく「少額減価償却資産」や「消耗品費」「通信費」として、取得価額を全額経費計上するほうがよいかもしれません。ソフトウェアなどの償却資産やその他の資産を計上するときは、その年度に支払う経費や課税所得額の多寡などを総合的に考慮して、適切と思われる方法で計上するようにしましょう。

4年目以降は費用計上できない

ソフトウェアを一括償却資産として会計処理する場合は、経費計上できる期間は3年間に限られます。本来、ソフトウェアの法定耐用年数は5年です。複写して販売するための原本となるソフトウェア、もしくは研究開発用のソフトウェアの法定耐用年数は3年ですが、一括償却資産として会計処理する場合は、ソフトウェアの用途に関係なく一律3年間で経費計上します。

そのため、4年目以降は経費として費用計上できません。4年目以降も費用として計上したいときは、複写して販売するための原本でなく、なおかつ研究開発用ではないことを確認したうえで、ソフトウェアの勘定科目で会計処理をしましょう。

ソフトウェアを一括償却資産に計上すべきかの判定方法

ソフトウェアを一括償却資産に計上すべきかどうかは、その年度にどの程度の資産を経費計上したいかによっても異なります。取得価額や目的によって、適切な会計処理を実施しましょう。

取得価額が10万円未満のソフトウェアは、以下の2つの会計処理方法から選択できます。

  • 一括償却資産として3年間で経費計上する
  • 消耗品費もしくは通信費として1年で経費計上する

次に、取得価額が10万円以上20万円未満のソフトウェアは、以下の3つの会計処理方法から選択できます。

  • 一括償却資産として3年間で経費計上する
  • 少額減価償却資産の特例を活用し消耗品費として1年で経費計上する
    ※年間300万円以下。青色申告をしている中小企業などに限られる。
  • 法定耐用年数に従い減価償却する
    ※法定耐用年数は5年。複写して販売するための原本となるソフトウェア、もしくは研究開発用のソフトウェアの場合は3年。

取得価額が20万円以上30万円未満のソフトウェアについては、次の会計処理方法から選択します。

  • 少額減価償却資産の特例を活用し消耗品費として1年で経費計上する
    ※年間300万円以下。青色申告をしている中小企業などに限られる。
  • 法定耐用年数に従い減価償却する
    ※法定耐用年数は5年。複写して販売するための原本となるソフトウェア、もしくは研究開発用のソフトウェアの場合は3年。

取得価額が30万円以上のソフトウェアについては、次の会計処理を実施します。

  • 法定耐用年数に従い減価償却する
    ※法定耐用年数は5年。複写して販売するための原本となるソフトウェア、もしくは研究開発用のソフトウェアの場合は3年。

課税対象額が少ないときは1年あたりの経費計上額を減らすためにも、一括償却資産や法定耐用年数に従った減価償却がよいでしょう。課税対象額が多いときは少額減価償却資産の特例を活用できないか、要件を確認してみてください。

ソフトウェアを一括償却資産に計上する場合の仕訳

ソフトウェアを一括償却資産として会計処理をするときは、購入時と決算時に仕訳が必要です。まず購入時は借方に「一括償却資産」、決算時は貸方に「一括償却資産」と記載してください。

購入時の仕訳

借方貸方摘要
一括償却資産150,000円現金150,000円会計ソフト

決算時は3年間に分けて計上します。ソフトウェア以外の一括償却資産がないときは、次のように仕訳をしてください。ソフトウェア以外の一括償却資産があるときは、すべてまとめて仕訳をするため、各金額や摘要は変わります。

1年目決算時の仕訳

借方貸方摘要
減価償却費50,000円一括償却資産50,000円1/3年目

2年目決算時の仕訳

借方貸方摘要
減価償却費50,000円一括償却資産50,000円2/3年目

3年目決算時の仕訳

借方貸方摘要
減価償却費50,000円一括償却資産50,000円2/3年目

ソフトウェアを一括償却資産に計上しないとどうなる?

ソフトウェアを少額減価償却資産の特例を利用して計上するときは、以下のように仕訳をします。

購入時の仕訳

借方貸方摘要
消耗品費150,000円現金150,000円会計ソフト

自社利用目的のソフトウェアを法定耐用年数で減価償却するときは、以下のように5年で減価償却します。

購入時の仕訳

借方貸方摘要
ソフトウェア150,000円現金150,000円会計ソフト

1年目決算時の仕訳

借方貸方摘要
減価償却費30,000円ソフトウェア30,000円1/5年目

2年目決算時の仕訳

借方貸方摘要
減価償却費30,000円ソフトウェア30,000円2/5年目

3年目決算時の仕訳

借方貸方摘要
減価償却費30,000円ソフトウェア30,000円3/5年目

4年目決算時の仕訳

借方貸方摘要
減価償却費30,000円ソフトウェア30,000円4/5年目

5年目決算時の仕訳

借方貸方摘要
減価償却費30,000円ソフトウェア30,000円5/5年目

ソフトウェアを一括償却資産に計上しない場合の注意点

ソフトウェアを一括償却資産として計上しないときは、次の点に注意が必要です。

  • 償却資産税の対象資産か確認する
  • 償却資産税申告書の作成・提出が必要

各ポイントを解説します。

償却資産税の対象資産か確認する

一括償却資産は、償却資産税の対象ではありません。一括償却資産として処理をしない場合は、10万円以上の資産の合計額が150万円を超えると償却資産税の対象となりますが、無形固定資産であるソフトウェアは対象外です。

償却資産税申告書の作成・提出が必要

事業用の償却資産については、償却資産申告書の作成・提出が必要です。ただし、一括償却資産として処理した場合は償却資産申告書に含めません。

ソフトウェアは適切な方法で会計処理しよう

ソフトウェアは一括償却資産として会計処理できるケースもありますが、必ずしも最善の方法とは限りません。

例えば経費支払が多い年度に一括償却資産として計上すると、経費算入できる金額が減り、予想以上に課税対象額が増えることもあります。その年の課税対象額も考慮に入れ、他の会計処理方法とも比較しながら、適切な方法で会計処理をしましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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