- 更新日 : 2025年2月20日
変動損益計算書とは?テンプレートとあわせて作り方や分析方法を解説
変動損益計算書は、費用を変動費と固定費に区分して作成した損益計算書です。損益分岐点売上高や貢献利益などを簡単に計算できるため、経営分析に役立ちます。今回は、経営分析に役立つ変動損益計算書のExcel(エクセル)テンプレートの紹介や作り方を解説します。
目次
変動損益計算書とは
変動損益計算書とは、損益計算書に記載される原価や費用の各科目を変動費と固定費に区分して作成する書類のことです。
損益計算書との違い
損益計算書も変動損益計算書も、一会計期間における最終的な利益の値は変わりません。損益計算書と変動損益計算書で異なるのは構成です。損益計算書は、費用を原価、販売費及び一般管理費、営業外費用、特別費用に区分して作成します。
変動損益計算書は、原価と販売費・一般管理費を変動費と固定費に区分して作成します。損益計算書に比べて、変動費と固定費の額や比率がわかりやすい書類です。
変動損益計算書を作成するメリット
変動損益計算書を作成する主なメリットを紹介します。
固定費を明確に把握できる
変動損益計算書を作成するメリットのひとつは、固定費を明らかにできることです。変動損益計算書を構成する固定費とは、売上高が変動しても比例して変動しない費用をいいます。変動費は、売上高に比例するように変化する費用のことです。
固定費を把握することによるメリットは、事業の安定性を測れることです。固定比率が高い場合、売上の減少が事業に打撃を与えます。固定費を把握することで、あらかじめ事業のリスクを認識できます。
利益の変動を見て業績判断がしやすくなる
売上高から、売上原価と販売費・一般管理費、さらに営業外の収益・費用を加減した後の利益を「経常利益」といいます。健全な経営のために必要なことのひとつは、経常利益の黒字化です。
しかし、通常の損益計算書では、どこを改善すべきかわかりにくい面があります。費用を、固定費を変動費に分けることで、改善すべき点がわかりやすく表現されているのが変動損益計算書です。変動損益計算書に記載される限界利益の変動などを追うことで、業績判断や経営判断に役立てることができます。
変動損益計算書のテンプレート(無料)
マネーフォワード クラウドでは、変動損益計算書の無料テンプレートをご用意しております。無料でダウンロードできますので、ぜひお気軽にご利用ください。
変動損益計算書の作り方
変動損益計算書の作成方法には、固定費と変動費を厳密に分ける方法があります。しかし、厳密に分けて計算するのは時間も手間もかかるため、今回は、損益計算書を使って作成する方法を紹介します。作成手順は下記の通りです。
- 損益計算書を用意する
- 損益計算書の勘定科目を変動費と固定費に区分する
- 損益計算書の売上高を変動損益計算書に転記する
- 変動費に区分した科目を変動損益計算書の変動費に転記する
- 固定費に区分した科目を変動損益計算書の固定費に転記する
- 限界利益を計算する
- 経常利益を計算する
変動損益計算書の作成で時間がかかるのが、変動費と固定費の区分です。変動費になるか固定費になるかは、同じ勘定科目であっても業種によって異なります。売上高に比例して上下するかに注目して区分していきます。例えば、ほとんどの会社では、販売数量に比例する売上原価は変動費に区分されます。
変動費と固定費の区分は、マーカーペンなどで色分けすると、損益計算書から変動損益計算書に転記する際にわかりやすいでしょう。変動損益計算書への転記が済んだら、限界利益と経常利益を計算します。限界利益は、売上高から変動費を差し引いた金額です。経常利益は、変動損益計算書では限界利益から固定費を差し引いた金額になります。
変動損益計算書から読み取れる指標と分析方法
変動損益計算書を用いて計算できる、主な指標と分析によりわかることを紹介します。
限界利益率
限界利益率は、以下の計算式により計算します。
限界利益は、売上高から売上に比例して上下する変動費を差し引いた金額のことです。限界利益を計算することで、固定費を考慮しなければ、どれだけ効率よく収益を上げられているかがわかります。
限界利益率が低かったり、赤字になっていたりする場合は、事業の採算性がとれていないことがわかります。売上原価など、売上高に比例する費用をいかに削減できるか検討していく必要があるでしょう。
損益分岐点売上高
損益分岐点売上高とは、利益がゼロだったときの売上高のことです。
利益は売上から費用を差し引いて求めることから、変動損益計算書の各項目に当てはめると以下の計算式が成り立ちます。
なお、利益がゼロのとき、固定費=限界利益の式が成り立つことから、固定費=売上高×限界利益率も成り立ちます。損益分岐点の売上高は、固定費を移項した以下の計算式で、求めることができます。
損益分岐点売上高は、目標の利益達成までにどのくらいの売上高が必要かを逆算するに活用できる指標です。
損益分岐点比率
損益分岐点比率は、実績値である売上高(損益計算書に記載される売上高)を100%として、損益分岐点売上高の比率を示す指標です。以下の計算式により求められます。
損益分岐点比率を計算することによってわかるのは、事業の安全性です。損益分岐点比率が高いほど損益分岐点売上高と実際の売上高が近くなるため、利益の確保がうまくいっていないことがわかります。新規顧客やリピーターなどの獲得によって売上を伸ばすなどの対策が必要です。
貢献利益率
貢献利益は、企業の収益性に関する指標です。以下の計算式により求められます。
直接固定費とは、固定費のうち、特定の商品などに関して直接的に発生する固定費をいいます。貢献利益は、特定の商品やサービスの事業全体の貢献度を測りたい場合に活用できる指標です。商品やサービスの貢献度を把握することによって、今後どのような方針で商品やサービスを売り出していくかなどの経営判断に役立ちます。
貢献利益率は、売上に対する貢献利益をはかる指標です。貢献利益率が高いほど、固定費の回収率がよいと考えられます。
安全余裕率
安全余裕率は、事業の安全性を示す指標です。以下の計算式により求められます。
安全余裕率の計算において、売上高と比較するのは、損益分岐点売上高を上回る売上高です。安全余裕率が高いほど売上に余裕があり、十分な黒字を出していることがわかります。安全余裕率が低い場合、マイナスの場合はやコストカットを進めるなどの改善が必要です。
経営分析に変動損益計算書を活用しよう
経営分析により経営の課題や改善点を把握したい場合は、変動損益計算書の作成がおすすめです。変動損益計算書は、通常の損益計算書とは異なり、変動費や固定費の区分を用いて作成します。限界利益や損益分岐点売上高の計算など、経営分析に役立つ数値を抽出しやすいのが作成のメリットです。今回紹介した限界利益率など、変動損益計算書を作成した上で、自社の経営分析を行なってみましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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