- 作成日 : 2024年11月19日
電子帳簿保存法は口座振替の場合は対象となる?保存要件や保存方法を解説
電子帳簿保存法は帳簿や書類を電子データ化して保存するための規定を定めた法律です。請求や支払いに関する書類は電子帳簿保存法の対象書類に該当し、ネット上での口座振替も対象です。
本記事では、電子帳簿保存法における口座振替の取引データを保存する際の条件やポイントを解説します。
目次
インターネットバンキングを利用した口座振替は電子データ保存の対象
インターネットバンキングで口座振替した場合、電子データ保存においてどのような扱いになるかを見てみましょう。
- インターネットバンキング取引は電子データ保存に該当
- 電子データ保存の対象外となるケース
インターネットバンキング取引は電子データ保存に該当
インターネットバンキングを利用した口座振替は電子取引に該当するため、電子データ保存の対象です。そのため、紙に印刷せず電子データのまま保存しなければいけません。
なお、インターネットバンキングのオンライン上の通帳を電子データとして保存することも可能です。その際、オンライン上の通帳の内容をいつでも閲覧できる状態にしてあれば、データをダウンロードして保存する必要はありません。
もし、口座振替した際の日付や金額などが記載された正本が別途紙の書類で送られてくる場合は、紙のまま保存できます。
電子データ保存の対象外となるケース
電子データ保存の対象は、「電子的にやりとりした情報」です。そのため、手書きで作成した口座振替に関する書類は保存の対象外となり、紙のまま保存します。
なお、口座振替は一般的に請求書を発行しないため、これに代わるものを保存する必要はありません。
電子帳簿保存法の保存要件
電子帳簿保存法において、電子データを保存する際は保存要件が定められており、以下の条件を満たさなければいけません。
- 真実性の確保
- 可視性の確保
保存要件①真実性の確保
真実性の確保とは、保存してあるデータが改ざんされておらず、正しい状態を証明するための要件です。真実性の確保の要件を満たすためには、以下のいずれかを行う必要があります。
- タイムスタンプが付与された書類データを授受する
- 書類データを受領したのち、すみやかにタイムスタンプを付与する
- 書類データの訂正・削除が行えない、または訂正・削除の履歴が残るシステムを利用する
- 訂正・削除を防止する社内の事務処理規程を定めて運用する
上記のどれを選択するかは企業の運営方針によって異なります。たとえば、「1」のタイムスタンプが付与されたデータを授受のみを選択する場合、取引相手のすべてがタイムスタンプを付与してくれるとは限らないため、現実的ではありません。
また、「2」「3」のように、授受後にタイムスタンプを付与、または、データの訂正・削除を管理する場合、電子帳簿保存法に対応したシステムの導入が理想です。
もし、コスト面でシステム導入が難しければ、「4」の事務処理規程を定めて運用するといいでしょう。
保存要件②可視性の確保
可視性の確保とは、保存してあるデータをいつでも検索・表示できる状態にしておくための要件です。可視性の確保の要件を満たすためには、以下のすべてを行う必要があります。
- 保存してあるデータをいつでも確認できるように、ディスプレイやプリンター、機器マニュアルを備え付ける
- 自社で開発したシステムを利用する場合は、システム概要書を備え付ける
- 検索機能の確保
また「検索機能の確保」では、以下の要件を満たす必要があります。
- 取引した日付、取引金額、取引先を条件設定して検索できる
- 取引した日付、または取引金額の範囲を指定して検索できる
- 二つ以上の項目を組み合わせて検索できる
なお、税務調査の際に税務職員から電子データをダウンロードするよう求められ、すぐに応じられる状態であれば、検索機能の条件2.3は不要です。
インターネットバンキングの取引データを保存する方法
インターネットバンキングでの振込等の取引情報を電子データ化して保存する場合、以下の方法があります。
- インターネットバンキングのダウンロードもしくは印刷機能を利用
- インターネットバンキングの取引データと連携できる会計ソフトの導入
①インターネットバンキングのダウンロードもしくは印刷機能を利用
インターネットバンキングで振込等をした場合、インターネットバンキングの入出金明細や振込履歴一覧などから、取引データをダウンロードして保存できます。また、印刷機能を利用してPDF化もできます。
もし、ダウンロード機能がない場合は、明細画面をスクリーンショットで保存してもかまいません。
ダウンロードした際は「可視性の確保」の検索機能を確保できるよう、以下のことがわかるファイル名にしましょう。
- 取引日付
- 金額
- 取引先名
なお、インターネットバンキング上の入出金明細や通帳の内容がいつでも確認できる状態であれば、ダウンロードして保存する必要はありません。
参考:国税庁 電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】問9-2
②インターネットバンキングの取引データと連携できる会計ソフトの導入
インターネットバンキングでの取引データを保存する場合は、インターネットバンキングと連携できる会計ソフトを導入する方法もあります。ネットバンキングと連携できる会計ソフトであれば、ネットバンキングの取引データを自動で取り込めるため、会計ソフト上でデータをダウンロード可能です。
会計ソフトは仕訳作業も自動化でき、日々の経理業務の作業効率化が期待できます。また、自動化によって手作業での入力にありがちなケアレスミスの防止にもなります。
電子データを保存する際のポイント
電子データを保存する際は、保存要件以外にも気を付けるべきポイントがあります。
- 電子データを保存するタイミング
- 電子データの保存期間
ポイント①電子データを保存するタイミング
インターネット上で行った取引データを保存する適切なタイミングは、ネット上でその取引データを確認できる状態になった時点です。インターネット上で確認できる状態は、紙の書類が郵送され、自身の郵便ポストに投函された状態と同一と考えられるからです。
しかし、業務上の諸事情でその都度保存せず、まとめてダウンロードする場合があるかもしれません。その場合は、当該年分中にダウンロードして保存する必要があります。
ポイント②電子データの保存期間
法人の場合、電子データを含む帳簿書類の保存期間は7年です。しかし、欠損金の繰越控除を受ける場合は、最長10年保存する必要があります。
個人の場合、保存対象が帳簿なのか書類なのかによって保存期間が異なり、5年または7年のどちらかです。また、確定申告を青色申告か白色申告のどちらでするのかによっても異なります。
口座振替の場合、日付や取引金額が記載された領収証であれば、「現金預金取引関係書類」に該当します。電子データの保存期間は、青色申告は7年、白色申告は5年です。
関連記事:発注書や注文書の保存期間と方法は?
インターネットバンキングを利用した口座振替は電子データの保存対象
インターネットバンキングを利用した口座振替は、電子帳簿保存法の電子データ取引に該当するため、電子データとして保存する必要があります。
保存する際は、電子帳簿保存法で定められた要件を満たす必要があり、すべてを手作業で行うと業務を円滑に進めるのが難しくなるかもしれません。
もし、業務効率化を推進する場合は、インターネットバンキングと連携できる会計ソフトの導入
を検討するといいでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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